前回のあらすじ
「試験。それは当日よりも、その前の勉強期間こそが地獄なのじゃ」
ガチャ神の今日のひとこと
「一日二回更新なら前回のあらすじ要らなくないかのぅ?」
「SSRの二人と、契約解除していただけませんこと?」
その一声で俺は悟る。嵌められたんだと。
確実に仕留められるタイミングを虎視眈々と狙っていたようだ。
しかし、俺もただなされるがままな訳にはいかない。
少しばかり、オジサンの交渉術というのを見せようではないか。
「なるほど。君も契約主で、俺の鬼若とベルが欲しくなったと」
「えぇ、素直にお譲りいただければ、愛らしいクマさんに手荒な真似はいたしませんわ」
「愛らしいねぇ……。で、そのためにヨウコを買収したと?」
「理解が早くて助かりますわ。
買収ではありませんがね。ヨウコは、わたくしと契約しておりますの」
「ふーん。最初からこのために俺に近づいたワケね。
てっきり、俺はイナバを使ってくると思ってたけど」
「あら、わたくしとイナバの関係までご存知ですのね」
「あぁ、そりゃな。その制服を見れば分かるよ。イナバのとこの高校だろ?
名前は知らなかったが、やり口といい、噂に聞く“ちょっとした有名人の契約主”ってお前の事かな、ってな」
「あらあら。可愛いクマさんにも知っていただけているなんて光栄ですわ。
それで、答えを聞いてもよろしいかしら?」
「そうだなー。一旦持ち帰って、検討してみます」
そう言って俺は“奥の手”を使う。
「のびーるハンド!」
その言葉と共に、俺のクマハンドは長く伸び、頭上の街路樹の枝を掴む。
「なっ!? なんですのっ!?」
「アンド、もどーるハンド!!」
その呪文はさっきと逆だ。腕は縮み、体が一気に持ち上がる。
突然の事に驚いたヨウコは、スポッと俺をその腕から離してしまう。
それも当然だ。ベルの羽衣製の体は、俺の意思で伸び縮みもすれば、摩擦係数だって変えられる。
それができるようになるまで、相当の訓練が必要だったけどな。
今は、シルクも真っ青のスベスベ生地だ。慌ててなくても、掴み続ける事は難しい。
木の枝に立ち、見上げる二人に俺はキメセリフを放つ。
「ま、こういう時の対策ってのは、しておくもんだよ」
「くっ……! やはり、一筋縄ではいきませんわね……」
「アリサ様、申し訳ございません」
アリサは、悔しげにヨウコをひと睨みし「これだから獣混じりは」と悪態をつく。
なるほど、噂どおりあまり上品なお嬢様ではないようだ。
しかし、情報源はセルシウスだけだし、個人的に嫌ってるだけっていう可能性もあるけどな。
「で? どうすんの? 俺は、このまま帰ってもいいんだけど」
「あら、ご親切にまだいらっしゃったのね。
ま、逃げられても、その足ではすぐ追い付けますけども」
「いや、足も伸びるから逃げ切れるけどな?
まぁ……、その姿がトラウマになる程度には、愛らしさが無くなるけど」
「では、なぜこの場に留まってますの?
まさか、わたくしとやりあおうとでも?」
「んー。色々聞きたい事もあるからな。
たとえば、クロの喧嘩もお前の差し金か?」
「さぁ? それはどうでしょうね?」
「やっぱそうか。クロとカオリの事も、調査済みなわけだな」
「えっ……」
「クロの喧嘩とだけ言われて、何の事か把握してるなんて、白状したようなもんだろ。
うっかりさんなのか?」
「はっ!? 騙しましたわね!!」
「いや、こんなありきたりな手で騙されるなよ……。
騙すなんて言うのもどうかと思うレベルだぞ……」
「くっ……。ここまでコケにされて黙ってはいられませんわ!
