コーリアはぼくの左の掌の模様を見つめて、青ざめた。
「う……それは?」
「う?? ……ぼくの左手の模様はそんなに怖いものなの?」
「い、いえいえいえ。滅相もありません」
「へ……??」
コーリアは両肩を抑えて震え出し、失神しそうになった。
この模様は一体、何??
自らの過去は、まるで霞がかかっていてよくわからない。
この模様は、ぼくの過去に関連しているのだろうか??
「ごめんなさい。勇者さま! 今、ライラック家のものをお呼びしますね……いやいや……教皇さまの方がいいかしら? ……いやいやいや、国王さまをお呼びしますね!」
「え?? え???」
それは大変だ?!
待てよ……。
ここは、千騎士という騎士の国……。
悪魔の襲撃がある国……。
あ、そうだなんだ……これは……きっと……。
ひょっとして……。
ぼくの左手の模様と同じものは、部屋に確かにあったんだ……この模様は、魔族退治の物語が描かれた絵画の片隅に浮き出ていたんだ。
そうだ。
ぼくは魔族と戦うために……。
「ぜえ、ぜえ……」
階下へと降りると、幾つもの甲冑が飾られた広間には白一色の鎧を、着た騎士が荒い息をして突っ伏していた。
外からの明かりで、その騎士の剣先が光る。
「ああ! ライラックさん!」
「もうダメだろうな……この戦争は館側の勝利で終わった……」
「え……そんな」
コーリアはライラックを介抱しようとしたが、ライラックはその手を思いっ切り振り払った。
「前線は全滅。後衛の私たちでさえ、逃げるのが精一杯……ぐぬぬぬぬぬ」
「あの。国王さまに、すぐに報告したら?」
何が起こっているのか、さっぱりわからない。だけど、混乱したぼくは即座に聞いてみた。
けれども、コーリアは首を振った。
「ここはトルメル城の数多くある客間の一つで、ライラック家が所有してるんです。トルメル城はとても広大で王室や王の間は、北の館が一望できるすごい北の方にあるんです。なので、もう国王さまのお耳に入っているはずです」
なんて、広大な城だろう?
ぼくの家の何倍?
いや、何十倍??
こんな緊急時のような時だけど……正直、住んでみたいな……と思う。
「うぬ。健国祭は明日始まるというのに……皆、祭りの準備を終えたというのいに……」
ライラックはとても悔しそうだった。
ぼくは、今はさすがにこの掌の模様のことを、どうしても聞けなかった。
「あの……」
「ふっ……心配するなコーリア。祭りは、明日の祭りは、厳重な警護の元に行われるはずだ。だが、私はもう戦わん!」
ライラックは剣を思いっ切り壁の方へ投げ捨てた。
剣は壁に並んだ甲冑の一つに突き刺さり。
それから、しばらくして剣の光は失せていった。
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