爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

670連目 助っ人と先制攻撃

公開日時: 2021年1月24日(日) 18:05
文字数:2,904

前回のあらすじ

「イカれたメンバーを紹介するぜ! なのじゃ」


ガチャ神のワンポイント攻略情報⑤

「キャラクターはそれぞれ属性を持っておるのじゃ」

「火は木に、木は水に、水は火に強いのじゃ。光と闇は相反関係じゃ」



「同志熊殿の要請に応じ、アカメここに馳せ参じました!」


「最後の一人、それは獣人愛好家、アカメだっ!」



 ヨウコの顔が即座に引きつる。

それもそのはず、最も相手をしたくないヤツが出てきたのだからな。

カオリがぼそっと「あ、アカメ君っていう名前だったんだ」と言ったが……。

まぁ仕方ないな。いつもケモナー三銃士とか呼んでた訳だし。

その中の赤髪の男で、議長役をこなすなど、リーダー格の男だ。



「熊殿、いつになったら呼ばれるのか、今か今かと待っていたのですよ。

 して、相手というのは……」


「まったく、貴方とも何かと縁があるものですわ」


「アリサ……! 貴様かっ!!」



 アカメは相手がアリサだと知るや否や、手に持っていた武器であろう警棒を素手で破壊し、怒り狂う。

いや、警棒が折れるとか、曲がるとかでなく、まさに砕け散るとしか表現しようが無い壊れ方をしたのだが……。異世界人の腕力ってどうなってんの……。怖っ……。



「熊殿、あやつは必ず、このアカメが叩き潰します!!」


「あっ、ハイ。ほどほどでお願いします……」



 あまりの怒気と、先ほどの光景に押されてしまう。

といっても、作戦的にコイツには壁役で、攻撃に期待はしていないのだけど……。



「さて、メンバーが揃いましたが、解説の局長はどう見ますか?」


「両チームバランスがいいんだぜ。

 無属性のアリサ率いるチームは、光属性のヨウコ、闇属性のアルビレオと、火・水・木の属性を外す事で弱点を減らしているんだぜ。

 対するクマチームは、闇属性のクロ、光属性のイナバはアリサチームと同じ戦略。

 そして木属性のバウム、火属性のアカメと色被りを無くす事で、相手に応じた戦法を取れるようにしているようなんだぜ」



 さすが局長、バトルの属性解説は完璧だ。

おそらくスキルも解説できるのだろうが、それをバラしてしまうと公平性が保てなくなるので、今は伏せているのだろう。

あの黄色ボール、デキるっ……!



「あとクマは、獣人を三人入れる事で、コンビネーションボーナスがかかるんだぜ。

 人数も四対三なので、アリサがこの不利な状況にどう対処するかが見ものだぜ」


「え? コンビネーションボーナス? それって……」


「あれ? まくま君は分かっててメンバー選出したんじゃないの?

 同じ特徴のある人たちは、魔力の相乗効果でステータスが強化されるんだよ?」


「いや、それは知ってるんだが……」



 おかしい、コンビネーションボーナスシステムは、今は無効になっていたはずだ。

特定キャラをデッキに入れる事で強化されるのが“コンプリートガチャ”に当たるのではないかと問題になり、廃止されたのだ。

もし、この世界が俺のアカウントを元に創られたものならば、このシステムも無効になっていなければおかしいのだが……。

いや、今はおいて置こう。



「ともかくバトルスタートだな。アカメは前衛、他は後衛の陣形で行くぞ」


「クマ氏、HPの高い者を前に出し、他の者へのダメージを減らす作戦のようですね。

 長期戦狙いでしょうか」



 俺の指示を的確に実況する職員。

あの新顔の職員も、しっかりとした知識を持っているようだな。



「こちらはヨウコが前衛、アルとわたくしは後衛でいきますわよ!」


「こちらも同じ戦法でしょうか。両者似た陣形ですが局長はどう見ますか?」


「アカメはHP偏重型で耐えるタイプなんだぜ。その代わり攻撃力は低く、ダメージソースに不安が残るんだぜ。

 対するヨウコはバランス型のため、火力を考えればアリサに分があるんだぜ。

 その分ヨウコを落とされた場合、窮地に陥る危険を孕んでいるんだぜ」


「なるほど、両者前衛がどこまで耐えられるかに掛かっているわけですね。

 では、先手は……アリサ氏!」



 局長も職員もノリノリである。

というか先手取られてしまった! まぁ、運0の俺が先手を取れるワケないんだけどね。



「まずは前に張り付いている、あの男を排除いたしますわよ!」



 その言葉と共に、アリサ本人が先陣を切って攻撃せんとアカメに向かい走り出す。

その手にはいつの間にか扇子が握られており、どうやらそれがアリサの武器であるようだ。

いや扇子て! 扇子が武器ってなんだよ!

