爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

930連目 本気の光臨 ~四度も光臨してるとレア感ないぞ~

公開日時: 2021年2月6日(土) 18:05
文字数:3,062

前回のあらすじ

『運営会社の中の人登場』


外注さんの今日のひとこと

『お待たせしました! 久々にヤツが登場します!』

 神社に続く石段を登るのも、これで何度目だろうか。

しとしとと降り続く雨の中、緑と青の二つの傘がゆっくりと登ってゆく。

歩みを進めるのはカオリとアイリ、ふたりはそれぞれ、俺と局長を抱えている。



「ところで、今から会いに行くカミサマってのは、どんなヤツなんだぜ?」


「それは……、すげぇ答えにくいんだが……。とりあえず爺臭い喋り方するヤツだよ」


「一番に出てくる特徴が、喋り方なの?」


「いやさ、俺も姿を見たことがないんだよな。いつも声だけだし。

 あ、そういやクロは、同い年くらいの女の子だったらいいな、なんて言ってたな」


「えっ? クロは会った事あるの?」


「初詣の時に会ったらしい。

 それから毎朝御参りと掃除に来てるみたいでさ、この石段も綺麗に片付いてるだろ?」


「そうだったんだ……。クロってば私に言ってくれてもよかったのに」


「ま、誰しも一つや二つ、秘密を抱えてるもんさ」


「クマの隠し事のせいで、被害を被ってるのもここにいるんだぜ!」


「悪かったって……」



 最近の局長は事あるごとに、こうやって俺をイジメるのだ。

まぁ、俺だけじゃないようで、職員達も局長の気が立っているのに気付いているのか、少しよそよそしい態度をしている。

事態が事態だけに気持ちは分かるが、周りの奴らが不憫だ……。



「でも今から会いに行く神様がこの世界を創ったんだよね?

 その神様にお願いして、世界ゲームの管理権限? っていうのを、アイリさんに渡してもらえば、全部解決するんだよね?」


「そうだぜ! この方法に賭けるしかないんだぜ!」



 管理権限、それはゲームのプログラムにアイリが介入するために必要な、パスワードみたいなものだ。


 今までの状況を聞いた俺は、この世界がゲームの仕様とこちらでの変更事項が入り乱れた状態であることから、この世界は管理者が複数に別れてしまっていると考えた。

そういった結論に至った理由は、鬼若のスキル修正は学園運営局によって行われている件のせいだ。

それは運営会社の手が入っていないのだから、学園運営局が権限を持っているということになる。



 そして、もう一人の権限を持つ人物、それがガチャ神様である。

クリスマスイベントの改変は、学園運営局で行った訳ではないらしく、かつ去年と全く同じイベントを行えば、俺が違和感を覚える。

そのためにガチャ神様がやったのではないかと俺は考えたのだ。


 まぁ、これは想像でしかないけどね。

けれど、カオリの事についても世界の改変を行っているわけだし、神という立場で裏で糸を引いていると考えたほうが妥当だろう。


 それらのこの世界への介入する能力、つまりゲームの管理権限をアイリに全て渡し、俺のアカウントをオフライン稼動させれば、この世界を存続する事ができるかもしれないわけだ。



「アイリ、オフライン化は大丈夫そうか?」


「……オフライン化データは用意できている。

 ……データの置き換えができる状況であれば、問題ないはず」


「そこは、ビシッと『絶対大丈夫』って言い切るところなんだぜ!」



 局長はそう言うが、それは願望であって、実際はそんな簡単な事ではないだろう。

ただのデータ書き換えならまだしも、今回やろうとしている事は、異世界の存在自体を改竄しようとしているのだ。

ただのプログラマーには、少しばかり荷が重いだろう。


 それに、相手はあのガチャ神様だ。なにか、とんでもないポカをやらかしているかもしれないし、逆にそう見せかけた、何らかの策略を廻らせるような邪神の可能性だってあるのだ。


 けれど邪神や悪魔であろうと、願いを一つ叶えるというのは守ってもらえると思う……。

いや、確証はないけど、ああいうのって騙すけど、約束は破らないのが“お決まり”だよな……?



「やっと頂上が見えてきたんだぜ。

 さっさとカミサマとやらを呼び出すんだぜ!」



 まるで自分で苦労して登ってきたような言いようだが、アイリに運んでもらったんだよなぁ。

ともかく、最近の長雨で少しカビ臭さを感じる小さな社の前まで来れば、あとは呼び出した上で、落とし前を付けてもらうだけだ。

この世界はともかく、ゲームのサービス終了を招いた落とし前をな!!



