「どちらが先に音（ね）を上げるか」を知らない内に競う羽目になったが、「ゲームを終らせない」では一致している両者。

だが、最も得をした者と、最も酷い目に遭った者は、そのどちらでも無かった。

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「今回の保険の条件としましては……中止となった場合、当方は、最低でも、お振り込みいただいた保険料の三倍、最大で一〇倍の金額をお支払いいたします。ただし、お客様が中止の最終的な決断を行なった場合は、お支払いは出来ません。そして、『対象となるイベントが中止された際の損害』の為の掛け捨て保険ですので、対象となるイベントが実際された場合の払い戻しは無しとなります。その条件で結構でしょうか？」

「ああ、ウチの法務にも契約書を精査させた。問題無い」

「では、サインを……Ｉ○Ｃ会長……」

「今回の保険の条件としましては……中止となった場合、当方は、最低でも、お振り込みいただいた保険料の三倍、最大で一〇倍の金額をお支払いいたします。ただし、お客様が中止の最終的な決断を行なった場合は、お支払いは出来ません。そして、『対象となるイベントが中止された際の損害』の為の掛け捨て保険ですので、対象となるイベントが実際された場合の払い戻しは無しとなります。その条件で結構でしょうか？」

「ええ、我が国の法務官僚に契約書を精査させましたが、問題無いと言っていました」

「では、サインを……総理大臣閣下……」

「会長……開催国は……まだ、開催する気満々のようです……」

「おい、例の伝染病が流行ってるのに、何で、奴らは開催出来ると思ってるんだ？」

「さ……さぁ？」

「ともかく、我々が中止の決断を下した場合、損害保険が支払われなくなる。このまま強気に出て、開催国の政府が中止の決断をするように仕向けろ」

「総理……Ｉ○Ｃは……まだ、開催する気満々のようです……」

「待ってくれ、例の伝染病が流行ってるのに、何で、奴らは開催出来ると思ってるんだ？」

「わ……わかりません。」

「ともかく、我が国が中止の決断を下した場合、損害保険が支払われなくなる。このまま強気に出て、Ｉ○Ｃが中止の決断をするように仕向けるしか無いな」

　世界的パンデミックの最中に強行されたオリンピックは、開催国と出場選手の将来に多大なる悪影響を与える事となった。