爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

1070連目 悪い方のニュース

公開日時: 2021年2月13日(土) 18:05
文字数:2,588

前回のあらすじ

『みんなでガチャれば怖くない!』


外注さんの今日のひとこと

『一難去って、また一難』

 同盟システムの方法が分からない、それは俺を絶望へと叩き付けた。

しかし、思わぬ救世主が現れたのだ。



「これがあればいいんだろ?」



 ニッと笑い、同盟用の記入用紙を差し出したのは、サンタの爺さんこと、ミタ爺だ。



「どうしてこれを?」


「望まれたモノをプレゼントするのがサンタの仕事だからな。紙切れ一枚くらいなんてことねぇよ。

 ってのは冗談だ。本当は、カオリとアーニャに同盟を組ませるために持ってたんだよ」


「何度断られてもめげない執念……。けど、今はそれに助けられたわけか」



 思わぬプレゼントだったが、これで俺達24人全員がサインする事で、全ての契約主が同じ同盟に入ることとなった。



「承認に関しては問題ないのか?」


「……大丈夫、承認した」


「よし、これであとは神様へのお願いだけだな。クロ、頼んだぞ」


「はいですっ!」


「……ちょっと待って」


「ん? まだなんかあるのか?」


「……悪い方のニュースを言ってない」


「え? 同盟の方法がわからないってのが、ソレじゃなかったのか!?」


「……悪いニュース、それは1人未契約の者が居る」



 未契約の者が1人……?

俺はぐるりと辺りを見回した。皆揃っているし、全員契約したはずだ。



「あっ……。もしかして、あいつか?」


「主様、心当たりがおありで?」


「ほら、クリスマスの時に森で会った……。ベル、覚えてるだろ?」


「……」


「あー。もしかして、あの綺麗だけど、なんか怖いお姉さん?」


「セルシウスは覚えていたか。確か名前は……、メシアだったか?」



 その時、屋内にも関わらず風が吹き荒れ、舞台の中ほどに小さなつむじ風が起こる。

そしてその中から、実体を持たないような、透明感を纏った美女が現れる。



「誰か私を呼んだか?」


「えらく派手な登場ですね……」


「なんだ、貴様か。なにやら、ただならぬ気配がしたのだが……」


「ただならぬ気配?」



 彼女は小さくフンと鼻を鳴らし、その透き通る白い髪と、同じく一点の汚れもない白いワンピースを揺らしながら、人々を物色するように一人ひとり眺める。


 誰しもが、その燃えるように紅い目に見つめられると、動く事も、言葉を発することすらも封じられてしまうようだった。

そして、ある人物の前で立ち止まる。



「貴様……、なぜここに居る」


「久しぶりじゃのうメシアよ。いや、昔のように、メシねぇとでも呼ぶべきかの?」


「まっ……、まさかお父様もこちらに!?」



 言葉が早いか手が早いか。あわあわと、朝の時間に追われながらの身支度のように、どこからともなく取り出した櫛で髪をとき、身なりを整え始めた。

その様子は、先ほどの威圧感が嘘のようで、デート前の女の子にしか見えない。



「あやつなら、ここには来んぞ」


「何故です!? ずっとお待ちしておりますのに!」


「言いにくいのじゃが、あやつはワシに全て任せて、完全に手を引くつもりじゃ」


「なんですって!? 貴様に全てを任せるなど……。

 貴様、一体どんな手を使ったというのだ!?」


「成り行きじゃ……」



 なにやら二人で話が進んでいるが、俺たちは置いてけぼりだ。

しかし、ガチャ神の知り合いって事は、彼女が残ったSSR☆7という事ではないのだろう。

となると、未契約とは誰の事だというのだろうか。



「ともかく、ワシらの話は後回しじゃ。ワシらには、時間など有り余るほどあるからのう」


「…………。知っていること、全て話させますからね」


「そういうトコなんじゃが……、まぁよい。

 して、まくらよ。残る1人に見当は付いたかの?」


「さっぱりですよ。アイリ、一体誰なんだ?」


「……それは、ベルフェゴール」


「っ!?」



 ばっとベルの方へと振り向けば、視線を落としベルはうつむいた。

今の反応、本人は分かっていたのか……。



「いや、おかしいだろ!? 俺がこっちに来てすぐに契約したんだぞ?

 それからずっと俺のSSR☆7は鬼若とベルの二人だったし、端末サリーの表示もそうなってるぞ!?」


「……確かにSSR☆7は二人。

 ……けれどそれはベルフェゴールではない。

 ……鬼若と、もう一人は……貴方自身」


「ちょっと待て、意味が分からん!

 なんで俺が、俺自身と契約した事になってんだよ!?」


「……それは分からない」


「いや、そこが大事なんですけど!?」



 まさか……、これが局長達を悩ませていた不具合バグのひとつなのだろうか……。

今まで俺には影響を及ぼさなかったのに、こんな時に出てくるなんて……。



「ふむ、ワシが説明してやろう」



 今までこちらの事情は見守るだけだったガチャ神が口を挟む。

一体何があったと言うのか。



「おぬし、その契約の時、何か変わった事せんかったかのう?」


「え……? あ、そういや鬼若に契約式ガチャを代行してもらったな」


「それが原因じゃ。鬼若が契約したいと願う者、それは誰を差し置いてもおぬしじゃろうて。

 最も運気の高まっていた鬼若が、それを引き当てられぬ道理はなかろう?」


「いやいや、俺はゲームのキャラじゃねえよ!?」


「考えてみるがよい、来訪者とはどういった存在かを」


「ん……? どういう事だ?」


「……主様、来訪者とは異世界より来た者。ならば主様も……」


「そういう事じゃ」



 つまり、俺もまくらに転生したとはいえ、この世界から見れば異世界から来たヤツって扱いなのか……。

って納得できるわけねえよ!?



「でもそれってそういう設定ってだけで……」


「ゲームの設定を元にしておっても、この世界のことわりであることには変わりないのじゃ」


「ちょっと待って下さい」



 その話に割り込んできたのはカオリだ。

そうだ、カオリも俺と同じ存在なのだ。



「それなら、私も未契約という事になるんじゃないですか?」


「カオリ、おぬしは契約式ガチャでの契約よりも先に、別の契約を結んでおったではないか。

 同盟という契約をな」


「ってことは、俺も先に同盟を結んでいれば、こんなややこしい事にはならなかったと……?」



 ガチャ神は、ゆっくりと頷く。

なんだよそれ、それじゃあなにか、俺は俺自身と契約してバカみたいに喜んでたって事か!?

本物のバカじゃん……。


 いや、今はそんな事は問題じゃない。ベルとどうやって契約するかだ。

他の契約主は、もう契約石を使い果たした。

そして俺がSSR☆7を引き当てるには100回契約式ガチャを回すしかない。

100回分、それは契約石が500個必要だ……。


 残りの契約石……、そう多くはないはずだ。

嫌な予感をひしひしと感じつつ、俺は端末サリーに確認する。



「サリー、残りの契約石は何個だ?」


「410個デス」


「くそっ! 足りねぇ!!」


『メシア、お前生きとったんか!?』


「また知らない人が出てきたんだぜ……」


『俺も忘れてた』


「おい。で、彼女は何者なんだぜ?」


『森の守り神的なさむしんぐらしいで』


「さむしんぐ……?」


『色々と色々あって、ガチャ神様や上神様と顔見知りらしい』


「色々と色々を聞きたいんだぜ」


『後書き終わらせてから、ゆっくりとな』


「このパターンが多くなってきたんだぜ」

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