妖狐な少女は気ままにバーチャルゲーム配信がしたい

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じゃくまる
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第35話 にゃーにゃー七海チャンネル終話

公開日時: 2021年8月6日(金) 22:02
文字数:3,777

 可愛らしいクロが男性に抱き着いている! それだけでもクロが気になってる人にとっては大きな問題だ。そのせいか、一部の視聴者からは『まじか』『彼氏?』『うわぁイケメン』などのコメントが続々と寄せられている。

「この方はこの部の顧問も務めてくださる方で、私たちにとっては親兄弟みたいな人ですね。コメントにもありますけど、クロちゃんの彼氏ではありませんよ?  もう少し言えばクロちゃんが大好きな人のお兄様だからってのもありますね。ちなみにクロちゃんの大好きな人は女の子です」

 七海ちゃんが一時的に動画を止めてそう皆に説明する。コメントには『よかった』だの『百合か!?』『まさか女の子が好きとは』『良い!』などのコメントが流れるようになった。

「えっ、良いとか悪いとかじゃなくて、その対象ってボクなの!?」

 まさかの黒奈の性癖に、ボクびっくり。

『クロ:まさか、ななみんにバラされるとは思ってなかった。今日、本人観てるのに』

「あ、そうでしたね。私も連絡貰って知りました。うぅ、ごめんなさい」

『クロ:許してもいいけど、これから一か月ななみんのおごりね』

「ひぃっ!?」

『うわぁ、ご愁傷様』

『クロちゃん、七海ちゃん、ファイト』

『それでも二人とも可愛いから応援しちゃう!!』

 ボクは炎上騒動のようなことにはならなそうで安心すると同時に、明日から黒奈を直視できるのか不安になってしまった。同性とはいえ、そう言われると少し落ち着かない気分になる。

「はい、じゃあ動画を再開しますね」

 七海ちゃんがそう言うと同時に、動画は再び流れ始めた。そして動画の中の宗親兄様がボクに話しかけてきた。

 

「母はまだ早いというだろうけど、父の足跡を辿るならここにこなければいけない。父はあの後、『末の娘にしかできないことがある』と言っていた。たぶんあのことだ。君がもっと幼い時に見せてくれた『アレ』。父が望んだのは『アレ』のことだと私は確信した。もし、ここに来るならつもりがあるなら、母を説得するために私も手助けをしよう」

 宗親兄様はそう言い終えると、柔らかく微笑んだ。同時に視聴者野中には、宗親兄様に惚れたと発言した人もいた。

『イケメンすげぇ』

『男でもドキっとしたわ』

『同性でもイケるわ』

『グッとくるってこういうことだったのか』

「先生、先生の妹さんってどんな子なんですか?」

 金髪天使のアルマちゃんが宗親兄様に近づきそう問いかける。

「そうだね。いずれ君たちも会うことがあるかもしれないから少しだけ紹介しておこうか。私には三人の妹がいる。身長は私より少し低いものの身長が高めの妹が一人、身長はアルマ君に近い妹が一人、そして身長がクロに近い妹が一人だ。それぞれとても可愛らしい妹たちだよ。特に三女は母のお気に入りだからね。そういえば、妹といえばこの部の顧問の一人に私と似たような男性がいるだろう? あれは私の腹違いの弟なんだが、その弟の末の妹が私の末の妹によく似てるんだよ」

「へぇ~! 晴宗先生の義理のお兄さんだったんですね」

狐耳少女のアリサちゃんが宗親兄様の話を聞いて驚きながらそう言っていた。

今の話に出てきた『晴宗(はるむね)』とは、ボクの腹違いの兄であり、お父様の第二夫人だ。もっというなら天都お母様の双子の妹の葛葉お母様の息子ということだ。話に出てきた晴宗兄様の末の妹とはボクと同い年の女の子のことだったりする。ちなみに葛葉お母様の子供は男子三人女子一人のうちとは真逆の状態になっている。

「クロクロ、モモもくっつく」

「ミドリも」

 可愛らしい双子の猫耳少女は未だに宗親兄様にくっついているクロにくっつきに行こうと動き始めた。

「ははは、本当に三人は仲が良いね。まぁくっついていると暖かいからね」

 クロもそうだけど、猫又族は気を許した人にくっついたり頭を擦り付けたりする傾向がある。妖精郷では、よく広場などで猫又族の少女たちが団子になってくっついて寝ている光景が目撃される。とはいうものの、ボクの所に来た葛葉お母様の末の子、『御津(みと)』もボクにくっついて寝るのであまり人の子とは言えない。お母様いわく、妖種の18歳は人間の二歳くらいなのでまだまだ幼い子供だから当然とのことだ。ちなみに成人は200歳からと言われている。人と同じように成長するけど、人よりずっと長生きなのがボクたちなのだ。モモちゃんとミドリちゃんもまだまだ幼子だから当然というわけ。

