爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

350連目 ワシ、再降臨じゃ!

公開日時: 2021年1月7日(木) 18:05
文字数:2,999

前回のあらすじ

 『新年早々クロも鬼若も元気ですね~』


前書き代打の今日のひとこと

 『今年は初詣行ってません。コロさんが猛威をふるってますしね』



「それじゃ、みんな食べ終わったみたいだし、帰るか」



 俺は皆がお汁粉を食べ終わるのを待ってから切り出した。

せっかくのお正月休みだ、少しでも寝正月を堪能したい。



「えっ、ちょっと待ってまくま君。せっかく来たのに御参りしないの?」


「あぁ、なんていうか……、神という存在を信じていないというか……。

 いや、信じてる? だからこそ信用していないというか……?」


「何言ってるか、全然わかんないですっ!」



 うーん。神と顔見知りだからなぁ。あ、顔は見てないか。

しかしこれで、「ワシ以外の神に祈りおって」なんてヘソを曲げられても困るしなぁ。

かといって頑なに拒否するのも不自然だよな。ま、ガチャ神には適当に謝ればいいか。


 いや待てよ。普通に多神教的考えをしていたが、実は一神教的世界だったりするのだろうか。

もしかすると、あのテキトーな神も実は唯一神で、この神社もガチャ神を奉っていたり……?

それはそれで御参りすると、またガチャで爆死しそうだからやだなぁ。


つべこべ言わずにさっさと来るんじゃ!


 ……また幻聴か。いや、もう幻聴じゃなさそうってのは気付いてたけどさ。

もしかして今回の件って全部仕組まれてたのか!?

神の能力チカラをもってすれば不可能ではなさそうだけど……。



「そうだな、せっかくだしな。俺は最後でいいから、みんな行ってきなよ」


「はいはいっ! クロが一番乗りですっ!!」


「それじゃぁ、私とクロで行ってくるね」



 クロはカオリに連れられ、方法を教えられながら、たどたどしくも参拝する。

俺の予想通りというか、おおかたの予想通り鈴を力いっぱい鳴らして、カオリに叱られていた。

うん、やるよね、あのくらいの年代の子は。特にクロは初めてみたいだったし。

そんなこんなで帰ってきたクロは、なんだか呆けていた。



「どうしたクロ? ボーっとしてさ」


「えーっと……。なんでもないですっ!」


「なんでもないならいいけどさ。それじゃ次は誰が行く?」



 顔を見合わせる鬼若とベル。考えてみれば当然か。

鬼と悪魔が神に祈るのは普通ありえないよな。



「譲り合うくらいなら、二人一緒に行って来いよ」


「では、そうさせていただきましょう。鬼若、行きますよ」



 ポンとカオリに渡された俺は、ベルと鬼若の後姿を眺める。

一緒に行く事を嫌がらなかったのは、意外だな。

あ、もしかして石段で話してたこと気にしたのか? ベルならありうる話だけど。

そして帰ってくる二人もまた、微妙な顔をしている。

うーん、念話で大喧嘩したとかじゃないといいんだけど。



「えっと……。どうした二人とも」


「いえ、小さいながらもやはり神を祀る場、神聖な空気がありますね。

 我らには毒となるものですが」


「あぁ……、やっぱそうなんだ」



 この“やっぱり”が指すものは……。それは俺が行けば分かる事だろう。

蛇が出るか神が出るか。さて、久々に拝ませてもらおうか、爆死神さんよ!!



  ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 



「誰が爆死神じゃ! 遅すぎて待ちくたびれたぞ!?」


 やっぱ居るよねー。なんとなくそうだと思ってた。


「なんじゃそのありがたみを感じていない反応は! これでも神じゃぞ!?」


 いや、クロ達の反応見てたら、こんな事じゃないかとね。

 あと、最近の幻聴もどうせガチャ神のせいでしょ。


「クロのりあくしょんは良かったのぅ……。

 対して、おぬしは察しが良すぎてガッカリじゃ」


 やっぱりクロ達にも姿現したのか。正確には声しか聞こえないけども。

 それにさ、いくら幻聴でも知ってる声なら、普通気付くでしょ?


「普通の人間ならば、そうでもないんじゃが……。

 なにせおぬしには運の代わりに、色々なパラメータに振ってあるからの。

 それを勘案すれば、その察しの良さも納得じゃがの」


 へー、俺にとっては普通だから気にした事無かったな。


「得てして人間は、自身にできる事は誰にでもできると勘違いするもんじゃ」


 そんなもんなのかな? でもさ、その分運が無いんだよなぁ。


「運0の分を、洞察力なんかに振り分けた気がするのぅ。

 しかし、そのおかげで運をカバーできた訳じゃの。

 それが分かっただけで、なかなかの研究成果といえそうじゃ」


 あ、やっぱ俺は実験動物扱いなのは変わらない訳ね。

 いや今は、動物ですらないんですが……。


「なかなかに愛らしい姿であろう? 満足じゃろう?」


 いや、待て待て。すっげぇ不便なんですけど!?

