爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

840連目 車内でお茶会

公開日時: 2021年2月2日(火) 12:05
文字数:2,443

前回のあらすじ

『列車の旅って良いよね!』


外注さんの今日のひとこと

『新幹線で食べる駅弁と酒は格別や!!(おっさん的発想』

 修学旅行先である南の島へ行く列車の中、俺達が談笑する以外の声は聞こえなかった。

というよりは、契約主隔離車両というのもあって、皆自身の契約者以外とは話をしなかったし、話していても、回りに聞かれないよう小声で話しているのだ。

おかげで、俺達がバカみたいに大声で喋っているような雰囲気になってしまっている。


 まぁ、別に気にしないし、聞かれて困るような事も喋っていない。

同盟関係の話だってむしろ聞かせる事によって牽制できるという効果もあるだろうしな。



「そうだ、アーニャに渡すものがあったんだった。これ、アルダから差し入れ」



 そう言って、俺はアイテムBOXから例のバームクーヘンを取り出す。

一応預かり物と俺は認識していたのだが、アイテムBOXに入れれないと不便だし、どうせ皆で分けて食べるのだからと、アルダは俺へのプレゼントとしてくれた。

意外と、自身の所有物でないとBOXに入れられないというのは不便だ。

もちろん前世よりは超快適だけどね? 今回の旅行の荷物も入れられて、手ぶらで動けるのだから。



「わざわざありがとうございます。

 いつも頂き物は牧場の皆さんで分けるように言ってるんですけどね。

 でも、今日は旅行のおやつにちょうどいいですね」


「アルダもそう言ってたからな。分けられるよう食器も用意してきたぞ」



 少し多めの使い捨てできる紙皿やプラスチックのナイフとフォークを出せば、アーニャは綺麗に六等分にカットしてくれた。

アーニャ器用だな……。六等分って結構難しいんだけど。

俺がやるなら、面倒だから八等分して残りはジャンケンだ。

もちろん俺は、運が無いので負けるんだけどさ。



「そういや到着までどのくらいかかるんだ?

 さすがに、食べ終わる前に着くなんて事はないだろうけど」


「えっと……。しおりによれば、二時間半ってなってるね」


「へぇ、亜空間を通っても結構かかるんだな」


「えぇ、線路が亜空間の浅いところを通っているので、時間がかかるんですよ」


「亜空間に深さがあるの?」


「そうですね。ちょうどいいので、このバームクーヘンで説明しますね」



 行程表を眺めるカオリもアーニャの言葉に興味を持ったようだ。

鬼若もなんの事か分かってない顔をしているし、この世界に住む人でも、亜空間の詳しい話ってのは知らないのかもしれない。

ちなみに、クロはすでにバームクーヘンに夢中で話を聞いていない。


 アーニャは説明のために、自身のバームクーヘンにフォークを立てながら説明する。



「この一番外側の部分、これが学園都市のある時空だとしますね。

 亜空間は、この内側の何層もある縞模様のようなものなんです」



 アーニャは「少し行儀が悪いですが」と言いながら、一番外側とその一つ内側、そして一番内側の芯部分のバウムクーヘンのスポンジを器用にめくり取る。

そして、その三枚を並べて見せた。



「こうすると、三枚の長さが違いますよね?」


「そりゃ、外側の方が長いよな」


「これが亜空間でも起きていて、亜空間の深い部分の方が表面よりも狭いんです。

 だから深層を通れば、遠い距離の移動を素早くできるんです」


「とっても分かりやすくて、おいしいのですっ!!」



 クロは聞いてないようで聞いていたようだ。

まぁ、もぐもぐといいながらなので、本当に理解したかは怪しい。



「ということは、亜空間の方が狭いのか」


「そうですね。なので遠くへ行く場合は、亜空間の深い場所に線路を通すと早く着けます」


「ん? さっき、浅いところを通ってるって言ってなかったか?」


「えぇ、深いほうが線路は短くなるのですが、その層に潜るために魔力を多く消費します。

 それに駅は表面付近にありますので、近距離同士を結ぶには、浅いところを通す方がいいんですよ。

 この列車も、今は浅いところを通ってますが、駅の無い海を渡る時は、かなり深くまで潜るはずですよ」


「なるほど。だから海を渡る場合でも、亜空間の深い場所なら、橋を架けられるほど近くなるわけか」


「えぇ。亜空間を使わなければ、橋は架けられないほどに遠いですから」



 カオリも興味津々の様子で、しおりの空白に今の話をメモ書きしていた。

けれど、俺は今の話は興味以上に気になることがあった。



「アーニャは、なんでそんなに亜空間に詳しいんだ?

 カオリや鬼若も知らない話だったら、学校で習うような事じゃないってことだよな?」


「あっ、わたしの能力言ってませんでしたね。わたしは、空間操作ができるんですよ。

 お爺様も同じ能力を持っていて、クリスマスの時に使ってたりするんですけどね」


「隔世遺伝ってヤツかな? どおりで、前に俺の所まで来られたはずだ」


「えぇ。ですが、わたしの魔力では足りないので、ロベールに魔力を借りないといけないんですよ」


「まぁ、そのくらいの制限があったほうが良いだろうな。アルダも心配させてしまうし」


「お父様は心配よりも、会いに来て欲しかったと言ってましたけどね……」



 アルダよ……、娘にまで包み隠さず本音を語っているのか……。

いやしかし、妙に澄ました大人ぶった反応をして、親子関係がギクシャクするよりは良いのかもしれないけどな。



「それにしたって、お父様は寂しがり屋で、甘えん坊で、過保護で……」



 その後はバームクーヘンをお供に、アーニャによる父親のグチ……に見せかけたアルダ自慢が続いた。

やっぱ親子だなぁ、こういう所が遺伝してしまったようだ。

まぁ、チヅルも俺にその様子を見せはしなかったが、かなりのノロケオーラを出す時もあるし、この遺伝は避けようがないだろう。


 そんな様子に、俺と鬼若は苦笑いしていたのだが、カオリだけは少し寂しそうにしていた。

こうやって娘に慕われているアルダを遠ざけている事を気にしているのか、それとも他に何か気になることがあるのか……。

たとえば、遠くに置いてきてしまった家族に想いを馳せているとか……ね。


 ちなみにクロは、いつも通り興味の無い話には耳を貸さず、バームクーヘンを食べ終わるとひたすらにロベールをもふもふし、その大きな腕に抱きつきながら夢へと落ちてしまった。

ホント自由な子だ……。

『バームクーヘンの話、ここまで引っ張る!?』


適当に書かれたネタを引っ張るのはよくある話。


『まさかアレが伏線だったなんて!?って展開が今後も?』


あるかもしれないし、ないかもしれない。


『きっと読み返しても気付かないレベルだろうし、どうでもいいか』


もうちょっと伏線を伏線らしく書いてね?


『もうちょっと伏線を伏線と分かるプロット投げてね?』


責任の押し付け合いをする後書き。醜いですねぇ。

次回は水着回!!


『マジで?それマジで言ってん??』

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