前回のあらすじ
『まくら氏、鬼若の悪ノリを報告する』
外注さんの今日のひとこと
『昼の話は1本に納めるつもりだったのになぁ……』
「ネタが通じない事ほど惨めなものはないな」
ため息と共に、その言葉は星空へと還る。
「なんかごめんね……」
「いや、いいんだ。ただ、カオリって同年代じゃないんだなって思ってさ」
「何言ってるの、同い年じゃない」
「……まだ隠し通せてると思ってんのか?
お前さ、同年代じゃないどころか、この世界の人間でもないだろ?」
その後の沈黙は、波音だけが一人はしゃいでいるようだった。
カオリは何も答えない。いや、答える事ができないのだろう。
誤魔化す言葉を考えているのか、もしくは俺の言葉の意味を本当に理解していないのか……。
「カオリ、この世界にネット……。インターネットがない事は知ってるよな?
それなのに前にさ、クロに説明しちゃってたよな。自分で気付いてたか?」
「ははは……、それは大失敗だったね」
「いや、その前から色々やらかしてたぞ?」
「えっ? そうなの?」
心底驚いているような表情だが、あれで隠せているつもりだった事の方が驚きだ。
ひとつひとつ俺が引っかかった違和感達を並べるとしよう。
「春休み明けのもう一度二年生だって話の時に、アニメの世界みたいだって言った時の反応とか、アリサとバトルする前の、俺がイナバの上に乗ってた時の話とか、あとは正月の大掃除の時もだな」
「私、変な事言ったっけ?」
どうやら本当に隠せていると思っていたようだ。カオリは隠し事が苦手なのだろうか。
それとも、ガチャ神様の言うように俺が「察しの良すぎる奴」なのだろうか。
「イナバの時は『百クマ乗っても……』って話に『大丈夫じゃない』って答えたよな? あれはTVCMの一節だ。
その後アリサにも同じ話したけど、アリサは意味が分かってなかったし、この世界では放送してないCMなんだろう。
ま、アリサはお嬢様だし、知らなかったってだけかもしれないけどな」
「そんな事で気付かれちゃったの?」
「正月の大掃除の時は、俺が『劇的大改造が必要かと思ってた』って言った時、リフォームがうんぬんって言ったよな?
アレもそういう番組あったなぁ、って引っかかったんだよ」
「えぇ……。だからって、私がこの世界の人じゃないって普通思わないよね?」
「まぁな。決め手に欠けていたから色々と話をふったってのもある。
でも、一番最初に引っかかったのは、会ってすぐだ」
「私は全然覚えてない事ばかりだから、もう何言われても驚かないよ」
カオリは今さら隠しても無駄だと悟ったのか、開き直った顔をしている。
責めるつもりはないが、自身のうっかりにそう胸を張られても困るんだが……。
「初めて学園運営局に行った時、俺が役所みたいだって言ったのに、『役所って何?』って聞き返してこなかったんだよ」
「えっ!? そんな事で!?」
「普通に驚いてるじゃねぇか……。まぁいい。
この世界はさ、公的機関の機能が全て学園運営局に集約されているのは、社会の授業を受けてれば知ってるだろ?
