爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

890連目 名探偵まくら

公開日時: 2021年2月4日(木) 18:05
文字数:2,840

前回のあらすじ

『カオリの過去、明かされる』


外注さんの今日のひとこと

『唐突な急展開は、最終回間近の証』



『今までもずっと見てきたから。鬼若君や、他の契約者と一緒に戦っているところ。

 きっと世界を動かす特別な人って、こういう人なんだなって思ってたの』



 いつか言われたその言葉、それはカオリの背負った役目を表すものだった。

そして、その役目が俺に手を貸してくれる理由……。



「いやいやちょっと待て! 俺はそんなたいそれた奴じゃねーよ!?

 ただの愛くるしい、まくらちゃんだよー?」


「その……、まくら姿になる前から気付いてたの。他の人と違うって」


「いやそりゃそうだろ!?

 ゲームの主人公ってのは、平凡な高校生をうたっておきながら、普通じゃないもんだし!」


「ゲームの主人公……?」



 カオリは驚きの表情で俺を見つめる。

まさかカオリは、さっき言ってた悪魔に、何も教えられていないのだろうか……。



「まさかカオリ、この世界がゲームを元にしたものだって聞かされてないのか?」


「この世界に転移した時、契約主とかの話は聞いたけど……」



 あれ……? 考えてみればおかしい。

カオリはこの世界の事を知らされていない、それは必要がなかったからと考えれば納得できる。


 けれど俺がまくらに転生する前から、俺の動かす主人公を見ていた……?

この世界は、俺が転生するために創られた世界とガチャ神様は言っていたはずだ。

それなら、まくらになる前の俺を知っているのはおかしい。

その時はまだ、この世界は存在していないはずなのだから……。



「カオリ、お互いが知っている事を整理しておく必要があると思う。

 俺が未来を変えるとか、そういう話はその後だ」



 俺はメモ帳を取り出し、要点を箇条書きしてゆく。

俺の転生理由、転生させた人物、この世界が前世ではどういったものだったか。

そして来訪者の減少、それがゲームであればどいうった意味合いを持つか……。


 そしてカオリからも経緯をさらに詳しく聞き出す。

特にいつこの世界へ転移したのか、それが重要だ。

しかし、その答えは俺の予想を超えたものだった。



「私がこの世界に来たのは、確か10年前くらいだったはずだよ」


「はぁっ!? ちょっと待て!

 それって、ゲームのサービス開始前じゃねーか!」


「そうなの?

