前回のあらすじ
「もう一人のわんこが登場したのじゃ」
ガチャ神の今日のひとこと
「やっと章題を回収したのじゃ」
「見つけた! 主様! ご無事ですか!?」
聞き覚えのある声と、見覚えのある風景が写る。こっちに来てすぐと、ほぼ同じ状況だよなぁ。
おい運営! ワンパターンだって叩かれるぞ?
まぁ、今回違うところと言えば、探しに来たのが鬼若だけでなくベルも一緒という所だ。
それに……、なんかすごい荷物背負ってるし。鬼若の身長の1.5倍くらいあるんじゃないだろうか。
対する俺の方には、二人の少女。合計4人と1まくら、なかなか賑やかだ。
「あっ! もう来ちゃった! クロ、逃げるよ!」
「ごしゅじんはクロがお守りするのです~!」
俺を連れてきた少女は、クロというのか。女の子の名前っぽくないよね。
どっちかというとペット、犬に付けるような名前だよね。
そのクロの手を引き、逃げようとする“ごしゅじん”と、それを振り払い、身を挺して“ごしゅじん”を守ろうとするクロ。
地面に手を着きグルル……、と唸る様子はオオカミのようなオーラを放つ。
まぁ、俺がクロという名前と、“ごしゅじん”呼びが犬っぽいと思ったからだろうけどね。
よく見れば、尻尾もふさふさで、くるりと巻いている感じが柴犬っぽい。
ちなみに尾は黒いので「尾も白い犬」ではない。この発想もオモシロクない。
「クロ! だめだよ! SSR警報なんだから!」
「足止めくらいはできるのです! その間に逃げるのです!」
ごしゅじんの腕に託されたまくらのおじさんは、目の前で展開される「忠犬クロ公」の雄姿に、涙が出そうだよ。
まくらに目はないから泣けないけど。それに雄姿じゃなくて、雌姿でないとおかし……、まぁいいか。
そんな事よりも、俺がまくらのフリをしているせいで話がこじれそうだが、どうしたものか。
実際、フリじゃなくてまくらなんだけど、ここで俺が止めれば済む話ではある。
とかなんとか悩んでいるうちに、事態は進んでいく。
少々のにらみ合いがあったにも関わらず、結論を出せなかった。考えすぎる所が俺の悪い癖だ。
「そちらから来ないのなら、こちらからいくのですっ!」
言うや否や、クロは鬼若に飛び掛り、頭突きを食らわせる。
対して鬼若は軽く腕で受け止めるだけの様子で、何らダメージを受けていないようだ。
ゲーム画面だったら、ここでダメージの数字がバーン! って出てたんだけどな。
「待て! 戦う気はない! 話を聞け!」
「そうはいかないのですぅ! 野良来訪者には負けないのですっ!」
さすがにベル戦で学んだのか、話し合いで解決する気らしい。
まぁ、それで済んでしまったら、ゲームが成り立たないので、相手は聞く耳持たずだよね。
なんて思っているうちに、もう一撃。今度は頭突きではなく、タックルだ。
と言っても少女の体重では、さほど威力は変わらないのだろう。軽く受け止められてしまっている。
避けるという選択肢は無いのだろうか。いや、避けるとクロが危ないと思ったのかな?
そこまで考えているなら、後で褒めてやらないとな。
「鬼若、これは戦闘か?」
「いや、俺は戦う気は無いんだが、相手が聞いてくれなくてな」
「貴様が“戦闘”だと認識しているか、それを聞いておるのだ」
「ん? それなら、そのつもりはないが……」
「ならば、我があの小娘を止めてやろう」
なにやら不穏な会話が聞こえた気がする。ベルの本気って怖そうだし。
なにより、クロの攻撃が2回目って事は、次の攻撃後にベルは行動可能になる。
……ってあれ? 鬼若はなんで初撃のアクティブスキル使ってないんだ?