「ちょっとモモとミドリが羨ましい。この辺りって私の種族少ないんだよね」

 猫耳少女たちの様子を見ていた狐耳少女のアリサちゃんがぼそりとそう呟いたのが聞こえた。

「狐の獣人の子は多いでしょ? その子たちじゃだめなの?」

 クール系狼耳少女のエマちゃんがアリサちゃんにそう尋ねる。するとアリサちゃんは頭を横に振って否定した。

「あの子たちは人間とのハーフ。あたしは妖狐族だからまた違うの」

 狐耳少女のアリサちゃんはなんと妖狐族だった。てっきりボクも狐の獣人だと思っていたのでこれにはびっくりだ。言い訳するわけじゃないけど、映像からだと種族の違いは感じられないので判別が難しいのだ。

「であれば、私の妹が来たら願いは叶うかもしれないね。その時はよろしく頼むよ。アリサ君」

「は、はい」

 宗親兄様はアリサちゃんの頭を撫でながら優しくそう声をかけた。兄様、気軽にそういうことをやっていると、幼いとはいえ相手も女の子。勘違いされてしまいますよ。ボクはこの天然たらしのような宗親兄様の姿を見て、軽くため息を吐くのだった。


「ただいまもどりました~!!」

 そんな元気の良い声と同時にガラガラっと大きな音を立てて扉が開けられた。

 一斉にみんながその方向を見る。そこにいたのは白っぽい髪をしたうさ耳の少女、稲葉ちゃんだった。

「あれれー? みんなどうしたのー?」

 少しにやにやした表情でそんなことを言ってくる稲葉ちゃん。もしかすると驚きそうなタイミングを見計らって戻ってきたのだろうか。

「稲葉、もう少し静かに開けてよ」

 アリサちゃんがやんわりと稲葉ちゃんにそう注意すると、稲葉ちゃんはこう言うのだった。

「アリサ、びっくりして耳がピンと立ってるよ? 尻尾も」

「よ、余計なお世話だから」

 アリサちゃんはそう言うと、恥ずかしかったのか視線を外してしまった。

「あ、カメラ! まだ撮ってたの? ねね、自己紹介していい?」

 カメラの真ん前まで近づくと興味深そうに覗き込みながら、七海ちゃんにそう尋ねる稲葉ちゃん。美少女ドアップ再び来る。当然、コメントは大盛り上がりだ。

『ガチ恋距離助かる』

『ちょうど不足してたわ』

『この子、どこで出会えるんです!?」

『稲葉ちゃんデビューはよ』

「あはは。稲葉ちゃんってこういうの好きだからね~。もしかしたら何か配信してくれるかもよ? 稲葉ちゃん画面だと大きいけど、私よりも小さいからびっくりするかもしれないけどね」

 七海ちゃんの言葉通り、画面に映った稲葉ちゃんの身長はクロより少しだけ大きいものだった。これはちびっこ属性!!

「はいはい。じゃあ少しだけいいよ」

「わ~い、やった~!!」

 七海ちゃんに許可を出された稲葉ちゃんは嬉しそうに両手を上げてぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びを表した。

「は~い、画面の向こうのお兄さんたち~。あたしは稲葉! 『月城稲葉(つきしろいなば)』だよ~、よっろしくね~! 好きなことはいたずらで、びっくりした顔がと~っても大好き。もしこっちに来たらあたしにケーキ奢ってね! お兄さんたち、楽しみにしてるよ~」

 稲葉ちゃんはニヤニヤしながら楽しそうにカメラに向かってそう自己紹介した。ボクは動画を見ながら多分この子はアイドルに向いてるかもしれないとそんなことを考えてしまう。それくらい愛らしさを武器にしているのだ。たぶん自分が可愛いってことを理解しての行動だと思う。恐ろしい子。

「はいはい、そんなこと言ってると変な人に捕まっちゃうよ? まぁ稲葉ちゃんはこんな子だけど、一応いい子なので」

「ぶー! 一応ってなに~? あたしすっごくいい子じゃない? ね? 先生」

 七海ちゃんの言葉に頬を膨らませながら抗議する稲葉ちゃん。唯一味方になってくれそうな宗親兄様に向き直ると、徐に近寄り抱き着きながらそう言った。

「ははは、そうだね。でも、あまり皆を困らせてはいけないよ?」

 宗親兄様はくっついてくる稲葉ちゃんの頭を優しく撫でながらそう伝える。

 すると稲葉ちゃんは「は~い」と返事を返すのだった。宗親兄様の撫で攻撃により、稲葉ちゃんは見事撃沈したようだ。こうなると満足するまで離れないことだろう。

「なんだか最後は、宗親先生のハーレム放送みたいになっちゃいましたね。でも安心してください、稲葉ちゃんにもまだ彼氏はいませんので!」

 七海ちゃんは動画の再生を終えると、ついでとばかりに皆にそう話した。コメント欄には安心したのか、『稲葉ちゃんまたよろしくお願いします!』などといったコメントが流れていった。

「続きはまたそのうち放送しますね~。今回はここまでで~す!」

 こうして、暁夏希ちゃんこと猫村七海ちゃんの放送は終了した。色々と学園のことを教えてくれたとてもいい放送だったと思う。惜しむらくは授業風景がなかったことだろうか。ただ、終始仲の良い皆の姿を見ることができたので、ボクもほっこりできたのはよかったかな? それにしても、あっちだと黒奈はお姉さん役なんだなぁ。


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