爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

140連目 駄犬の躾もメイドの役目

公開日時: 2020年12月25日(金) 18:05
文字数:2,140

前回のらすじ

「まくらはお星様になったのじゃ……」


ガチャ神の今日のひとこと

「大陸間弾道まくらの攻撃力が気になるところじゃ」

「主様ーーーー!!!」



 広場にけたたましい声が響く。

見上げる先には、流星のごとくアイテムの尾を引き流れゆく彼の主。

それは見事な放物線を描き、視界の彼方へと消えてゆく。



「さすがはまくら様。飛行術をお持ちとは、御見逸おみそれいたしました」


「マジか!? 飛行術ってことは、主様は無事なんだな!?」


「冗談よ」



 一瞬安堵の表情を見せた鬼若だったが、冗談だと言った瞬間、再び青ざめる。

主を見失うのがこれで二度目になるのだから、焦るのも無理はない。

それも主は今、まくら姿である。本人もそれに慣れておらず、一人にするのは危険だろう。



「主様! いま助けに参ります!!」


「待ちなさい」



 駆け出そうとする鬼若を制止するが、聞く耳を持たず走り出そうとした。

仕方ないので羽衣を使い足を引っ掛けてやると、彼は見事に顔面を地面に打ち付ける。



「何をする!」


「落ち着きなさい。真に主を思うのであれば、ただ追いかけるのは愚策というもの」


「しかし、見失っては一大事だぞ!」


魔力を辿れる事を忘れてはおらぬか」


「うっ……」



 やはりこやつは短絡的すぎる。この様子では今までも、主によって助けられて来たのであろう。

これからは助けてやらねば、あの姿では簡単にやられてしまうであろうに。



「主を想うならば、まずはこの散らばったアイテムを集める事だ」



 まくらを吹き飛ばした推進力であるアイテム達、それは主の努力の証でもある。

それを捨てるのは、主の労力の否定である。ならば、一つたりとも失うわけにはいかない。



「それに、アイテムを集めながら進めば、着地地点までたどり着けよう」


「しかし、そんな悠長な事をしていれば、何者かに襲われる危険もあるだろう!」


「心配には及ばん。我の羽衣製のカバーならば、そう簡単には破れたりはせん」


「では、素早く集めて主様の元へ急ぐぞ」



 さすがに言うだけあって、鬼若のアイテム収集は異様なまでに早かった。

戦闘バトル以外であれば、来訪者は皆多少魔力を自由に使う事ができる。

我が魔力で羽衣を操るように、こやつは魔力で身体強化を行っているのであろう。

我の不得意とする体力仕事は任せてしまえるので、ちょうどいい。



「アイテムは所有権が移っていなければ、我らのボックスには入れられぬ」


「では、抱えていくしかないな」


「この量では抱え切れぬからな、羽衣で袋を作ってやろう」



 纏っている羽衣に魔力を流すと、ゆらゆらとゆらめき姿を変えてゆく。

イメージするは、前に見た登山者の背負っていた袋。あの程度の容量であれば入りきるだろうか。

しかし、足りなければ追加で作り、背負わせればよい事。



「では、急ぎアイテム回収を行いつつ、主様を追いかけるぞ!」


「うむ、一つたりとも回収漏れの無い様にな」





 道中、手の届かぬ所に落ちた物を羽衣を伸ばし回収した以外は、鬼若の素早さで全て集めた。

ゆえに我は若干手持ち無沙汰ではあったが、楽に進む事ができたのだった。


 その様子は、ただ契約しただけの相手に捧げるものではないだろう。

これほどまでに忠誠を誓えるほどに、あのまくらには何かがあるのだろうか。

ますます興味が沸く。これからじっくりと、その姿を見せてもらおう。



「アイテムはここで終っておるな」


「しかし、主様が居ないぞ!?」


「ふむ……。あの姿では自力で移動した、と考えるのは無理がある」


「ならば、やはり何かあったのでは」


「まずは鬼若、まくら様の魔力を辿ってみよ」


「あぁ、やってみよう」



 鬼若は目をつむり、集中し始める。

その背には、先ほど作った袋が増築に増築を重ね、歪な建物のようにそびえる。

自らの重みで崩れそうな姿であるが、我の魔力を纏う羽衣製ならばその心配もない。

しかし、それを悠々と背負い走り回れるのだから、やはりSSR★7とは怖ろしいものだ。


 この世界の戦闘が学園運営局うんえいのルールに縛られていなければ、もしくは、この体力馬鹿と戦う事になったかも知れぬとは……。

だが、その場合は我も羽衣を使う事になる。ならば結果がどうなるかは分からぬがな。



「こっちから……、主の気配がする……?」


「もしや、探知が下手なのか?」


「俺にはこういうの向いてないんだよ!」


「まぁよい、とりあえず行くしかあるまい」



 分かってはいたが、やはりこういう細かい作業は苦手な様子。

しかし、それ以外の手がかりもないのであれば、それに頼るしかあるまい。

指し示す先、それは町へと通じる道であった。



「なにか落ちておるな」



 主の気配のある方向、そちらに進めば、見覚えのある七色に光る石が落ちている。

大きさは直径1センチ程度、形はカットされた宝石のように整っている。

鬼若は初めて目にするのか、まじまじと眺めている。



「珍しい石だな。なんだこれは?」


「強い魔力を感じる。点々と続いておるし追いかけるとしよう」



 見覚えがあるのも当然だ。これはまくらの中に入っていた石である。

つまり考えられるのは、外装カバーが破られ、石を落としながら運ばれた。

もしくは意図があって抵抗せず、我らに行き先を教えるため自ら落としたかのどらか、か。


 どちらであったとしても、これはまくらにとっては自身の内部である。

人間であれば、血痕を残しているのと変わりはない。

先ほどのアイテムと共に、鬼若に悟られぬよう回収したもの、それもあまり良い状況ではない事を物語る。


 どうやら急ぐ必要があるようだ。

そういえば、最近後書きで本文に触れてない気がする。


「後書きの存在意義を疑われるのじゃ」


今回はめずらしく、ベル視点の話だねー。


「今回は珍しく、後書きっぽい事する気なのかのぅ」


いきなり出鼻を挫かれた!?


「誰が相手であっても主導権を握られてしまう鬼若が不憫じゃの」


あ、スルーなんですね、そうですか。


「次回はどうなるのかのう?」


ここまでの完全なスルー、俺でなきゃ見逃しちゃうね。

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