貴方にバトルを挑みますわ!」
まぁ、こうなるだろうなとは思っていた。というか、分かってて小馬鹿にしてやったのだが。
しかし、話を長引かせている間に念話で端末を操作して、鬼若とベルに連絡を試みたが、どちらもダメだった。もちろんカオリも繋がらない。
最終手段の“強制召喚”ならば行えるが……。
皆が用事というこの状況はおそらく仕組まれたものだ。
しかし、その用事がアリサの用意した、偽物だという確証はない。
「さぁ、どういたします? バトルを宣言した以上、逃げれば負け扱いですわよ?」
「で、俺は主力を全て失っている。これもお前の仕組んだ事なんだろうな。
それにしては、バトルの宣言をためらったよね。なんでかな?」
「あら、まだ無駄口を叩くつもりですの? ま、教えてあげても結構ですわよ。
心優しい契約主を気取っている貴方なら、大事な大事な用事のある契約者を、強制召喚などできませんものね。だから、今なら確実に勝てますわ。
けれど、準備は万全でも無駄な事はしたくない。ただそれだけですわ」
「ホントに……、チョロいというかなんというか。
俺の主力を封じられるほどなのに、何で裏で色々やってた事をポロっと喋っちゃうかなぁ……。
俺にとっては、鬼若達が呼べない事が確定したからいいんだけど」
「もちろん、召喚できない事を分からせるためですわよ?」
「いや、絶対嘘だろ。うっかり喋っただけだろ……。
まぁ、それも大体想定してたけどね。あと、この無駄話も俺の作戦だと思わなかったわけ?
さ、カウント0なんだぜ?」
地上に展開される魔方陣、そこから出てきたのは……、サンタの爺さんこと、三田セイヤだ。
「おう! 俺の大事なアーニャとの遊び時間を邪魔したバカは誰だ!?」
「よっ、ミタ爺。久しぶり」
「なんですって!? なぜ貴方が召喚に応じたのです!?」
思わぬ人物の登場。それも封じたはずのSSRが出てきたのだから、驚くのも無理はない。
「あ? なんだよ、アリサじゃねーか。こんなとこで何やってんだよ」
「そっ……、それはこちらのセリフでございますわ……」
あ、なんだか強がりながらもかしこまってやがる。
これは意外にも、最強のカードを引き当てたのではないだろうか。
俺が、運よく引き当てるなんて事はないんだから……。
あぁ、今アリサの運気が最悪なんだろうな……。負け確定イベントご愁傷様なんだぜ★
「なんでって、俺はあのクマと同盟結んでるカオリと契約してるからな。
だから俺は、クマの契約者みたいなもんだ」
「そっ……、そんな……。実装して間もない同盟をすでに結んでいたなんて……」
「いや、俺はそのシステムの開発に関わったし。実証実験の被験者でもあるし」
「なんですって……。
まさか学園運営局との繋がりまであるなんて、想定外でしたわ」
「もしかしてお前、このクマに喧嘩売ったのか? そりゃ相手が悪いってもんだ!
なんたってコイツは、あのじゃじゃ馬揃いのSSRを二人も飼いならすヤツだぞ?
ま、俺もそのじゃじゃ馬の一人だけどなっ!」
ガッハッハと微妙な自虐ネタに自身でウケてる爺さんは、出てきた瞬間の孫との時間を邪魔された怒気も飛んでしまっている。それはアリサにとっては幸運だったろうな。
なにせ、あの爺バカだ。孫との時間を邪魔した相手は、どんな手を使ってでも酷い後悔と、トラウマを植えつけそうだ。
今はそんな事よりも、バトルが問題だ。
できれば、早く爺さんには帰ってもらって、孫のアーニャと過ごしてもらいたいしな。
「で、どうすんだ? まだやる気あるなら、俺も他のメンバー集めるんだけど?」
「……。わたくしの負けですわ。セイヤ様が相手では、勝ち目などありませんもの……」
「あー、なんだ。アリサ、そう気を落とすな。お前だって、立派な契約主になれるさ」
爺さんはアリサの事情も知っているのか、同情の混じる声をかけ、ガックリと肩を落とすアリサを送って帰るといって、その場をあとにした。
そして残されたヨウコと俺は、少し気まずく顔を合わせる。
「えっと、勝った……、みたいだし? 頼みを聞いてもらえるよな?」
「はい。妾にできる事でしたら」
「寮まで送ってもらっていい?」
『 粛 清 対 象 ! ! 』
「いきなり出てくるんじゃないわっ!」
あ、これガチな時のヤツだ。ガチャ神ちゃん下がって。
(フッ!!)
『ウッ……!』
「!? 吹き矢で応戦じゃと!?」
ほら、猛獣は麻酔薬で黙らせるのがセオリーだからね。
『うぅ……。これじゃ悪役令嬢じゃなくてアホの子令嬢だよぉ……。ムニャムニャ……』
「何か言っておるぞ」
それは寝言だから。いいね?
「ふむ、都合が悪くなった時の反応じゃな」
(フッ!!)
「うっ……!」
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