ナイツ・オブ・ラストブリッジⅡ ザ・ラスト・キャッスル

この城は必ず守りきってみせる!
主道 学
主道 学

公開日時: 2023年11月17日(金) 20:35
文字数:1,072

 コーリアはぼくの左の掌の模様を見つめて、青ざめた。


「う……それは?」

「う?? ……ぼくの左手の模様はそんなに怖いものなの?」

「い、いえいえいえ。滅相もありません」

「へ……??」


 コーリアは両肩を抑えて震え出し、失神しそうになった。

 

 この模様は一体、何??


 自らの過去は、まるで霞がかかっていてよくわからない。

 この模様は、ぼくの過去に関連しているのだろうか??


「ごめんなさい。勇者さま! 今、ライラック家のものをお呼びしますね……いやいや……教皇さまの方がいいかしら? ……いやいやいや、国王さまをお呼びしますね!」

「え?? え???」 


 それは大変だ?!


 待てよ……。


 ここは、千騎士という騎士の国……。

 悪魔の襲撃がある国……。


 あ、そうだなんだ……これは……きっと……。


 ひょっとして……。


 ぼくの左手の模様と同じものは、部屋に確かにあったんだ……この模様は、魔族退治の物語が描かれた絵画の片隅に浮き出ていたんだ。


 そうだ。

 ぼくは魔族と戦うために……。



「ぜえ、ぜえ……」


 階下へと降りると、幾つもの甲冑が飾られた広間には白一色の鎧を、着た騎士が荒い息をして突っ伏していた。


 外からの明かりで、その騎士の剣先が光る。

 

「ああ! ライラックさん!」

「もうダメだろうな……この戦争は館側の勝利で終わった……」

「え……そんな」


 コーリアはライラックを介抱しようとしたが、ライラックはその手を思いっ切り振り払った。


「前線は全滅。後衛の私たちでさえ、逃げるのが精一杯……ぐぬぬぬぬぬ」

「あの。国王さまに、すぐに報告したら?」


 何が起こっているのか、さっぱりわからない。だけど、混乱したぼくは即座に聞いてみた。

 

 けれども、コーリアは首を振った。


「ここはトルメル城の数多くある客間の一つで、ライラック家が所有してるんです。トルメル城はとても広大で王室や王の間は、北の館が一望できるすごい北の方にあるんです。なので、もう国王さまのお耳に入っているはずです」


 なんて、広大な城だろう?

 ぼくの家の何倍?


 いや、何十倍??


 こんな緊急時のような時だけど……正直、住んでみたいな……と思う。


「うぬ。健国祭は明日始まるというのに……皆、祭りの準備を終えたというのいに……」


 ライラックはとても悔しそうだった。

 ぼくは、今はさすがにこの掌の模様のことを、どうしても聞けなかった。


「あの……」

「ふっ……心配するなコーリア。祭りは、明日の祭りは、厳重な警護の元に行われるはずだ。だが、私はもう戦わん!」


 ライラックは剣を思いっ切り壁の方へ投げ捨てた。

 剣は壁に並んだ甲冑の一つに突き刺さり。


 それから、しばらくして剣の光は失せていった。


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