だから、行政機関である役場ってのは存在しないんだよ。
存在しないものを知っている、それって違和感を覚えるには、充分じゃないか?」
もちろん言わないが、カオリがゲームでは見た事がない奴だったというが一番の理由だ。
最初から怪しいと思っているのだから、ちょっとした違和感が目立った訳だ。
「まくま君……、探偵になれるんじゃない?」
「体はまくら! 頭脳は大人! ってか?」
このネタが通じたのかどうかは分からないが、カオリは笑いながらも困った様子だった。
やはりカオリは、テレビ関係の話には詳しいようだ。あまりに古いとダメみたいだが。
そんな事を俺が考えている事など露知らず、カオリはどのように答えようかと悩んでいるようだ。
再び訪れた沈黙を破るのは俺じゃない。カオリの考えがまとまるまで、ゆっくり待つとしよう。
「ねぇ、まくま君の……、お父さんってどんな人だった?」
「え? 親父の話? 転生理由じゃなくて?」
「……うん」
質問の意図が分からない。
けれど、カオリは意味のない話をしてはぐらかすような奴じゃないし、そうするにしたって手遅れだ。何か意味があるのだろう。
しかし……、親父の話か……。一人暮らしを始めてからはほとんど会ってないな。
そりゃ数年に一度くらいは地元に帰ったりもしてたけど……。
それに……、少し苦手意識があるのだ。いや、後ろめたさと言うべきか。
「そうだな……。俺の親父はさ、夢を追う人だったな。
ミュージシャンを夢みて、バイトしながらライブハウスで演奏してるような、歳考えろよって言いたくなるような事を、大真面目にやってるような人だよ」
そんな人だったから小さい頃、親父と顔を合わせる時間なんてほとんどなかったな……。
「そんなだからさ、母さんが働いて、女手一つで俺を育ててくれたようなもんだ。
むしろ、父親なんて存在をほとんど認識してなかったな」
学校から帰ったとき、鍵を開けて入る家に誰も居ない。俺にとってはずっとそれが普通だった。
だから友達の家に遊びに行った時、誰かが居ることに、違和感と共に羨ましさを感じたな……。
「そんな無理が祟ったのか、母さんは俺が中学の時倒れてさ、そのまま死んじゃったんだよ。
その時初めて、俺は親父に対して感情を持ったよ。
親父が普通に働いて普通に生活できていたなら、母さんはこんな事にならなかったんじゃないかって恨んだんだ。
それで……俺、親父にスゲー酷い事いっぱい言ったんだよ。
バカみたいだろ? 存在すら意識してなかったくせに、都合の悪い事を全部親父のせいにしたんだ」
「そんなこと……ないと思う……」
この話を聞いただけならそう思うだろう。
けれどこの時の俺は、何も分かっちゃいなかったんだ。
「……母さんの遺品を整理してる時にさ、手紙を見つけたんだ。『もし、私に何かあったら読むように』って。
それを見つけた時にさ、母さんはまるでこうなることが分かってたんじゃないかって思ったよ。
おかしいだろ? 普通、40そこらの人間が、もしもの時の手紙書くとは思えねーもん」
その手紙を手にとった時、いやな汗をかいたのを覚えてる。
震える手で手紙を開く、その瞬間を今でも鮮明に思い出せるほどに、その時の事は忘れることができない。
「ま、オチを言っちゃうとさ、母さんは元々先天性の病気だったんだよ。
だから死んじまったのは親父のせいでもなんでもなくて、元々病気なのに元気なフリしてたんだ。
俺はホントバカだよ。何も分かってないのに、分かった気になって親父を責め立てたんだ」
「そんなの……、言われなきゃ気付けないよ」
「まあな。でも母さんはさ、親父の音楽に助けられていたんだ。
辛い闘病生活の時、それだけが救いだったんだとよ。
だから、親父の事を支え続けられたんだ。今にも壊れそうな自分の体に鞭打ってまで」
「……」
「そういう訳で、そんなダメダメだけど、母さんの大好きだった親父を支えてやらねーとなって思って、俺は高校行かずに就職しようって思ってたんだよ。
だけどさ、やっぱ親父のほうが一枚上手だったな。
その時にはすでに仕事見つけてきててさ、楽器なんかも売り払った後だったよ。
……その時の親父の言葉、忘れられないな」
「なんて言ったの……?」
『俺の曲を聴かせたい一番のファンは、もう居ない』
答え合わせをします!!
『本文とのテンションの差!!』
いや、とりあえずやる事やっとかないとね?
『んで、何すんよ?』
まくらの言ってる、引っ掛かりポイントが過去何連目に出てきたかを書き出すのだ!
『うわっ、めんどくさっ!』
後書きは本文のフォローが仕事だからね!?
『唐突にマジメぶるの、やめてもらえん?』
さて、では時系列的に最初の役場って話!
『えっ、ガン無視!?』
『えっと、164連目と、社会の授業だから“ガチャ神の異世界★観光”かな』
次、劇的大改造!
『340連目やな。あれって一月章か、思えばこの連載も長くやってるな』
はいはい次、百クマ乗っても?
『大丈夫ではない。660連目の初っ端。これはツイッターで貰ったネタだったりする』
まさか彼も、こんな使われ方すると思ってなかっただろうね。次、ループ時空。
『OILOIL.の750連目。9400円下さい』
そういや、1へぇ100円っていうのあったね。
『以上?』
他にも色々あった気がするけど、まくらが気付いてないので以上。
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