前回のあらすじ
『セルシウス、アリサと和解成立』
外注さんの今日のひとこと
『最近、後書きで局長がイジめてくるんです……』
地獄絵図、阿鼻叫喚。ガチャとはこうも人を狂わせるのか……。
目の前の光景は、俺を妙に冷静にさせた。
「うがーー!! またダブった!!」
「貴方とはすでに契約してましてよ!!」
「違う、そうじゃない」
そんな声に、本人の意思と関わらずダブって契約してしまった者達は、非常に気まずい顔をするばかりだ。
その様子に、鬼若はチラチラと俺を見る。
「どうした?」
「主様も……、俺との契約の時、あのように思ってたのでしょうか」
「…………。正直に言えばそうだな。
ま、そういうシステムなんだから、誰のせいでもないさ」
回す方も、出てくる方にも残酷なのが、ガチャというシステムだ。
しかし今回に限っては、鬼若の鬼ダブりはプラスに働いた。
なにせ「俺は鬼若を90回ダブらせた男ぞ?」と言うだけで、こうやって見守る役に回れたのだから。
俺を除く23人で全員契約できれば良し。
もし何人か残るようであれば、俺がなんとかするという手筈だ。
普通なら運0の俺にそんな事はできない。
しかし、すでに他の契約主と契約している者は、ガチャから出てこない。
そのため、俺が最後に回す事によって、未契約の者のみが出てくるという寸法だ。
何人未契約者が残ってしまうかによるのだが……。
「まくまさん、やりましたよっ!
ごしゅじんがSSRを引き当てたのですっ!!」
「おっ、やったなカオリ。これで残るSSRは何人だ?」
「あと2人だね。でも、もうほとんどの人が、契約石を使い切っちゃったみたいで……」
「おーっほっほ! 最後はわたくしが2人抜きして差し上げますわ!!」
これほど分かりやすい死亡フラグがあるだろうか……。いや、爆死フラグと呼ぼうか?
ほら、言わんこっちゃない……。
「くっ……、2人抜きはなりませんでしたが、1人は確保いたしましたわ!」
「喜んでる所悪いが、それ100回目の確定枠だからな?」
「なっ!? いえ、なんであっても1人には変わりありませんわ!」
「あぁ……。うん、そうだな」
そうなのだ、今回は契約さえできればいい。出てきたキャラの強さも関係ない。そして残すは1人。
他の奴らは皆契約石を使い切ったので、俺がソイツを引けばミッションコンプリートだ。
俺にSSRを引き当てられるわけないだろって思うかもしれないが、そこは大丈夫だ。
なぜなら、先月の配布石で100連分は貯まっているので、先ほどのアリサのように確定分で必ず手に入る。
そして俺の手持ちのSSRは、ASLvシステム変更時に貰ったアイテムを使い、双方ASLvがMAX。
この2人がダブりで出てくることはなくなっている。つまり勝ち確定である。
そんなワケで、俺は意気揚々とガチャを回したのだ。
「これで90連目っと……。
あれ? なんでSSR演出が?」
魔方陣から発せられる七色の閃光。それは誰もが羨むSSR確定演出で間違いなかった。
けれど俺の運0では、100回目にしかお目にかかれないはずなのだが……。
「まくま君、年末に10連契約したじゃない」
「あっ、そっか。イナバが出たときの……」
あまりのショックに記憶から消し去っていたが、あの忘年会での爆死だ。
ま、残る1人が少し早く出てくれた、俺にとってはその程度の話だ。
さて、最後のSSRは、一体どんなヤツなんだろうな?
「はいっ! さいっ! 熊殿、ご指名ありがとねー!」
「えっ? お前はケモナー三銃士の……」
「もしかしてさ、僕の名前覚えてなかったりー?」
「いや、そんな事は……」
現れたのは、ケモナー三銃士の緑枠だ。
しかしおかしい、モブは5属性まとめて1人扱いのはず。
ならばコイツが出てくる事などありえない。しかもSSRでなど……。
「……彼はハジメ。……冬のイベントに先立って、去年の10月に実装されたキャラクター」
「あぁ、だから俺が知らなかったのか……。ってことは、アカメと別枠なのか?」
「そうだよー? 同じ趣味を持つ同志だから、一緒にいただけだよー?」
「その通り。私と同一扱いの5人、そしてハジメ殿。
その後に熊殿が会に入ったため、熊殿は会員No.7番だったのです」
どこからともなく解説に入るアカメ。
なるほど、色々と説明が付くが……。それなら先にその辺教えておいて欲しかったな。
まぁ、知らなくても困ることはなかったけど。
「ともかく、これで全員だよな?
