爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

1060連目 コンプリート?

公開日時: 2021年2月13日(土) 12:05
文字数:2,868

前回のあらすじ

『セルシウス、アリサと和解成立』


外注さんの今日のひとこと

『最近、後書きで局長がイジめてくるんです……』

 地獄絵図、阿鼻叫喚。ガチャとはこうも人を狂わせるのか……。

目の前の光景は、俺を妙に冷静にさせた。



「うがーー!! またダブった!!」


「貴方とはすでに契約してましてよ!!」


「違う、そうじゃない」



 そんな声に、本人の意思と関わらずダブって契約してしまった者達は、非常に気まずい顔をするばかりだ。

その様子に、鬼若はチラチラと俺を見る。



「どうした?」


「主様も……、俺との契約の時、あのように思ってたのでしょうか」


「…………。正直に言えばそうだな。

 ま、そういうシステムなんだから、誰のせいでもないさ」



 回す方も、出てくる方にも残酷なのが、ガチャというシステムだ。

しかし今回に限っては、鬼若の鬼ダブりはプラスに働いた。

なにせ「俺は鬼若を90回ダブらせた男ぞ?」と言うだけで、こうやって見守る役に回れたのだから。

俺を除く23人で全員契約できれば良し。

もし何人か残るようであれば、俺がなんとかするという手筈だ。


 普通なら運0の俺にそんな事はできない。

しかし、すでに他の契約主と契約している者は、ガチャから出てこない。

そのため、俺が最後に回す事によって、未契約の者のみが出てくるという寸法だ。

何人未契約者が残ってしまうかによるのだが……。



「まくまさん、やりましたよっ!

 ごしゅじんがSSR☆7を引き当てたのですっ!!」


「おっ、やったなカオリ。これで残るSSR☆7は何人だ?」


「あと2人だね。でも、もうほとんどの人が、契約石を使い切っちゃったみたいで……」


「おーっほっほ! 最後はわたくしが2人抜きして差し上げますわ!!」



 これほど分かりやすい死亡フラグがあるだろうか……。いや、爆死フラグと呼ぼうか?

ほら、言わんこっちゃない……。



「くっ……、2人抜きはなりませんでしたが、1人は確保いたしましたわ!」


「喜んでる所悪いが、それ100回目の確定枠だからな?」


「なっ!? いえ、なんであっても1人には変わりありませんわ!」


「あぁ……。うん、そうだな」



 そうなのだ、今回は契約さえできればいい。出てきたキャラの強さも関係ない。そして残すは1人。

他の奴らは皆契約石を使い切ったので、俺がソイツを引けばミッションコンプリートだ。


 俺にSSR☆7を引き当てられるわけないだろって思うかもしれないが、そこは大丈夫だ。

なぜなら、先月の配布石で100連分は貯まっているので、先ほどのアリサのように確定分で必ず手に入る。

そして俺の手持ちのSSR☆7は、ASLvシステム変更時に貰ったアイテムを使い、双方ASLvがMAX。

この2人がダブりで出てくることはなくなっている。つまり勝ち確定である。


 そんなワケで、俺は意気揚々とガチャを回したのだ。



「これで90連目っと……。

 あれ? なんでSSR☆7演出が?」



 魔方陣から発せられる七色の閃光。それは誰もが羨むSSR☆7確定演出で間違いなかった。

けれど俺の運0では、100回目にしかお目にかかれないはずなのだが……。



「まくま君、年末に10連契約したじゃない」


「あっ、そっか。イナバが出たときの……」



 あまりのショックに記憶から消し去っていたが、あの忘年会での爆死だ。

ま、残る1人が少し早く出てくれた、俺にとってはその程度の話だ。

さて、最後のSSR☆7は、一体どんなヤツなんだろうな?



