前章のあらすじ
『修学旅行でカオリのアレがバレた』
外注さんの今日のひとこと
『ガチャ神が前後書きから去って、はや二ヶ月章分……』
「全く、酷い目にあったもんだ。
バトルにならなきゃ、抜け出したのバレなかったのにさ」
「反省文、がんばってね……」
雨降る学校からの帰り道、大きなモスグリーンの傘を差し歩く、カオリに抱きかかえられながら、俺はボヤいていた。
修学旅行の夜、俺がホテルを抜け出した件は、ながーいお説教だけで済んだと思っていた。
それなのに、今さら反省文の提出を言ってくるんだ。文句の一つも言いたくなる。
まぁ、お説教タイムですら、俺は表情一つ変わらないまくら姿をいいことに、全然話を聞いてなかったんだけどな。
しかし抜け出したのは事実だし仕方ない。学生というのは不自由なもんだ、と今さらながら再認識したのだ。
カオリは妙に申し訳なさそうにしているが、「自分だけが逃げたみたいで、本来ならば同じ罰を受けないといけないのに」などと考えているのだろう。
カオリに、俺がバトルに巻き込まれた事をベルに知らせてもらったため、抜け出したのがバレてしまったと思っているのだ。
けれどそれは、俺が自称海賊のアイリを挑発している間に念話で伝えた事を実行しただけなので、カオリに落ち度はない。
むしろ、アイリの接近に気付くのが遅れた俺のミスだ。
「ま、カオリがバレなくて良かったよ。
それに、バトルは鬼若でも対処できる相手だったし」
「それなら、ベル先生は呼ばない方が良かったね」
「いや、それは結果論だ。相手がどんな奴かも分からないのに安易な判断は危険だしな。
それに、鬼若を呼んだ時点でバレてたんだよ」
どういう事か分からない、という顔をするカオリに説明してやる。
といっても、俺も後で鬼若に聞いた話なんだけどな。
それによれば、鬼若は俺の泊まっている部屋の前の廊下で見張りをしていたらしい。
旅先の慣れない土地で万一の事が起きないように、と。
それを知ったレオン先生は止めたようなのだが、ホテルの外には出ていないし、契約主の身を案じるその気持ちは分からないでもないと、鬼若と共に居たらしい。
鬼若は今までもゲーム時代に色んなイベントに連れて行ってたもんだから、修学旅行イベントも何らかのトラブルに巻き込まれるであろうと、今までの経験から察していたようだ。
レオン先生も、野良ではなく誰かと契約をしているらしく、鬼若ほどではないが契約主の事をいつも気にかけているのだとか。
その話を聞く限り、レオン先生は良い人と契約を結べたのだろうな。
ただ、見張りの間暇を持て余した上に、酒が入って若干酔っていたらしく、最近は他の契約者とばかり居るので寂しいだとか、そういう話を聞かされて鬼若は少しばかりうんざりしたらしい。
いや鬼若、お前もたいがいだからな?
ともかく、そうやって居もしない俺のために、二人で見張りをしていたので、俺が鬼若を強制召喚した時点で、レオン先生にバレないわけがない。
何か緊急事態だと判断した先生は、部屋の中を確認しに行き、俺の眠っているはずのベッドの布団を引っぺがし、身代わりぬいぐるみを発見したとの事だ。
「そういう訳でさ、どうやったって反省文からは逃げられなかったワケよ」
「あらら……。でも、怪我とかも無くてよかったね」
「まぁな。だけどさ、バトルに勝ったのはいいんだけど、ちょっと気になる事があるんだよな」
「気になること?」
俺とカオリは、今では隠す必要のあることはほとんどない。
なので少しでも気になった事や気付いた事は、積極的に情報交換した方がいい。
特に、今回は新キャラに関することだ。これは今後の身の振り方にも関わってくるだろうからな。
「鬼若が言ってたんだけどさ、戦ったときに何の手ごたえも無かったらしいんだよ」
「それは、鬼若君が強いからって意味じゃないの?」
「んー……。直接俺が体感したわけじゃないからなんとも言えないけど、なんだか空気を切ったような感覚だったらしい。
それにさ、バトルが終わったら、忽然と姿を眩ましたんだよな」
「どういうこと? 転送されたとか、そういうのじゃないの?」
「ああ。魔方陣も出てなかったしな。
もしかして、アレって幽霊だったんじゃ……」
「ちょっとやめてよ……。
それに、この世界に幽霊って居るの?」
「幽霊キャラか……。ヨウコもある意味近いよな。妖怪の類だし。それに……」
「それに?」
「いや、なんでもない。
キャラとしての幽霊だとしても、バトルの感覚が変わる事はないだろうしな」
さすがに「俺が幽霊です!」なんて事は言えなかった。
というか、カオリ自身も似たような存在だと思うんだけどな……。
けれど、気付いてないなら、気付かないままの方が良い。
「でも、見たことない人だったんだよね?