アイリ、最終確認と同盟の手続きを頼む」
「ちょっとお待ちになって。これが、なぜ助かる事と繋がるのです?」
「あぁ、説明してなかったな。神様が願いを一つ叶えてくれるって話は聞いてただろ?
その願いを“契約で繋がっている者をカオリと一緒に転移させて欲しい”ってのにするつもりなんだ」
「でしたら、カオリさんとの契約が必要ではなくて?」
「それは同盟で解決できるんだ。
同盟ってのは、システム的に“契約主同士の契約”って事になってるからな」
そう、学園運営局に泊り込んだ2週間の間に、俺は同盟システム制作を手伝った。
その時、作業を簡略化させるため、俺は既存のシステムを流用したのだ。
手抜きのつもりだったが、めぐり廻って、こうして皆を助ける事に繋がったわけだ。
そして、それを知るのは、局長達が居ない今、俺しか居ない。なのにあの白熊は……。
「なるほど。その文言であれば、同盟の契約で繋がった先の契約者も、鎖のように連なって“契約関係で繋がっている者”と見なす事ができると……」
「そういうコト」
頭の上に“?”を浮かべていたアリサだったが、アカメの解説で一応納得したようだ。
しかし、ここで思わぬ自体に見舞われた。
「……同盟システムって何?」
「ちょっ、アイリ!?
同盟は、契約主同士の協力関係を運営が承認するシステムで、お前に承認してもらわないといけないんだけど!?」
「……こちらでは、そのシステムが実装されていないのだけど」
「……マジ?」
「……マジ」
「ウソだろ……」
そうだ、そうだった。同盟システムはゲームに反映されていない。
それは、局長室でアイリと話したときに聞いていたハズだった……。
まさか、最後の最後で躓くとは……。
「お待ちなさい! 諦めるのはまだ早くてよ!
その方が知らなくとも、実際わたくしとアーニャは同盟を結んでおりますわ!
ならば、存在しないわけではありませんわ!」
「……調べてみる」
アイリが調べる間、俺は嫌な汗をかき続けた。
大口叩いておいて、やっぱりムリでしたなんて結果は絶対に受け入れたくない。
何より、皆を助けられないなんて真っ平御免だ。
そして、アイリはもったいぶった口調で喋り出す。
「……良いニュースと、悪いニュースがある」
「どっちでもいいから結論を」
「……同盟システムらしきものは見つかった」
「よしっ! これで助かるな!」
「……けど、やり方がわからない」
「嘘だろ!? 紙にサインして、承認してもらうだけだぞ!?」
「……そちらではただの紙でも、こちらではどういったデータなのか分からない」
そうか、アイリにとっては、この世界自体がただのデータなのだ。
手続き上の、単なる紙にしか見えないものでも、1からプログラムを組む必要があるのだ……。
そしてそれは、局長達が行うよりも、もっと複雑な作業となるのは目に見えていた。
「前書きで私を悪者にするのはやめるんだぜ!」
『実際そうやん?』
「で、結論を聞かせて欲しいんだぜ」
『んー、まぁ一応できなくはないけど?』
「なら決まりなんだぜ」
『職権乱用な気がするんよなぁ』
「それは、職権を与えたヤツが悪いんだぜ」
『これはひどい開き直りを見た』
「そんな事はどうでもいいんだぜ!」
『はいはい、わかりましたよ』
「用意された結末なんて、ぶっ壊してやるんだぜ!」
『結末を! ぶっ壊す!!』「結末を! ぶっ壊す!!」
『局長、元ネタ分かってる?』
「分かってないんだぜ」
読み終わったら、ポイントを付けましょう!