前回のあらすじ
『ガチャ神ちゃんの、気ままな異世界ライフ』
外注さんの今日のひとこと
『前後書きが書き直しやからネタがないんよ……』
4月も終わりが見えてきた週末、晴れ渡る空にはつらつとした声がこだます。
「よろしくお願いします!!」
「ははは、元気だね。でもあまり気負いしないでね」
声の主は、アカメ率いるケモナー三銃士、それに応えるのは愛妻家ノロケ牧場主のアルダだ。
けれどアルダは口調こそいつもと変わらず丁寧だが、その顔は経営者のそれである。
俺たちは今日、アルダの牧場に来ている。それというのも、ケモナー三銃士のアルバイト探しのためだ。
最近俺とカオリは、局長からの依頼でパトロールのクエストを受けている。
その話を聞いたアカメが、是非ともと手伝いを申し出たのだ。
確かにパトロールの時、男が居れば前のようにナンパされる心配は減るだろう。
転生前ならまだしも、今の愛らしすぎる俺じゃその効果は見込めないしな。
けれど問題はアカメが重度のケモナーであり、クロが危険ではないかと渋っていたのだ。
「そこを何とか! 何とかお願いできませんか!?」
「えぇ……。なんでそんなに必死なんだよ……」
「それがねー、レオン先生のケア用品にお金使いすぎちゃってねー。
修学旅行のお小遣いが、足りなくなっちゃったんだよねー」
「お前ら……。計画性ゼロかよ」
「好きな事に使う金をケチるなど、何のために生きているというのですか!!」
「えぇ……」
話を聞いた時には、あきれ返って反論する気も失せていたが、冷静になれば俺もガチャへの課金には糸目を付けていなかったのだから、人の事は言えないんだよな。
しかしクロの安全のため、あとカオリも嫌がりそうなので、別の仕事を探してやる事にしたのだ。
その候補に挙がったのがアルダの牧場だ。
少なくともケモナー三銃士は、動物や獣人に対する知識は確かなものだし、言動はともかく真面目な奴らだ。
ついでに言えば、動物が暴れて蹴られたりしても、持ち前のタフさがあるので大丈夫だろうしね。
そして、アルダも以前鬼若に手伝いを依頼してた事もあるし、人手を欲しがっているかもしれないと思い立ち、連絡を取ってみれば、是非にと応えてくれたのだ。
その時「今から教えれば、7月のデートまでに任せられるようになるかな……」なんて心の声が漏れていた事は、俺が忘れてしまいたい。
かくして、うまく話が進んだものの、牧場仕事は体力仕事もあれば、なにより動物相手の仕事だ。
素人がちょっと手伝うくらいの気持ちではなかなかできないものだろう。
向き不向きもあるので、今日のところは顔合わせと、職場体験に来たという訳だ。
企業調査とインターンシップは大事。俺の経験もそう物語っている。
「そうだアルダ。少し話があるんだけど、時間取れるかな?」
「えぇ、大丈夫ですよ。研修は、バウムに任せるつもりですから」
「助かる。バウムもよろしくな。
あと、コイツらが変な事したら、一発殴ってやってもいいからな?」
「そんな物騒な事はしませんよ。
でも、ちゃんと教えますし、ダメな事はちゃんとダメと言いますよ」
「俺の紹介だからって変な遠慮はしないでくれよ。
お前らも、問題を起こせばこの話は無かった事にするからな?
