俺が後援会の役員をやっていた、その政治家の言葉には、何1つ嘘は無かった。
だからこそ、最悪だったのだ。
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「あの……この前のイベントでスピーチをした事がSNSで晒されて大騒ぎになってますよ」
「へぇ……」
マズい状況なのに、呑気に構えてる、このデブは、与党の国会議員の海野三郎だ。俺は、彼の後援会の役員をやっている。
「判ってんですか? あのイベントの後援はカルト宗教の『折伏の工学』のフロント企業ですよ。野党支持者や貴方の政策に反対してるヤツらが『海野三郎はカルトの関係者だ』って騒いでるんですよ」
「でもさぁ、与党の支持率は落ちてるけど、野党の支持率はそれどころじゃないんで、野党支持者が何を言っても誰も聞く耳なんて持たないでしょ」
「でも、SNSで釈明ぐらいはした方が……」
「じゃあ、『党内の義理で出席しただけで、後援団体の関係者だったから出席した訳ではありません』って意味で、党内のお偉方に迷惑がかかんないような文章を考えといて」
「は……はぁ……。念の為ですが、本当に『折伏の工学』の信者じゃないですよね」
「うん……。あそこの信者なんかじゃなかったよ。イベントに出たのも、党内の義理でだよ」
「『折伏の工学』から出演料も政治献金も貰ってませんよね」
「もちろん、一銭も貰ってない。ところで、これ、経費で落とせる?」
「なんですか……? えっ?」
海野から渡された、その明細に書かれた金額は……俺の年収の半分以上だった。
そして、内容は……。
「あ……あの……『信者じゃない』って言いましたよね?」
「うん、確かにボクは『信者なんかじゃなかった』って言ったよ。この点に関しては嘘は吐いてない」
「『折伏の工学』のイベントに出たのも、信者だからじゃない、って言いましたよね」
「うん、出席を決めた時点では『折伏の工学』の御教えを信じてた訳じゃなかった」
「じゃあ、何で、貴方が『折伏の工学』に献金してるんですか?」
「今は信者だからだよ」
「信者じゃない、って言いましたよね?」
「うん」
「嘘を言ってたんですか?」
「嘘は言ってない」
「訳が判りませんよ」
「だから、あのイベントの会場の入口まで来た時点では、信者じゃなかった。イベントと、その後の懇親会が終る頃には、あの御教えの素晴らしさを理解出来るようになってたんだ」
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