ある表現は社会変化であっさり廃れる。
ならば、廃れゆく表現を護りたければ、世界を元に戻すしかない!!
……が正論だとしても、同時に「狂人ほど理性的な者もいない」もまた真実なのだ。
「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「ノベリズム」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。
♪ ちゅど〜ん♡
♪ ちゅど〜ん♡
♪ ちゅど〜ん♡
(以下略)
勝利の音だった。
爆薬とガソリンはゾンビが発生した団地を火の海に変えた。
「やったぞ……」
「よし、みんな、今日は解散だ。ゆっくり休め」
ゾンビ禍が起きる前、俺達は表現規制派から「表現の自由の戦士」などと揶揄されていた。
だが、今や俺達は本当の戦士だ。
人権派どもには、ゾンビが蔓延するこの世界を救えない。
救っているのは俺達だ。
……その時……。
サイレンの音と共にやってきたのは、レスキュー隊だった。
人権派の議員どもが「ゾンビが現われた場合は、ゾンビ退治より周辺に居る人々の救助と避難を優先すべき」と云う御花畑で非現実的な論理を振り翳した結果生まれてしまった役立たずどもだ。
しかし、一応は公的機関である以上、敬意は払わねばなるまい。
「おい、全員敬礼しろ。腹の底で何を思っていても、顔には出すなよ」
そして、車から降りたレスキュー隊の隊長らしき女は……俺達が生み出した聖火にして成果を見ながら……絶望的な声で一言呟いた……。
「私達が来るのが遅かったみたいね……」
そうだ。俺達の方が、より効率的にゾンビを殺せる。
こいつらは全員馘にして俺達を……えっ?
奴らは銃口を俺達に向けた……。いや、待て、なんで「レスキュー隊」に対ゾンビ用じゃなくて対人用の銃が配備されてんだ?
「武器を捨て、手は頭の後。跪きなさい。命令に従わぬ者には射殺の許可が出ています。全員、現行犯で逮捕します」
「待て、どう云う事だ?」
「ニュースを見てないの? この4月から、私達はゾンビから一般人を保護するのみならず、貴方達のような自警団気取りのテロリストからも、一般人を護る事が任務になったのよ」
「ふ……ふざけるな……。俺達こそが……ゾンビから罪の無い人達を護ってんだ。お前らは公務員のクセに人権派の手先になったのか?」
「そうよ。私達は一般人の生存権を護っている。貴方達からね」
「そんなのは『正義の暴走』だ」
「ああ、あなるほど。自分達が暴走してる事に気付いてないヤツには、止まってるモノの方が暴走してるように見える訳ね。さっさと投降して、後は弁護士に相談しなさい。たった数匹のゾンビごと、いくつものマンションとその中に居た数知れない生きた人間を焼き払った以上、首謀者クラスは『ゾンビ化刑』でしょうけどね」
そして、俺達とレスキュー隊の戦いは始まった。
十数年前、死刑に代る最高刑として作られた「不老不死刑」……通称「ゾンビ化刑」の為に作られた「ゾンビ化人造擬似ウイルス」が研究施設より漏れ出し……ゾンビ化する人間が発生し始めた。
自然にゾンビ化する確率は稀だが、ゾンビに噛まれた人間は約八〇%の確率でゾンビ化してしまう。
抗ゾンビ化薬も変異を続ける「ゾンビ化人造擬似ウイルス」に対しては後手後手に回り……。
だが、意外な対処法が有った。
ゾンビは……身体能力、特に咬合力が激ダメだったのだ。
自分がゾンビになりたくないなら、抗ゾンビ化薬を打つより……動き易くて露出が少ない格好をしている方が現実的だったのだ。
なにせ、ゾンビの噛み付きは……作業着用の布程度で十分に防げるのだから……。
その結果……ゾンビ禍が起きて2〜3年で……夏でも長袖長ズボンが普通になり……女性はスカート……特にミニスカートをしなくなった。ついでに、靴も、いざと云う時に走って逃げ易いモノが普通になり、ハイヒールその他の女性用の靴の多くは過去のモノとなった。
だが、そんな単純な手でゾンビへの対処が出来てしまった事で、困った事態に追い込まれた者達も居た。
例えば……Vtuberが肩出しミニスカなどやっていれば、コメント欄に「懐古厨wwwww」「古臭えwwwww」「ゾンビ禍前で意識のアプデが止まってんのかよwwwww」「危険な服装を推奨してるんで、運営と警察に通報しましたwwwww」と云う否定的コメントが並ぶ羽目になる。
事、ここに至って、表現規制派から「表現の自由の戦士」と揶揄されていた俺達も立上るしかなかった。
俺達の手でゾンビなき社会を取り戻すのだ。
例え、どんな犠牲を払っても。
その犠牲が俺達でない名も知らぬ誰かなら、猶の事だ。
表現の自由の為に。
動画サイトで肩出しミニスカVtuberが主流になる日が再び来る事を信じて。
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