前回のあらすじ
『みんなでガチャれば怖くない!』
外注さんの今日のひとこと
『一難去って、また一難』
同盟システムの方法が分からない、それは俺を絶望へと叩き付けた。
しかし、思わぬ救世主が現れたのだ。
「これがあればいいんだろ?」
ニッと笑い、同盟用の記入用紙を差し出したのは、サンタの爺さんこと、ミタ爺だ。
「どうしてこれを?」
「望まれたモノをプレゼントするのがサンタの仕事だからな。紙切れ一枚くらいなんてことねぇよ。
ってのは冗談だ。本当は、カオリとアーニャに同盟を組ませるために持ってたんだよ」
「何度断られてもめげない執念……。けど、今はそれに助けられたわけか」
思わぬプレゼントだったが、これで俺達24人全員がサインする事で、全ての契約主が同じ同盟に入ることとなった。
「承認に関しては問題ないのか?」
「……大丈夫、承認した」
「よし、これであとは神様へのお願いだけだな。クロ、頼んだぞ」
「はいですっ!」
「……ちょっと待って」
「ん? まだなんかあるのか?」
「……悪い方のニュースを言ってない」
「え? 同盟の方法がわからないってのが、ソレじゃなかったのか!?」
「……悪いニュース、それは1人未契約の者が居る」
未契約の者が1人……?
俺はぐるりと辺りを見回した。皆揃っているし、全員契約したはずだ。
「あっ……。もしかして、あいつか?」
「主様、心当たりがおありで?」
「ほら、クリスマスの時に森で会った……。ベル、覚えてるだろ?」
「……」
「あー。もしかして、あの綺麗だけど、なんか怖いお姉さん?」
「セルシウスは覚えていたか。確か名前は……、メシアだったか?」
その時、屋内にも関わらず風が吹き荒れ、舞台の中ほどに小さなつむじ風が起こる。
そしてその中から、実体を持たないような、透明感を纏った美女が現れる。
「誰か私を呼んだか?」
「えらく派手な登場ですね……」
「なんだ、貴様か。なにやら、ただならぬ気配がしたのだが……」
「ただならぬ気配?」
彼女は小さくフンと鼻を鳴らし、その透き通る白い髪と、同じく一点の汚れもない白いワンピースを揺らしながら、人々を物色するように一人ひとり眺める。
誰しもが、その燃えるように紅い目に見つめられると、動く事も、言葉を発することすらも封じられてしまうようだった。
そして、ある人物の前で立ち止まる。
「貴様……、なぜここに居る」
「久しぶりじゃのうメシアよ。いや、昔のように、メシ姉とでも呼ぶべきかの?」
「まっ……、まさかお父様もこちらに!?」
言葉が早いか手が早いか。あわあわと、朝の時間に追われながらの身支度のように、どこからともなく取り出した櫛で髪をとき、身なりを整え始めた。
その様子は、先ほどの威圧感が嘘のようで、デート前の女の子にしか見えない。
「あやつなら、ここには来んぞ」
「何故です!? ずっとお待ちしておりますのに!」
「言いにくいのじゃが、あやつはワシに全て任せて、完全に手を引くつもりじゃ」
「なんですって!? 貴様に全てを任せるなど……。
貴様、一体どんな手を使ったというのだ!?」
「成り行きじゃ……」
なにやら二人で話が進んでいるが、俺たちは置いてけぼりだ。
しかし、ガチャ神の知り合いって事は、彼女が残ったSSRという事ではないのだろう。
となると、未契約とは誰の事だというのだろうか。
「ともかく、ワシらの話は後回しじゃ。ワシらには、時間など有り余るほどあるからのう」
「…………。知っていること、全て話させますからね」
「そういうトコなんじゃが……、まぁよい。
して、まくらよ。残る1人に見当は付いたかの?」
「さっぱりですよ。アイリ、一体誰なんだ?」
「……それは、ベルフェゴール」
「っ!?」
ばっとベルの方へと振り向けば、視線を落としベルはうつむいた。
今の反応、本人は分かっていたのか……。
「いや、おかしいだろ!? 俺がこっちに来てすぐに契約したんだぞ?
それからずっと俺のSSRは鬼若とベルの二人だったし、端末の表示もそうなってるぞ!?」
「……確かにSSRは二人。
……けれどそれはベルフェゴールではない。
……鬼若と、もう一人は……貴方自身」
「ちょっと待て、意味が分からん!
なんで俺が、俺自身と契約した事になってんだよ!?」
「……それは分からない」
「いや、そこが大事なんですけど!?」
まさか……、これが局長達を悩ませていた不具合のひとつなのだろうか……。
今まで俺には影響を及ぼさなかったのに、こんな時に出てくるなんて……。
「ふむ、ワシが説明してやろう」
今までこちらの事情は見守るだけだったガチャ神が口を挟む。
一体何があったと言うのか。
「おぬし、その契約の時、何か変わった事せんかったかのう?」
「え……? あ、そういや鬼若に契約式を代行してもらったな」
「それが原因じゃ。鬼若が契約したいと願う者、それは誰を差し置いてもおぬしじゃろうて。
最も運気の高まっていた鬼若が、それを引き当てられぬ道理はなかろう?」
「いやいや、俺はゲームのキャラじゃねえよ!?」
「考えてみるがよい、来訪者とはどういった存在かを」
「ん……? どういう事だ?」
「……主様、来訪者とは異世界より来た者。ならば主様も……」
「そういう事じゃ」
つまり、俺もまくらに転生したとはいえ、この世界から見れば異世界から来たヤツって扱いなのか……。
って納得できるわけねえよ!?
「でもそれってそういう設定ってだけで……」
「ゲームの設定を元にしておっても、この世界の理であることには変わりないのじゃ」
「ちょっと待って下さい」
その話に割り込んできたのはカオリだ。
そうだ、カオリも俺と同じ存在なのだ。
「それなら、私も未契約という事になるんじゃないですか?」
「カオリ、おぬしは契約式での契約よりも先に、別の契約を結んでおったではないか。
同盟という契約をな」
「ってことは、俺も先に同盟を結んでいれば、こんなややこしい事にはならなかったと……?」
ガチャ神は、ゆっくりと頷く。
なんだよそれ、それじゃあなにか、俺は俺自身と契約してバカみたいに喜んでたって事か!?
本物のバカじゃん……。
いや、今はそんな事は問題じゃない。ベルとどうやって契約するかだ。
他の契約主は、もう契約石を使い果たした。
そして俺がSSRを引き当てるには100回契約式を回すしかない。
100回分、それは契約石が500個必要だ……。
残りの契約石……、そう多くはないはずだ。
嫌な予感をひしひしと感じつつ、俺は端末に確認する。
「サリー、残りの契約石は何個だ?」
「410個デス」
「くそっ! 足りねぇ!!」
『メシア、お前生きとったんか!?』
「また知らない人が出てきたんだぜ……」
『俺も忘れてた』
「おい。で、彼女は何者なんだぜ?」
『森の守り神的なさむしんぐらしいで』
「さむしんぐ……?」
『色々と色々あって、ガチャ神様や上神様と顔見知りらしい』
「色々と色々を聞きたいんだぜ」
『後書き終わらせてから、ゆっくりとな』
「このパターンが多くなってきたんだぜ」
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