「はいっ! さいっ! 熊殿、ご指名ありがとねー!」


「えっ? お前はケモナー三銃士の……」


「もしかしてさ、僕の名前覚えてなかったりー?」


「いや、そんな事は……」



 現れたのは、ケモナー三銃士の緑枠だ。

しかしおかしい、モブは5属性まとめて1人扱いのはず。

ならばコイツが出てくる事などありえない。しかもSSR☆7でなど……。



「……彼はハジメ。……冬のイベントに先立って、去年の10月に実装されたキャラクター」


「あぁ、だから俺が知らなかったのか……。ってことは、アカメと別枠なのか?」


「そうだよー? 同じ趣味を持つ同志だから、一緒にいただけだよー?」


「その通り。私と同一扱いの5人、そしてハジメ殿。

 その後に熊殿が会に入ったため、熊殿は会員No.7番だったのです」



 どこからともなく解説に入るアカメ。

なるほど、色々と説明が付くが……。それなら先にその辺教えておいて欲しかったな。

まぁ、知らなくても困ることはなかったけど。



「ともかく、これで全員だよな?

 アイリ、最終確認と同盟の手続きを頼む」


「ちょっとお待ちになって。これが、なぜ助かる事と繋がるのです?」


「あぁ、説明してなかったな。神様が願いを一つ叶えてくれるって話は聞いてただろ?

 その願いを“契約で繋がっている者をカオリと一緒に転移させて欲しい”ってのにするつもりなんだ」


「でしたら、カオリさんとの契約が必要ではなくて?」


「それは同盟で解決できるんだ。

 同盟ってのは、システム的に“契約主同士の契約”って事になってるからな」



 そう、学園運営局に泊り込んだ2週間の間に、俺は同盟システム制作を手伝った。

その時、作業を簡略化させるため、俺は既存のシステムを流用したのだ。

手抜きのつもりだったが、めぐり廻って、こうして皆を助ける事に繋がったわけだ。

そして、それを知るのは、局長達が居ない今、俺しか居ない。なのにあの白熊は……。



「なるほど。その文言であれば、同盟の契約で繋がった先の契約者も、鎖のように連なって“契約関係で繋がっている者”と見なす事ができると……」


「そういうコト」



 頭の上に“?”を浮かべていたアリサだったが、アカメの解説で一応納得したようだ。

しかし、ここで思わぬ自体に見舞われた。



「……同盟システムって何?」


「ちょっ、アイリ!?

 同盟は、契約主同士の協力関係を運営が承認するシステムで、お前に承認してもらわないといけないんだけど!?」


「……こちらでは、そのシステムが実装されていないのだけど」


「……マジ?」


「……マジ」


「ウソだろ……」



 そうだ、そうだった。同盟システムはゲームに反映されていない。

それは、局長室でアイリと話したときに聞いていたハズだった……。

まさか、最後の最後で躓くとは……。



「お待ちなさい! 諦めるのはまだ早くてよ!

 その方が知らなくとも、実際わたくしとアーニャは同盟を結んでおりますわ!

 ならば、存在しないわけではありませんわ!」


「……調べてみる」



 アイリが調べる間、俺は嫌な汗をかき続けた。

大口叩いておいて、やっぱりムリでしたなんて結果は絶対に受け入れたくない。

何より、皆を助けられないなんて真っ平御免だ。


 そして、アイリはもったいぶった口調で喋り出す。



「……良いニュースと、悪いニュースがある」


「どっちでもいいから結論を」


「……同盟システムらしきものは見つかった」


「よしっ! これで助かるな!」


「……けど、やり方がわからない」


「嘘だろ!? 紙にサインして、承認してもらうだけだぞ!?」


「……そちらではただの紙でも、こちらではどういったデータなのか分からない」



 そうか、アイリにとっては、この世界自体がただのデータなのだ。

手続き上の、単なる紙にしか見えないものでも、1からプログラムを組む必要があるのだ……。

そしてそれは、局長達が行うよりも、もっと複雑な作業となるのは目に見えていた。

「前書きで私を悪者にするのはやめるんだぜ!」


『実際そうやん?』


「で、結論を聞かせて欲しいんだぜ」


『んー、まぁ一応できなくはないけど?』


「なら決まりなんだぜ」


『職権乱用な気がするんよなぁ』


「それは、職権を与えたヤツが悪いんだぜ」


『これはひどい開き直りを見た』


「そんな事はどうでもいいんだぜ!」


『はいはい、わかりましたよ』


「用意された結末なんて、ぶっ壊してやるんだぜ!」


『結末を! ぶっ壊す!!』「結末を! ぶっ壊す!!」


『局長、元ネタ分かってる?』


「分かってないんだぜ」

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