ナイツ・オブ・ラストブリッジⅡ ザ・ラスト・キャッスル

この城は必ず守りきってみせる!
主道 学
主道 学

公開日時: 2024年2月28日(水) 06:33
文字数:1,000

  ぼくも不安になってきた。


 ぼくの手を握っていた子供たちが、北の方を指差し、声にならない声を発した。


 それからだった。

 みんなが逃げ出したのは。


 祭りは一瞬にして、パニックになった。


 遥か北からおびただしい羽音を発し、黒いものが幾つも飛来してくる。

 広場の周りの建物が急に、白煙を上げた。


 でも、燃えたわけじゃないみたいだ。

 なんだか、臭いがそうじゃない。


 うん??

 この臭い??


 建造物が至る所で、不気味な音と共に白煙が立ち上る。

 それは、腐った臭いだった……。


 北の城の方から、大量の白い煙が爆発的に上がり。鎧を着た大軍がこちらに向かって逃げてきていた。だが、その中で、一人の男がぼくのところへ駆けて来た。その後ろには、兵がどんどんと現れては、倒れ、現れては、倒れていた。


 壮齢のその男は、白一色の鎧を着ていて、いかつい顔がどことなく、ライラックに似ていた。

 

「その服装! 君が、勇者だな! この国はもう駄目だ! すぐに南へ逃げろ!!」

「え?? 一体? 何が起きているんですか??」

「白い腐敗だよ」

「白い腐敗??」

「触れると、腐って白骨化するんだ!! さあ、逃げろ!!」

「えええ!!」


 ぼくはコーリアのことを思い出した。


「コーリアは、トルメル城にいる!」

「もう助からん!!」

「……」


 ぼくは、唖然とした。

 勢い余って、ぼくはその男の腕を握り捻り上げた。

 ぼくはあまり力を入れていないというのに、その男の腕がミシミシと悲鳴を上げる。


「その鎧と剣は?! どこに??」

「ムッ! この腕力!! 君は勇者だったな。なら、トルメル城の祭壇に行け!! そこには、特別な鎧と剣と盾がある!! だが、そこは白い腐敗が覆っているぞ!!」

「わかった!!」


 ぼくはトルメル城へと走り出した。


 ぼくは元来た城下町の道を走った! おおよそ自分に出せる限りの全速力で! 


 コーリア!!


 頼むから無事でいてくれ!!


 ぼくは心の中で叫び続ける!


 逃げ惑う人々をどかしどかし、思いっ切り走った。

 白い腐敗が建造物の隙間から漂ってくる。

 その白い腐敗の発生源は、黒いボロボロの衣服を着た羽つきの二本足で立つ獣の大軍だった。獣は白い腐敗を吐き出しながら、北の方から進軍してくる。同時に多くの人々を牙や爪でも犠牲にしていた。


 ぼくはそれらを無視して、城下町の脇道を突っ切る。

 トルメル城の外壁が見えてきた。


 正門へと回ると、そこは……濃霧のような白い腐敗が包む込んでいた。


 ぶすぶすと白い煙が発生し、正門や外壁が腐り落ちている。


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