「これが、さっき言ってた端末なんだぜ」
彼とも彼女ともつかぬ声の主は、そう言って首飾りを差し出す。
「形が好きに変えられるのは、説明したとおりだぜ。
似合うと思って、こんな形にしてみたんだぜ」
金色の細い鎖の真ん中は、写真を入れられるロケットペンダントになっている。
ここに想い人の写真でも入れよというのか、夢見る乙女でもあるまいし。
「何か質問はあるんだぜ? なければ転送に移るんだぜ」
「何も無いわ」
「そうか。困った事があったら、事務局まで来るんだぜ」
笑顔で跳ねる黄色いゴム鞠は、すでに一仕事終えた気になっているようだ。
見るからに脆弱そうなこやつらに、力を奪われたと思うと忌々しい。
魔力さえ奪われてないければ、今すぐにその顔を爆ぜさせてやるというのに……。
「それじゃ、転送するんだぜ。ゆっくりしていってね!!」
その声だけを残し、即座に展開された魔方陣によって我は転送された。
「なにが“ゆっくりしていってね”だ……」
送られた先の森の中、木陰に腰を下ろし一人呟く。
首もとの鎖を撫でる。この世界の理を押し付けるための鎖。
反抗させぬための枷。見た目の煌びやかさなど誤魔化しに過ぎぬ。
憎らしさから、その鎖をめいっぱいの力で握る。
この程度の魔具さえも破壊できぬ程、弱き身に落とされた。我に何ができようか。
沸き立つ負の感情に応えるように、鎖は形を変え青い紙紐へと姿を変えた。
「飼いならすための首輪なら、これで十分」
この世界は悪魔である我には、窮屈でしかなかった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「その契約石は主様のものだ。よからぬ事を考えるなよ」
手の内の石に目を奪われた我に、鬼若は小声で忠告する。
まくら様のご学友というカオリによればこの石、まくら様が我らを導くために点々と落とした道標は、契約石と呼ばれる。
この石の魔力を消費する事で異世界を繋げ、契約を行うとの事だ。
確かにこの石を使えば、我の元居た世界を呼び出し、我自身と契約を結ぶ事もできるであろう。
そうすれば……、あの忌々しい学園運営局の呪縛からも解き放たれる。
この世界の理の届かぬ存在となれる。
そんな考えが浮かばなかった訳がない。
「そのような事、するわけがなかろう」
だがしかし、今はかの不思議なまくら、彼を見ることが楽しみなのだ。
手の付けられぬじゃじゃ馬と名高き鬼若の牙を抜き去り、これほどまでの忠誠を誓わせた者。
そして世界の理を乱し、その身をまくらへと墜した者。
これほど興味深い存在が他にあろうか。
この世界は窮屈なれど、退屈などする暇はなさそうだ。
今回の主役はベル様だよー!
俺もまくらいっぱいに詰まった課金石欲しい!!
後書き代打 ◇カズモリ◇
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