とツッコミを入れるのは野暮というものだろうか……。



「まずはアリサ氏の攻撃!」


「しかし、後衛からの攻撃は、威力が落ちるんだぜ」



 局長の指摘はゲームの時からのルールだ。

なぜ威力が落ちるのかと観ていれば、アリサが向かってくる間に、アカメは回避行動を取っており、それを追いかける形になるため、勢いが削がれているようだ。

なるほど、その削がれた勢いの分、ダメージが軽減される訳か。


 それに続くアルビレオの攻撃は、どうやら魔法で作られた魔力弾で、黒いボール状のエネルギー弾を打ち出すようだ。

それは思った以上に速く、回避しようとしたアカメだったが完全には避け切れない。



「くっ……」


「アカメ、大丈夫か!?」


「えぇ、平気ですが……」



 アカメは魔力弾の当たった場所から、何やら黒いモヤのような物にまとわりつかれている。

おそらく、それがアルビレオのスキルだ。



「どうやら、二人の攻撃はあまり強くないようですが……」


「だけど、アルビレオの攻撃は威力以上に、やっかいなものなんだぜ」


「といいますと?」


「アルビレオのスキルは、攻撃の当たった相手に、攻撃力微減、被ダメージ微増、行動時HP微減を3ターン付与するものなんだぜ」



 すかさず局長の解説が入る。効果が発揮された時に解説するのだから、実に優秀な実況者だ。

そしてアルビレオも、参謀役に相応しい実に嫌らしいスキルだ。

効果自体は全て弱いにも関わらず、長期戦となった場合、着実に戦況を不利にさせる。

じわりじわりと弱らせる、遅効性の毒のようなものだ。


 最後にヨウコの攻撃だ。

ヨウコはいつもの姿から少し変わり、その背後に立派な尻尾が揺れている。

そしてアカメに大ダメージを与えんと駆け出す……、のだが……。



「さぁ! 我が胸に飛び込んでくるがいい!!」



 そういって、両腕を広げ受け入れんとするアカメの姿に、「ひっ……!」と叫び声を上げ怯んでしまう。



「おっとヨウコ氏、一体どうしたと言うのでしょうか!?」


「アカメのスキル、獣人からのダメージ大減が発動したんだぜ」



 そんな風に局長は冷静に解説するが、ヨウコの尻尾ではたかれたアカメの恍惚とした表情に、実況の二人以外は誰もが嫌な汗を流していた。

そりゃ、ダメージは軽減どころか、アカメの色んなモノが回復しそうではあるけどさ……。



「なるほど。ともかく、アカメ氏三者の攻撃を受け切り、なんとか持ちこたえたようです」


「次はクマ側の攻撃だが、どういう戦法を見せてくれるか楽しみなんだぜ」



 実況の二人は楽しそうで何より。

こっちはメンバーの士気が下がってないか、気が気でないというのに。



「うぅっ! 助っ人さんを痛めつけられるなんて、許せないのですっ!!」


「クロさん、僕達でアカメさんの分まで頑張りましょう!」


「もちろんですよっ! 特訓の成果を見せるですよっ!」



 よかった、クロもイナバもやる気十分。

というよりは、おそらくこの二人のスキル効果だろうが、いつも以上に張り切っている。

これならいけそうだ。



「よし、反撃の時間だ! 狙うはアルビレオ! 気が済むまで暴れてこい!!」


属性の話とか何話ぶりなんでしょうね。


「ナイスアシストじゃろ?」


褒めてつかわす。


「ありがたきお言葉なのじゃ。ついでに、法知識コーナー第三弾もやるのじゃ!」


懐かしさがスゴい。


「今回のお題は“コンプリートガチャ問題”じゃ!」


本文の注釈をココでするのか……。


「コンプリートガチャ問題とは、特定のキャラクターを揃えた時に特殊効果を発動させるシステムに、消費者庁がご立腹になった問題じゃ」


消費者庁ちゃん激おこ。それで先生、何が問題なんですか?


「揃えなければいけないのに、揃うかどうか分からないガチャで出すことが問題になったようじゃな」


中のカプセル全部出せば揃うじゃん?


「スマホゲーのガチャは、空になることのない、常に追加され続ける闇のガチャじゃぞ?」


続々とハズレくじが追加されるくじ引きかよ……。


「その上、あるゲームでは確率を意図的に操作されていたかもしれんと問題になったのじゃ」


そりゃ消費者庁ちゃんどころか、詐欺容疑でK察が出て来るのでは……。


「そういう問題が起きて、コンプリートガチャは規制される事になったのじゃ」


詳しく知りたい人は、ぐーまる先生に聞いてね!


「以上、法知識講座はこれで終わりじゃ!」


ホントにマジメに本文の注釈してたけどさ、何か悪いモンでも食べた?


「酷い言われようじゃ!!」

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