爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

940連目 亀裂

公開日時: 2021年2月7日(日) 12:05
文字数:2,935

前回のあらすじ

『ガチャ神は、クロの注文通りの姿でした』


外注さんの今日のひとこと

『金髪ツインテールっていうと、自動的につり目をイメージしてしまう。

 ちなみに俺は、たれ目の方が好きです!(隙あらば自分語り)』

 ガチャ神様に告げられた事実、それは局長の希望を叩き潰すには十分なものだった。


 この世界の核となるアカウントデータは、どうやらこちらの世界の、俺が持つ端末の中にあるようだ。

そしてそれは、今では魚型の名札形状となっており、中身がどうなっているのか不明であるものの、そんな不思議端末を、アイリがどうこうできるとは到底思えなかった。


 何よりも「ゲーム内アイテム内のゲームデータを書き換える」って、もうこれ言葉にするだけで頭がこんがらがりそうだ。



「ちょっ! なんでそんな事になってるんだぜ!?」


「あー、それはじゃな……。クマと一緒にクマのスマホも転移させたからじゃ」



 なるほどー、愛用品を一緒に持たせようっていう親切神しんせつしんかな?

なんて思ったが、ふとこちらに来てすぐの事を思い出した。


 そういえば、こちらでの端末は持ち主の手元を離れる事はないはずなのに、俺は当時スマホ型だった端末を落としたよな。

アレは端末の異常ではなく、普通のスマホだったから起こった事なのか。

壊れなかったのが奇跡だな。


 などと納得しているのは俺一人だけで、その話を聞いた局長は憤慨し「お前! お前!!」と言いながら、神殺しタックルを繰り返していた。

全然ダメージは入ってなさそうだったけどね。



「ともかく、難しいかもしれないが一応調べてもらおう。

 アイリ、俺の端末内のデータって、どうなってるか調べてもらえるか?」


「……わかった」


「でもまくま君、もしダメだったら……」


「手詰まり……、だな」



 その言葉に局長は、ガチャ神様の言葉よりも深い絶望を味わったのか、普段は鮮やかな黄色い顔を青ざめさせ、黄土色っぽく変化させる。

そして再び怒りがこみ上げたのか、今度は赤らめてオレンジに近くなり、再びタックルを再開するのだった。



「このっ! ポンコツ! 役立たず! 神モドキ!!」


「……黙っておれば、好き勝手言いおって!」



 あっ、やばい。さすがにガチャ神様もキレたか!?



「おい! 局長その辺にっ……!」


「頭が高いのじゃっ!!」


「ぜっ……!?」



 ガチャ神様の怒声が響いた瞬間、そこにあったはずの局長の姿は、跡形も無く消え失せた。

その様子に、誰もが状況を理解できず、沈黙の中雨音だけがこの場を支配した。



「……局長をどこにやった?」


「いや……、ワシはあの、その……。そんなつもりは無くてじゃな……」


「そんなつもりってのはなんだ?」


「ワシは、ただつっかかってくるのを止めようとして……」



 話にならない。局長をどうにかした本人ですら、状況を理解していないのだ。

だが、この世界の管理者に手を出せる者など限られているし、本人も抵抗できなかった様子から、最悪の事態が頭をよぎる。



「アイリ、局長のデータを探してくれ。

 どっかに飛ばされただけならいいんだが……」


「……えぇ。そっちを優先するよ」



 懸念していた事が、現実となってしまったかもしれない。

この少女の姿をした何者かの正体もはっきりと分からない今、俺の中では疑念ばかりが渦巻いていた。

もし、局長に万一の事が起きていたのならば、この神を自称する者は善良な存在とは考えがたい。



「……ダメ。……仮キャラクターデータが、全て無くなってる」


「仮キャラクターデータ?」


「……えぇ、あなたたちが職員と呼んでいた者達のこと。

 ……あれは、新キャラ実装前の、テストプレイ用仮キャラクター画像。

 ……属性に合わせた六色、全てのデータが無くなってるわ」


「局長って、六体居たって事か?」


「……いえ、局長の黄色だけじゃない。

 ……各職員の赤・青・緑・灰・白。

 ……全データが消失しているの」


「つまり、運営局の職員全員が一緒に消えたって?」


「……そういう事」



 まさか楯突いてきた局長だけでなく、巻き添えで職員全員を亡き者にするなんて……。

悪魔か邪神かなんてどうでもいい。今分かったのは、コイツが俺の想定を超えたヤバい奴だって事だ。



「ワシのせいではないぞっ!?」


「じゃぁ誰がやったって言うんだよ! 職員全員だぞ!?」


「そっ、そんなのワシに言われても困るのじゃ!」


「……最低だなお前」


「……!?」



 俺の嫌な予感というのは、よく当たるんだ。だからこそ、事前準備とあらゆる可能性を考えた対策を打つ。

慎重すぎるという言葉も意に介さず、用意したそれらによって、今まではなんとか対処してきた。

けれど、今回ばかりはどうにもならない。相手は人知を超えた存在なのだから……。



「ちょっと、まくま君待って。ちゃんと事情を聞いてみようよ」


「カオリ、そうは言うが、コイツを信用できる要素がどこにある?