「それで、どうやって呼び出すの?」


「そっか、カオリは初めてなのか。

 まぁ、普通に神社にお参りする感じにすれば、向こうから声を掛けてくるハズだ」



 普通の御参り。つまり鈴を鳴らし、手を叩き、目を閉じて拝む。

それを四人……いや、二人と二つで同時に行う姿は、なんとも言い難い不思議な光景だ。

そんな事を思いながら目を瞑った暗闇の中、声が掛かるのを今か今かと待っていたのだが……、遅い!

一体どうしたというのか、いつもの即時対応とは打って変って、放置されているかのようだ。居留守か?



「……いつまでこうしてればいいんだぜ?」


「なんか今日は反応が遅いな……。

 いつもは、待ってましたとばかりに声が聞こえてくるんだが……」


「私たちをからかってるとかは、ナシなんだぜ!?」


「いやそんな事無いって……。もう少し待ってみよう」



 一体どうしたというのだろうか。

まさか、神を疑う信仰心の無い者にかける言葉は無いとでもいうのだろうか。



「ふはは! 待たせたのじゃ! ワシ、本格光臨じゃ!!」


「うわっ!? なんかいつも以上にテンション高くないですか!?」


「さて、おぬしらいつまでもそうしておらんで、目を開くがよい!」


「え? いつもはサウンドオンリーじゃん?」


「今回は、特別仕様なのじゃ!」



 意味はよくわからないが、言われたとおり目を開くと、そこには金髪ツインテールの少女が一人立っていた。

白いワンピース姿で、肩部分が紐状になっており、梅雨冷えするこの時期には少し寒そうに思えた。

そして、その姿とは想像できない口調で喋るのだ。



「ワシこそこの世界の創造主、ガチャ神であるぞ! 頭が高い!!」


「そういうおふざけが通じるの、俺だけなんでやめてもらえます?」


「もちろん冗談じゃ!」



 一応神様と紹介しているので、カオリは律儀にも深々と頭を垂れているが、俺はもちろんいつも通りだ。

そして、局長は元々一頭身だし、アイリにはそういった動きができないようだった。



「そんな冗談に付き合ってるヒマは無いんだぜ! さっさと権限を渡すんだぜ!!」


「ワシの扱い、ヒドくない?」


「うん。局長最近荒れてるからさ、おおめに見てやってもらえます?」


「まぁよい。管理権限の譲渡じゃな?」


「って、ガチャ神様色々知ってる風ですが、大丈夫ですか?」


「ワシこう見えて神じゃし、おぬしらが色々やってた事は把握してるのじゃ」


「えっ、いつにもまして優秀……。何か裏がありそうで怖い」


「ヒドい言い草じゃな!」



 今まで色々あったから、そりゃ疑うのも当然だと思うんだけどな。

それに、今では本当に信用していいのかどうかすら怪しんでいるんだから。



「だから! そんな事はいいからさっさとやるんだぜ!!」


「うるさいボールじゃのう……。

 しかし、権限を譲渡しても世界の存続は難しいのじゃ……」


「はぁ!? どういうことなんだぜ!?」


「えぇとじゃな、この世界の核となるクマのアカウントなんじゃが……。

 それは今、クマが持っておる端末の中にあるのじゃ」



 そう言って俺の方を見る……。いや、見ているのは、俺の胸元に付けられた魚型の名札だな。

それは、俺が名前を付けた、AI搭載であろう、不思議な名札型の端末だ。



「端末って、もしかしてサリーの事か?」


「そうじゃ。その端末にオフライン化データを入れる事になるのじゃが……」



 少女姿のガチャ神様は、アイリの顔をじっと見つめた。



「……ゲームデータの端末に、ゲームデータを入れる。……まるでマトリョシカね」


ガチャ神ちゃんの登場を待ってる人、居たんですかね?


『さぁ? 意外と人気かもれんやん?』


本文だけでなく後書きでの扱いもヒドい。


『そいや、ガチャ神が後書きから旅立って結構経つね』


あ、後書きメンバーと言えば、次回新メンバーが来ます!


『マジで? 後書きが本編とか言われてるけど、新メンバーて……』


そろそろ二人でやるのにも飽きたし?


『飽きたってだけで新メンバーかよ』


さてさて、次回が楽しみになりましたねー?


『後書きの新メンバーで、そんな期待煽れるんかな?』

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