「コーリアーーー!! ライラックさんーーー!!」
ぼくはありったけの声を、振り絞って叫んでいた。
一目散に走って、目指すは、ぼくの寝床だったライラック家の客間だ。
白い腐敗を気にも留めずに、広間を抜け、階段を上がる。
手足に激痛が起き、腐り落ちていく錯覚を覚えるが、二階でコーリアとライラックを探した。
ふと、知らないドアが半開きだった。
ぼくは恐る恐る中を覗くと……。
う?!
中の様子に激しい吐き気を覚えた。
それ以来、ぼくは踵を返し、このトルメル城の祭壇へと走った。
もう、コーリアにも、ライラックにも会えない。
この世では……。
走りながら、自然と涙が出てきた。
ぼくは、当てずっぽうで、広大なトルメル城を走り回り、祭壇のありそうな地下への扉を見つけ、階段を降りた。
祭壇はあった。
トルメルの国旗が両端に幾つも立ててある。薄暗い地下だった。その奥に小さな祭壇がある。祭壇の上には白色でぼくの掌の模様と同じものが刻まれている。剣と鎧、そして、盾があった。
ぼくは、すぐにそれらを装備すると、今度はトルメル城の外へと向かった。途中で、外廊下に倒れている女性を見つけた。
「もしや……勇者さま! ああ……ああ……ああ、どうか、この国、城をお守りください! まだ生きているものもおります!」
「……わかってるよ……」
ぼくは、その女性を近くの部屋へと押し込み。部屋の小窓を開け換気を良くすると、再び外へと向かった。
トルメル城の城下町の全ての建造物が、次々と白い煙を昇らせて腐り落ちていく。逃げ惑う人々も徐々に白骨化していった。ぼくは、城下町の道路を羽つき二本足の獣を斬り倒しながら、走った。
「うおおおおーーーー!」
白い煙を全身で浴びながら、ぼくは目に映った獣は瞬時に斬りながら、空から向かってくる獣も斬り倒す。
辺り構わず斬り伏せていると、辺りは静かになってきた。地面には、ぶすぶすと白い煙を上げておびただしい数の獣たちが、息絶えている。今度は、ぼくは城下町の外へと出ようとした。
「おお、勇者よ。なんて、強さだ!」
「……今のぼくに話し掛けるな」
「魔のものは、この先の北の方にいるんだ。どうか、その剣で斬ってくれ。この国の王を守ってくれ」
「……」
ライラックに似ている男が、城の外へと向かう道すがら懇願してきたが、その男は泣いていた。ぼくは、その……ライラック家のものを置いて、白い煙を上げている城門を開けた。
わかっている……。
わかってるんだ……。
ぼくは……。
魔族を倒すために、ここへ来たんだ!!
城門を出ると、辺りの景色にぼくは唖然とした。そこには、全てを白煙に覆われてしまった森林があった。動物が倒れ、草木が覆われて徐々に腐って行く。
ぼくは獣の死骸を踏み潰しながら、森林へ向かって走った。ぼくは、壊滅してしまった森林の様子を目の当たりにして、元凶を倒さないといえけないと思った。
白い煙はその範囲を広げていた。
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