爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

910連目 ゆっくり尋問されていってね!

公開日時: 2021年2月5日(金) 18:05
文字数:2,407

前回のあらすじ

『まくら氏、局長に呼び出される』


外注さんの今日のひとこと

『日常パートに戻るかと思いきやですよ』



「ゆっゆっ! お茶だよ~!

 おまんじゅうもあるから食べてね~!」



 局長室へ案内してくれたのは、ピンクのボール……。

じゃない、職員A(仮)は、器用にお茶を淹れてくれた。

俺達は「あぁ」とだけ返して、そのお茶を飲みながら局長を待つ。

部屋は前に来た時とは違い、本棚などの家具が増え、色々な書類らしき本や置物が置かれている。

どうやらこの部屋も有効に使われているようだ。



「もうすぐ局長くるからね~。

 ゆっくりしていってね!!」



 いつもの決めセリフを言った職員は、ノルマ達成とでも言いたげな、ドヤ顔をしながら部屋を出てゆく。

残された俺達は、部屋をキョロキョロと見回しながら、暇を持て余していた。



「なんだか、前と雰囲気が違うね」


「あぁ、前に来た時から四ヶ月くらいか?

 職員達も、落ち着いた感じがあるよな」


「そうだね。うまくやれてるようで安心したよ」



 カオリが前に来た時は一番荒れていた時期だ。まさに阿鼻叫喚といった様子だった。

その頃から考えれば、局内は綺麗で、掃除が行き届いている事が見て取れる。

それに、職員達も目の下にクマを飼っている事も無い。


 それもこれも、局長がああ見えて優秀であることの証明だ。

そうこうしていると扉が開き、見慣れた黄色ボールがぽよぽよと部屋に入ってきた。

噂をすればなんとやら、である。



「待たせて悪かったんだぜ」


「よう、久しぶり……、でもないな。修学旅行の時に会ってるし」


「え? 修学旅行に来てたの?」


「バトルの立会いをしただけなんだぜ。

 だからクマには会ったけど、南の島を観光したわけじゃないんだぜ」


「せっかくなんだし、ちょっとくらい遊んだって良かったんじゃないか?」


「残念な事に、局長ってのはそんなに暇でもないんだぜ」



 そんな話をしながらも、局長はマイマグカップにコーヒーを淹れ、俺達の座るソファーの前に陣取り、饅頭を頬張り一気に流し込んだ。

とこで、コーヒーと饅頭は合うのだろうか?



「で、そのお忙しい局長様が俺達に何の用だ? また何かの依頼か?」


「それならメセージで済ますんだぜ」


「それじゃぁ、また不具合が起きたの?」


「不具合……。まぁ、そう言えなくも無い問題だぜ」



 いつもの様子とは違い、なんとも歯切れの悪い返事だ。

言葉を選ぶほどの思慮深さはないと思ってたんだけどな。



「ま、単刀直入に聞くんだぜ。

 クマ、お前の隠し事、全部話してもらうんだぜ」


「へぁっ!?」



 なんとも気の抜けたバカみたいな声が出てしまった。

隠し事? うん、色々あるけどさ。ドレノコトカナー?



「いやいや、隠し事って何の事だよ?」


「しらばっくれても無駄なんだぜ! ネタは上がってるんだぜ!!」


「なんだその、刑事ドラマの取調べみたいなノリは……」


「あくまでもシラを切るつもりなら、こちらにも考えがあるんだぜ!」



 妙なテンションの高さで取調べごっこをする局長は、何やら本棚の書類の中から一枚の紙を取り出す。

そしてテーブルの上に置くと、その紙から魔方陣が浮き上がり、何やら雑音混じりの声が聞こえてきた。



『……う訳で……っ! 俺はあんま親父……きじゃないんだよな、って悪……なつまんねー話してさ』



 雑音混じりで途切れ途切れではあるが、その声は確かに俺のものだった。

そしてそれは、あの修学旅行の夜にカオリと話していた内容だ。


 その録音された音声を聞いたカオリは顔を青ざめさせている。

俺にしてみれば、この世界を牛耳っている学園運営局うんえいがこんな事をするのは、予想こそしなかったが、不可能ではないだろうな、という程度の認識だ。



「うわっ、盗聴かよ……。趣味悪いぞ局長」


「学園都市を管理する者として、手段は選べないんだぜ」


「はぁ……、証拠があるんじゃ言い逃れは無理か……。

 けどさ、この時の話以外に何を話せと?」


「知ってること全部なんだぜ!」


「つまり、俺の生い立ちやらなんやら全部を、履歴書に書くように話せと?」


「そうじゃないんだぜ!!」



 ぷんぷんという音が聞こえそうな雰囲気で、ぽよぽよ跳ねながら反論する局長。けれど“知ってる事全て”ってのはそういう意味になる。

情報を聞き出したいなら“何を”知りたいのか、明確にすべきなんだぜ?


 なんて事を本気で思ってる訳ではない。ただ、ちょっと時間稼ぎをしただけだ。

うまく誤魔化す方法を考えるために。



「で、結局何が聞きたいんだよ?

 俺が異世界人だとして、学園都市には来訪者って名前の異世界人が溢れてるじゃねーか。

 もしかして、報告してなかったのがマズかったのか?」


「そうじゃないんだぜ! あっ、そこも問題だけど、そこじゃないんだぜ!

 一番聞かないといけないのは、この世界がゲームだとかいう話なんだぜ!!」



 どうやらうまく誤魔化されてくれる気はないようだ。

異世界人だらけの世界観のおかげで、俺とカオリが異世界からやって来た人であっても問題はない。

その話でうまく丸め込もうなんて思っていたんだがな。


 今さらだが、この世界の成り立ちを喋ったのは失敗だったな。

そのせいで、カオリにも余計な心配をさせてしまう事になったし、局長にこうやって問いただされる事態に陥ってしまった。


 こう見えて局長は以外にも優秀だし、誤魔化すのは無理そうだ。俺の“知っていること全て”を話そう。

俺を転生させた神と、カオリを転移させた悪魔を含めて……。





「ってことで、この世界は、俺達が居た世界のゲームを元に創られてて、その創ったのが悪魔だか神だからしいんだよ」


「全く、こんな大事な事を隠してるなんて、どうかしてるんだぜ!」


「いやさー、こんな話、普通信じないだろ?」


「確かに……。信じろというのが無理な話なんだぜ。だけど今はそうじゃないんだぜ。

 似た境遇の人が二人も居るし、別の証人もこちらは掴んでるんだぜ」


「別の証人? 俺達以外にも同じ転生者が居るのか?」


「まぁ……、似たような人物ってだけなんだぜ。

 今日は、その人と会わせるために呼んだんだぜ」



 そう言うと、局長は扉へぽよぽよと跳ねてゆき、扉の外に待たせていた人物を招き入れた。

『局長は引継ぎ書だけじゃなく、マジで監視してたんやね』


変態盗聴局長。


『若干早口言葉っぽい辛口コメントあざっす』


さて、次回重要人物が登場するようです。

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