 でも、確かその頃はスマホって持ってる人少なかったし、私もこっちに来て初めて本物を見たの。

 それにスマホのゲーム? っていうのも、初めて聞いたもの」



 そりゃそうだ。10年くらい前と言えば、まだスマホもそこまで普及してないし、世代によっては「んなもん流行んねーよ」って言ってたほどだ。

ま、今でも断固スマホ拒否の世代は居るけどな。


 ともかく、そんな頃からこの世界は存在していた事になる……。

時間の流れが違うという可能性はあるが、俺の端末サリーのカレンダーは前世基準で動いている。

それに、カオリのスマホに対する意識からしても、前世の1年がこちらの10年だとか、そういう事は無いと考えてよさそうだ。



「他に何か……。こっちに来た頃と今で、違う事ってないか?」


「色々あるけど、まくま君……。まくらになる前のまくま君はね、確か4年前に転校してきたの。

 あと、その頃からレアリティ危険度の高い来訪者が、多く現れるようになったの」


「なるほど。転校してきたってのはゲームの設定と同じだな。

 強い来訪者ってのも、ゲームのサービス開始による新キャラの追加……。

 というよりは、その前はゲームリリース時のキャラしか居なかったんだろうな」



 しかし今の話が本当であるなら、この世界はゲームを元にしたというよりは、ゲームがこの世界を模したものではないだろうか。

……いや、それだとサービス開始と共に、世界が変化した事の説明が付かない。

そして何より、俺を転生させたガチャ神様が、嘘をつく理由も分からない。

いや、実験動物扱いされてたし、どういう反応をするか観察している可能性はあるが……。


 それに、カオリを転移させたのは誰だ? ガチャ神様は、相手のイメージする神様像で現れる。

なら、カオリのイメージする神様が、自称悪魔ならば、ソイツがカオリのイメージを持って現れた、ガチャ神かもしれない。

けれど、それでは矛盾が生じるのだ。


 自称悪魔は、おそらく俺がここへ来る事を知っていた。

“世界を動かす特別な人”が俺であれば、という話ではあるが、その前提がなければ推論する事もできないので、そういう事にしておこう。


 ならばソイツは、俺が運0を原因として死ぬ事も、転生する事も知っていた。

そしてガチャ神は、運0の人間を実験的に創ってみたと言っていた……。


 結果を知る者が、実験など行うだろうか?


 しかもそれは本来禁止されていて、それに対するペナルティ……、と呼べるのか分からないが、反省文の提出をしていたと言っていたな。


 禁止? ペナルティ? 反省文の提出?

 そこでふっと気付く。



「カオリ、誰か来る!」


「え!?」


「……あらあら。……こんな所に良いカモが」



 俺としたことが、考え事に夢中で、地獄耳に意識が行っていなかった。

おかげで隠れる事も、逃げることもできず見つかってしまった。


 声の主はショートカットの女性。

月明かりを背に立つその姿は、水着とデニム生地のホットパンツという、海で遊ぶにはもってこいな服装だ。

けれど少しくたびれた、つばの大きな中折れ帽と、大きなマントを身に着けており、ただの観光客の雰囲気ではない。

そしてもう一つ、明らかに異常さを強調するアイテム、マスケット銃を持ち、俺達に銃口を突きつけているのだ。



「新キャラきたーー!!」


「まくま君!? 喜んでる場合じゃないよ!?」


「……そこのクマは、……状況が分かってないようだね。

 ……ウチのシマに入ったんだ。

 ……痛い目見たくなかったら、……金目のモノ置いていきな!!」



 なんだかこうやって喧嘩を吹っかけられる展開に懐かしさを感じる……。

ゲームであれば、修学旅行のイベントでバトルにならないわけがない。

だが、クリスマスから今まで、イベントらしいイベントも無かったしな。


とはいえ、今はちょっとマズい。

戦えるメンバーも居らず、カオリを危ない目に遭わせるわけにもいなかない。


うーん……。

カオリは、俺が強制召喚でここに呼んだから、うまく相手の意識を逸らしてる間に、返送するか。



「これって、いわゆるカツアゲってやつ?」


「……あぁ!?

 ……アタシをそこいらのチンピラと一緒にしてんじゃねぇ!!

 ……アタシは海賊、アイリ様だ!」


「やってる事は大差ないよな」


「ちょっとまくま君!?」


「……アタシとやり合おうっての? ……見上げた根性じゃないの。

 ……どっからでもかかってきな!」



 その声と共に4つの魔方陣が展開される。そのひとつはカオリの足元だ。

そして次の瞬間、カオリは忽然と姿を消し、残る3つからは見覚えのある面々が現れる。



「主様! お呼びですかっ! ……って、何故こんな所に!?」


「ふわぁぁ……。真夜中のバトルは勘弁してほしいんだぜ……」


「ゆー! バトルの監視がんばるよっ!」



 鬼若、局長、そして青い警備職員。それぞれにそれぞれの反応をしている。

というか、局長直々に審判に来たのか。やっぱ局長って暇なんじゃないだろうか。

はい、今回も答え合わせをします!!


『カオリは164連目。ガチャ神のは360連目』


うわ、雑っ!


『長々と後書き書いてもしゃないやろ?』


まぁそうだけどね? さて、次回はバトル展開!


『させねえよ??』


えっ? 終わり方的にバトル不可避でしょ。


『作者権限でさせねぇよ?? 俺がバトル展開書くの苦手なの知ってるやろ?』


メタい……、理由が超メタい……。


『後書きがメタいのは今に始まった事ちゃうやん』


まぁ、最後まで書ききれば文句ないですけど。

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