 局長達だけじゃない、お前の事だって隠してたし、この世界の事も嘘ついてたんだぞ?」


「ちょっと待つんじゃ! ワシは嘘などついとらんぞ!!」


「俺の転生先として世界を創ったとか言っておいて、十年も前に、カオリの転生時に作ってたって話じゃねーか!」


「一体、何の話をしておるんじゃ!?」


「トボけてんじゃねーよ!」


「ちょっと二人とも落ち着いて!!」



 互いに食って掛かろうとした俺とガチャ神の頭を、カオリの手がギュムっと掴む。

そして無理やり引き離され、俺達は黙ったのだった。



「いい? ひとつづつ話を整理しようね?

 神様は嘘やごまかしはナシ、約束してくれる?」


「ワシは元々嘘などついとらん!」


「カオリ、嘘か本当かなんて確かめようがないし、聞いたって仕方ないだろ」


「だからって、このままじゃ話が進まないじゃない」


「そうだけどさ……」



 カオリの言うとおりだ。このままでは局長達だけじゃなく、この世界の事だっていつまでも解決しない。

だからといって、信用できるかも分からないヤツの話を前提にするなんてのは、俺には愚策としか思えなかった。

けれど、話の主導権をカオリに握られた以上、俺にはどうする事もできない。


 願わくば、今あちらの世界で色々と調べてくれているであろうアイリが、何らかの解決の糸口をみつけてくれる事に期待するしかない。



「まずは、この世界についてね。

 この世界を創ったのは、ガチャ神様でいいんだよね?」


「そうじゃ。ワシが創ったのじゃ」



 ドヤ顔で胸を張るが、残念ながらその姿は少女というのもあり、全然貫禄はない。



「それはいつの事?」


「クマの転生と同時じゃから、去年の10月じゃ」


「いきなり嘘ついてるじゃねーか」


「嘘などついとらんわ!」



 また言い合いになりそうな俺に、カオリは黙れと言わんばかりに睨む。

いや、俺に余裕がなくなってるせいでそう見えただけだろう。

ここは深呼吸して、落ち着いて見守ろう……。まくらは息しないけど。



「えっとね、私はまくま君と同じ世界から来たんだけど、それが10年くらい前なの」


「えっ!?」


「だから、まくま君はおかしいって言ってるのね。

 それに、あなたが私をここへ連れて来てくれたの?」


「そんなハズはないのじゃ。ワシはクマしか転生させとらんし……」



 これじゃ話は平行線のままだ。

お互いの言い分が食い違っているのだから、解決の糸口などつかめるはずもない。



「んーと……。それじゃぁ、他にそういう事できる人っていないの?」


「他に天地創造と転生転移ができる者……? あっ!!」



 何かに気付いたガチャ神は、どこからともなくスマホを取り出す。

それは、ピンクのうさぎ型スマホカバーが付けられていた。

そして慣れた手つきで、何やら操作を始めたのだ。

「ゆっゆっ! ここは、とってもゆっくりできるところだよ!」

「ふふん! アタイを後書きに呼ぶとは、見る目があるね!!」

「初登場が後書きとは、扱いがひどいじゃないですか」


お前ら、後書き始まってるから、ちょっと静かにしような。


『なんかそっち賑やかやな』


新メンバーが増えたんで……。


「まったく、いきなりこんな所に呼ぶなんて、はた迷惑なんだぜ!」

「ゆ~。局長もゆっくりしていってね!!」


『なんか、後書きも収拾つなかくなってますやん』


ちょっと別室創って、職員達は隔離してくるから、その間局長と頼む。


「まったく、人使いが荒いんだぜ」


『お疲れ様やで……』


「そっちもなんだぜ」


『てか、ガチャ神ちゃんとまくらが険悪になってるんですけど』


「むこうの話は、私にはわからないんだぜ」


まーあれだよね。人間って身勝手だから、勝手に神に期待して、勝手に失望するよね。


『おかえり。あと俺もその身勝手な側なんで、ノーコメントで』


「沈黙は金ってヤツなんだぜ」


さて、あの子はどう対処するのかな?


『結局あれか、コレもガチャ神への試練ってヤツか!?』


さて、どうだろうね。


『それどっかで聞いた事あるセリフだな』


「そろそろ長くなってきたし〆るんだぜ」


『せやな。最後キメ台詞言ってもええで』


「次回もゆっくり読んでいってね!! なんだぜ」

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