 てゆーかどうせアレなんだろ? 俺が集めてたベルの強化素材のまくらにしたってオチだろ?


「言ったとおり、おぬしの持っているお気に入りキャラへの転生じゃ」


 素材まくらは! キャラじゃ! ねぇ!!

 確かに間違って売却とかしないようにお気に入り登録はしてたけども!!


「……? ワシにとっては、どっちもただのデータなんじゃが」


 あ、これアニメキャラに「でもそれ絵じゃん」とか言うタイプの奴だ。


「そんな事はどうでもよいじゃろ」


 いやよくないんですが!? すっげぇ不便なんですってば!


「むぅ、仕方ないのぅ。どうして欲しいんじゃ?」


 とりあえず、自分で動けるようになりたいし、五感も無いのって辛いんだよ。


「いや、おぬし動けるじゃろ? ミミをぴこぴこさせておったし。

 それに五感も聴覚と視覚だけでなく、ニオイや温度も感じておるじゃろ」


 あれで動けるって言うのは、無理があるよね!?

 あと、まくらに鼻ないんだから、匂いも分かるわけないっしょ!?


「転生直後は匂いを感じておったじゃろ。くわしくは40連目の1行目じゃ」


 んー? そうだっけ? ってその40連目ってのは何?


「……こっちの話じゃ。ともかく、自身をまくらと認識していない時は、五感もあったのじゃ」


 つまり、俺が俺自身をまくらと認識したから五感がなくなったと?


「そういう事じゃ。まくらに目が無いと認識してしまえば、視覚すらなくなったかもしれんのぅ」


 あれか、息の仕方や舌の位置を考え出すと、普通にできなくなるような感じ?


「そんな所じゃな。しかし、不便ならばヒントくらいはくれてやるかのぅ。おぬしはまくらじゃ。

 しかし、まくらにも色々あるじゃろう?

 もう少しシャレたまくらならば、不便もなくなるかもしれんのぅ」


 つまり……、目や鼻のあるまくらなら大丈夫ってこと? それはまくらなんだろうか。


「ついでに口もあれば、食事もできるかもしれんぞ? 汁粉食べ損ねて悔しがっておったのぅ」


 汁粉はともかく、クリスマスのご馳走はちょっと悔しかったかも。


「ヒントはここまでじゃ。工夫次第でなんとでもできるじゃろうて、よく考える事じゃな」


 意外とガチャ神さん親切っすね。なんか悪いもんでも食べました?


「元々親切じゃ! 他に何か聞きたい事あるかのう? 今のうちじゃぞ?」


 色々あるけど……。カオリの事とか、運営の事、それに鬼若も変だし、メシアって人も……。


「むっ……! 多いのぅ……。どれか一つだけ答えてやろうかのぅ」


 親切と思ったけど、やっぱケチかもしれない。


「一つだけじゃ。神の能力チカラの安売りはするなと言われておる」


 誰にだよ。


「一つしかない問いじゃが、それに答えればよいのかの?」


 あっ! 待って! えっとじゃあ……。この世界ゲームについて……、とか?


「大雑把に聞いて、多くの答えを得ようという作戦じゃな? まぁよい、答えてやろう」

「しかし、言葉にするのは面倒じゃな。イメージを送るので、適当に自己解釈するのじゃ」


 えっ、なにそれ怖い。


「尺の都合もあるんじゃ。さっさと受け取るがよい!」


 その言葉と共に、分かるような解らないような何かが頭に流れ込んでくる。

 いや、まくらは頭を置くところであって、頭はない……。じゃない、尺の都合ってなんだ!?

『本文でメタ発言はやめろっっっっっっっ!!!!』


まぁまぁ、しま一ちゃん落ち着いて。

それに、本文メタは前回もあったから。


『部下なんやろ? どないかしてや……』


うん、無理。ってか、俺も本文に出たらやっちゃうかも?


『ダメだこいつら、早急に亡き者にせんと……』


おぉ、こわいこわい。

まぁ、思った以上には暴走してないでしょ?


『確かに。結果として、最終回まで話が崩壊する事はなかったしな』


完結してから分かる、ガチャ神ちゃんの大人しさ。


『というか、ここにその話書くんや?』


それを言ったら、今までの前後書きも、なろう版から結構変わってるよね?


『せやで。意外と面倒や』


しかも、なろう版と違って、関西弁になってやがるしな。


『意外とこれ変えるんも面倒やわ』


ぶっちゃけやがったな!

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