好きな事を仕事にしたいなら、ちゃんとその辺わきまえろよ?」
「熊殿、我らが相手の嫌がる事を、過去一度でもした事があるでしょうか!?」
「どうだったかな……。まぁ、がんばってくれ」
そう言い残し、俺とアルダは管理事務所へと向かった。
事務所の来客用のソファーに座らされ、前に置かれた木製テーブルには、ホットミルクとチーズケーキが用意された。
そして、ホットミルク用にと、大きな蜂蜜の瓶をドンと置かれる。
「よろしければ、蜂蜜をそのままで召し上がられても結構ですよ」
「おい! 俺は熊型になったけど、熊じゃねぇよ!?」
「冗談ですよ。
けれど、蜂蜜もミルクも牧場で作っているものですから、遠慮なくどうぞ」
この世界では肉や卵は獣人への配慮から代用品だ。だが、例外に蜂蜜と牛乳などがある。
それら一部食品や、羊などの毛を生産しているのがこの牧場というわけだ。
学園都市の衣食を支える、大事な施設である。
そして、その主たるアルダも、蜂蜜に負けぬ甘さを誇る私生活とは裏腹に、仕事となれば、かなり有能な人物らしい。
「それで、お話とは?」
「カオリの事なんだけどさ……」
「先に断っておきますが、カオリ様と同盟関係でいらっしゃるとはいえ、答えられる事は少ないですよ」
「もちろん。契約主の情報を契約者が漏らすことは褒められた事じゃないからな。
だから、答えられないならそれでいいんだ。
けど、気になったから、アルダなら知ってるかと思ってさ」
「そうですか、では答えられるかは別として、お話を伺いましょう」
相手の腹を探り合うわけではないが、間を置くためミルクを一口飲み、少しの沈黙が流れる。
「カオリってさ、もしかして男が苦手だったりする?」
「……さぁ、どうでしょう。
カオリ様から、直接そうだと聞いた事はありませんが」
「じゃあ、聞き方を変えようか。
アルダは、カオリに避けられてると感じる?」
「……なるほど。私個人の考えや感覚ならば、契約主の情報を漏らした事にならないと」
「へぇー。意外と、そういうのに気付く人だったんだ?」
「馬鹿にしてます?」
「チヅルの前だと、あんなだからなぁ……」
その一言にアルダは黙り込んでしまった。少し顔を赤らめているのは、怒気か恥ずかしさか。
そして、ミルクを一気飲みして語りだす。というか、ホットミルクだけど熱くないのかな?
「これでも一応、仕事では頼られてるんで、その話は他の人にはしないで下さいね?」
「秘密にしててもさ、多分チヅルを連れてきたら、一瞬でバレるよ?」
「それでも、立場というものがありますので……」
「バウムには、クリスマスの時にバレたよな?」
「それでもです……」
少なくとも怒っては居ないようだが、先ほどまでの仕事モードは消え失せた。
これで、少し口が軽くなるといいんだけどな。
「で、さっきの話はどうなんだ?」
「えぇ、カオリ様は私を避けていましたね。
というよりは、クロさん以外を呼ぶことが、ほとんどありませんよ」
「まぁ、元々あんまりバトルしてなかったみたいだしな」
「それでも、クリスマスの時も距離を置くといいますか……。
私もクロさんと話はすれど、カオリ様と言葉を交わすのは、少なかったように思います」
「そっか。鬼若にはあまり苦手な感じを出さないし、もしかすると年上の男が苦手なのかもな」
「はぁ……。いつかアーニャも年頃になれば、ああなってしまうのでしょうか……」
「うーん、どうだろう。
アーニャは分からないが、カオリはちょっと特殊っぽいんだよね」
「といいますと?」
「パトロールの依頼を受けてるんだけど、その時に相手が年上の男だと震えてるんだよ。
ちょっとさ、怖がりすぎじゃないかなって思って」
「女性ですし、普通の反応かもしれませんが」
「どうなんだろうな。俺にはわからん。
けど、依頼に支障が出るし、何よりカオリが本当は嫌なんだったら、やめた方がいいかなと」
「もし、私が力になれるのでしたらお呼びください。
契約しているにも関わらず、主の役に立てていないのは不本意ですから。
カオリ様が必要と仰るのでしたら、ですが」
「助かるよ。鬼若が来れない時は、頼むかもしれないんでよろしくな」
「あと、一緒にチヅルも……」
「依頼にかこつけて、デートする気だな!? そういうトコだぞ!?」
「ははは。会えるなら、会いたいのですよ」
「はぁ……。ま、それも考えとくよ」
その言葉にアルダはニコニコしている。
立場とか、威厳とか……。もう全然守れてる気がしないな。
俺にとっては、こっちのアルダの方が見慣れているけどね。
『上神ちゃん上神ちゃん』
どした?
『今回のなろう版の前後書き、全部書き直す必要があるんやけど』
その時々の報告とか兼ねてるし、そういう時もある。
『何書いたらいい?』
そういう話を書いてる時点で、どうかしてるよな。
『とりあえず、この頃に“螺旋に沈む世界”を投稿してたみたいやで』
あぁ、ノベリズムでは投稿しないから、なろうから読んでって言ってたやつね。
『一応さ、あれも爆死まくらの一部なんやけど?』
四月章の番外編フルバージョンですね。まぁ、いいんじゃない?
あれ投稿すると“ある異世界の童話”も投稿しないとだし。
『全部の作品が繋がってるからこその弊害やなぁ……』
読み終わったら、ポイントを付けましょう!