PM1:00
一時間に及んだ昼食会は終了し、ラナ・マリンちゃんたちも二期生の子たちとそれなりに交流を終え、今はボクと共にいる。
結局30分近くボクたちと交流し、その後に二期生やスタッフさんの元へと行ったのだから忙しいことこの上ない。
ただそれでもラナ・マリンちゃんたち三人はボクたちと交流することは必要だったし、同時にラナ・マリンちゃんに相談もされたのでちょうどよかったのかもしれない。
そんなラナ・マリンちゃんの相談事、それは妹のミラちゃんのことだった。
ミラちゃんというのは現在小学四年生の女の子で、人間界の小学校に通っている。
吸血鬼の血筋なのか、非常に頭が良く小学校では常に主席の成績であり才女と教師に言われている、そんな子だ。
吸血鬼とはいえどそれはもはや種族というものとなり、過去に存在したと言われている太陽に弱いなどの弱点は存在しなくなっている、言ってみれば完全なる新人類そのものとなってしまった。
なのでほかの生物と同じように子孫を残せるようになっているのだが、今回はそこで問題が発生してしまったようだ。
その問題というのは非常に単純で、ミラちゃんの恋愛対象が女性限定になってしまったというのだ。
吸血鬼は男女美しい人が多いのだが、だからといって結婚相手は誰でもいいわけでなく、必ず異性である必要があると古くから決まっているというのだ。
現代から言えばそれはどちらでもいいことなので、時代に合わせるのも必要なのでは? とボクは思うのだが事が事だけに単純に解決とはいかないらしい。
なぜなら、ラナ・マリンちゃん自体も恋愛対象が女性であり、妹までもとなると子孫を残せる子がいなくなってしまうのだ。
じゃあ養子にすればいいじゃない? と思うかもしれない。
だけど考えてみてほしい。
人外である吸血鬼の子、しかもその力を受け継ぐ子となると養子では不可能なのだ。
というわけでこれが問題となり、愛人でもいいので男の精を受けるか、どうにかにして子供を作れるようにしてほしいと両親は訴えてきたそうだ。
当然困ったのはラナ・マリンちゃんだ。
「私としましては妹のミラで解決できればよかったのですが、ミラもその、絶対に嫌だと申しておりまして……」
妖種の中でも吸血鬼は同性同士で子を残すことが出来ないという難題を抱えている。
鬼族や妖狐族、天狗族や猫又族、人狼族などは長い間に同性同士でも子孫を残す方法を編み出してきた。
なので現状問題らしい問題がないのだが、吸血鬼族はそれが出来なかった。
結果、多様性を求められている現代に対応することが不可能となってしまったわけだ。
まぁそのミラちゃんの好きな子というのが妖種であれば解決する可能性はあるのだが、もし吸血鬼族や人間相手であれば問題を解決することは不可能となってしまう。
とはいえ、妖種が相手であってもその相手の嗜好や気持ち次第なので簡単に解決ともいかない。
そんなこんなでラナ・マリンちゃんは困っているというわけだ。
「そうですね~、あたしだったら問題なくどうにかできますけど相手が対応できない種族だったら、やはり厳しいと思います」
小毬ちゃんはラナ・マリンちゃんの相談に対してそう回答した。
「そうですわね。小毬のことはもちろん存じておりますわ。というかスバルもそうですしね」
「おぉ? なになに?」
ラナ・マリンちゃんがそう口にすると睦月スバルちゃんが反応した。
そして興味深そうにこちらを見つめている。
「スバルちゃんの性的指向について話してたんだよ」
「お~? 性的指向ってなに~?」
睦月スバルちゃんは結構知識が偏っている。
ボクにも言えることだけど、まだ年齢的にも幼いので知っていることと知らないことの差が大きいのだ。
睦月スバルちゃん自体は食べ物や遊びにはすごく詳しいけど、恋愛に関することは全くと言っていいほど知らない。
対するボクはというと、色んなことをそれなりに知りたいけど周りがあまり教えてくれない。
なので残念なことにボクの知識も非常に偏っている。
特に色事などは二百年は許しませんと明言されているので、その関連の情報は学校の保健体育の範囲でしかわからないのだ。
ボクも年齢的には18なのでR18のゲームやってみたいんだけどなぁ……。
「性的指向というのはざっくりと説明するなら好きになる相手の傾向ですわね。どんな性別が好きかとかそんな感じですわ」
性的指向についてラナ・マリンちゃんは睦月スバルちゃんに簡単に説明する。
ものすごく限定的な説明だけど、それも一部なので今回はこれで良しとしよう。
「好きになる相手~? 恋愛的な~?」
「そうですわ。ってちょっと小毬? 何をやってるのかしら?」
「シー! スバルちゃんに聞かないでください! ライバル増やされたらたまったものじゃないんですから」
「え? うん?」
睦月スバルちゃんはきょとんとして問い返し、それに答えようとしたラナ・マリンちゃんは慌てた小毬ちゃんにより制されてしまう。
ボクは外野として見ていただけだけど、なんだかすごく面白い関係だな~と思っていた。
まるでボクと酒吞童子たちみたいな関係だ。
「好きな人か~。恋愛的なって意味なら暮葉様!」
「はぁ!? スバルちゃん何言ってるの!?」
「あれ? 小毬、なんでそんな怖い顔してるの~?」
「スバルちゃんがおかしなこと言ってるからですよ~?」
「えぇ~? 何がいけないんだろう?」
「まぁまぁ小毬もスバルもそれくらいにしなさいな。こんなこと当人に聞かせてどうするのかしら?」
何やら一瞬険悪そうな雰囲気になっていたが、あっという間に場の空気が和やかになっていく。
何やら二人ともボクのことを好いてくれているようでとても嬉しい。
恋愛的かはわからないけど、ボクも二人が大好きだしラナ・マリンちゃんも大好きだ。
「はぁ。天都様、暮葉様を箱入り娘にしすぎですよ。いくらあたしたちが妖狐族としてはまだ幼いとは言っても恋愛に関してピンときていないなんて……」
何やら小毬ちゃんの沈んだ声が聞こえるけど何を言っているのかさっぱりわからない。
恋愛、恋愛ね~。
う~ん、まださっぱりだよ。
「まぁボクのことは置いといてミラちゃんのことだよね。で、相手はわかってるの?」
話を戻すためにボクはラナ・マリンちゃんに話を振った。
「まだ聞き出せていませんわ。実の姉である私よりも暮葉様のほうが親近感湧きやすいかもしれませんし、今度連れてきてもよろしいですか? その時に聞き出してもらえればいいのですが……」
どうやら見た目的にも近しいボクのほうが相談しやすいんじゃないかとラナ・マリンちゃんは思ったようだ。
小学生っぽいと言われているようで少し気になるけど、力を貸せるなら嬉しいので乗ってあげることにする。
「うん、構わないよ。はてさて、どんな子が気になってるのかな~。ちょっと楽しみ」
他人の恋愛事って聞いていて楽しいよね! ボクはいつもそう感じている。
でもこの安請け合いが後に大変なことになるとは思いもしなかった。
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