それなら、新しい来訪者の減少は収まったのかな?」
「いや、修学旅行から帰ってから、アーニャに聞いてみたんだが、そうでもないらしい」
「それじゃ、本当に幽霊……?」
「正確な所はわからんが、来訪者が来なければこの世界は、ゲームのサービス終了と共に終わる」
「…………。幽霊よりも、よっぽど問題だね」
「だから学園運営局から呼ばれたのは、ちょうど良いと思ってたんだよ。
何か面倒な事を頼む気だろうが、それと引き換えに、その辺の情報を聞き出してやろうと思う」
「そうだね。直接聞いた方が確実だもんね」
今こうしてカオリと二人だけで居るのは、学園運営局へ行くためだ。
けれど、俺はこちらから学園運営局に行くことは躊躇っていた。
俺だって、修学旅行の一件があったので色々と調べたいし、実際に行動にも移した。
けれどそれは、この世界で大きな影響力を持つ三田家と白鳥家、その両家の力を使って、この世界の異変や学園運営局の内情調査するという方法だ。
あの局長なら、うまく誘導すれば口を滑らせそうではある。
けど、局長の知らない事もあるだろうし、俺が嗅ぎまわってると知られるのも、あまり得策ではないと考えたのだ。
なにせ局長には、俺が転生者だとは知らせてないのだから、いち契約主としての行動に限定したほうが良い。
それなら、その辺のわだかまりのない、ガチャ神様に報告と相談に行くべきなのだろう。
けれど長いお説教タイムの途中に、ふと一つの懸念が頭をよぎったのだ。
もし……、もしガチャ神様の言う事が、全て嘘だったとしたら……?
俺が運0であることや、この世界の成り立ち、神の世界の事、全てが作り話だったら?
今まで考えた全ての前提条件が覆る可能性、それがふと頭の中に浮かんだのだ。
なぜなら、ガチャ神様の言う事は全て裏が取れない事ばかりだ。
作り話である理由も意図も分からない。けれど、少なくともこの世界の成り立ちは、カオリの証言と矛盾する。
神と偽る、悪魔なのかもしれない……。
その可能性を否定できるか、もしくは他に方法が無くなるその時までは、安易に“神頼み”しない方がいい。俺はそう結論付けたのだ。
ま、それに俺に何か用があるのなら、クロのおやつ事件の時みたいに向こうからメッセージを送る事はできるのだ。最終手段として残しておくのも手だろう。
そういう風に頭の中を整理していると、学園運営局が遠くに見えた。
「カオリ、雨の中運んでもらって悪いな」
「ううん、気にしないで」
この優しさは本心なのか、それとも“役目”だからと思ってやっているのか。
もしカオリが、悪魔とやらにいいように使われているのだとしたら、それは俺が止めてやらねばならない。
『まくら氏、疑心暗鬼に陥る』
考えすぎ。
『察しのいいまくらは、お嫌いかね?』
なんかそのセリフ、色々混ざってない?
『気にしたら負けや』
というかさ、レオンの契約主の話ってしたっけ?
『そういや、出すタイミングなかったからカットした気がする』
おいこら!
『まー、隅々まで読んでるなら気付かない事もないかもしれなくはないかも??』
つまり、気付けないって事か。
『うん。だってこの連載だけじゃ無理だし』
初登場作は、なろうにあったりする。
”ダンジョンと呼ばれていた地下街が本当にダンジョンだったんですが…”
も、よろしくお願いします!
『よし、ダイマも終わったし満足!』
いつもながらにひどい後書きだ。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!