「羽衣よ、我らに歯向かう者を縛り上げよ」
冷たい一言。ただすべき事のみを命令するその言葉に反応し、ベルの纏う羽衣はその身を伸ばし、獲物を締め上げる蛇のように、クロを縛り上げる。
ムグムグともがくクロ、必死に振りほどこうとする。
しかし、もがくほど絞め付けられ、次第に動きも弱くなっていく。
「待って! やめて! 私達の負けよ!」
その姿を見かね、彼女のごしゅじんは降参を表明した。
「なに、これは戦闘ではない。ただの戯れよ。どのみち命までは奪えん」
ふわっと羽衣がその締め付けをゆるめ、クロを開放する。
クロはごしゅじんにかけより、泣きながら抱き着いた。
「ごめんなさい。クロ、負けちゃった」
頭を優しく撫でるごしゅじんの姿は、高校生らしからぬ、母性を感じさせた。
その間に挟まれる俺は、感動のシーンの邪魔者でしかないな。
それにしても……、涙か何か分からないモノで濡らされるのは、鬼若に続き何度目か。
「何が望みですか」
「いえ、我らはその手に持つ、まくら様をお迎えに上がっただけですわ」
「まくら……、様?」
ふと視線を落とし、俺を見つめる二人の少女。
さすがにこの展開では、まくらのフリを続けるわけにはいなかいよな。
「やぁ! ボクは喋る、不思議なまくらだよっ! 仲良くしてね★」
「ぐえっ!?」
ちょっとクロ、男の子の夢が壊れかねない反応はやめてくれ。
驚くにしても、もうちょっと可愛らしい驚きかたをして欲しいものだ。
それに飛び退いて距離を取るのはいいが、ごしゅじんを不気味なまくらから守らなくていいのか?
「主様は訳あって、今はこのようなお姿だが、元は人間だ」
「ですので契約者として、まくら様をお迎えに上がったのです」
「そうだっんですか。ではこのまくら……、さん? はお返しします」
あ、ここはゴネないんだ。まぁ負けた側がいう事聞くっていうルールは、わかりやすいね。
「ところで、鬼若君だよね? もしかしてだけど、そのまくらさんって……」
「どこかで会いましたか? もしや、主様のお知り合いでしょうか?」
「前に、熊君と一緒に居るところを見た事あったから」
「熊君? と言うのは? 我はまくら様としかお名前を聞いておりません故」
「ベル、当然だが主様の名前は、まくらではないぞ?」
ベルの手元へと帰ってきた俺に視線が集まる。
「あっ……、そういえば……、そんな名前にシテタヨウナ……」
プレイヤーネームって“熊の実”にしてたっけ!?
やっべぇ! 適当に付けすぎて恥ずかしいパターンだ!
えっと、言い訳させてもらうとですね、このゲーム始める前にやってたヤツでですね、ぬいぐるみを繋げて消すパズルゲーのデスネ、よく使っていたキャラがデスネ、熱帯魚のクマノミのキャラだったんデスヨ……。
いや、誰に言い訳してるんだ俺は。しかし、その名前で呼ばれるのは恥ずかしい!
「今はまくらだから! まくらって呼んでね!」
「えっ……、うん。じゃぁ間を取って、まくま君って呼ぼうかな?」
「いや、なにの間を取ったの!? 普通にまくらでいいから!」
「まくま様、なかなか良い響きではありませんか」
「いや、ベルまでなにノッてきてんの!?」
「今はそれよりも、主様とはどのようなご関係なのですか?」
悪ノリするベルも意外だったが、鬼若が仕切りなおして進行役に回るとは……。
うんうん、日々成長しているんだろうな。そういう事にしておこう。
今回は助かったしね……。
「私はカオリって言います。まくま君とは同じクラスなんだけど……、覚えてないの?」
「えーっと……、大変申し上げにくいのですが……」
「嘘でしょ!? 何度か話してるし、隣の席だった事もあるんだよ!?」
「あーっと……、えーっと……、鬼若! 説明!」
俺は面倒事を日々成長している鬼若に投げつけ、だんまりを決め込む事にした。
あと、そろそろクロは、鬼若の後ろから怯えた目で俺を見つめるのを止めて欲しい。
さすがにその反応は、図太い俺でも傷つくぞ?
「これにて11月章本編は終了じゃ」
ちょい中途半端じゃね?
「パーティーメンバーが集まったので、おっけーじゃ」
わんこ2匹と、にゃんこメイド1人、女子高生1人に、さらにまくら1つ。
「なかなかバランスのいいパーティーじゃの」
うん? バランスいいのか??
「神2人のみのコーナーよりは良いのじゃ」
それは否定できない。ってかココってコーナーなのかよ。
「さて、次回の更新なのじゃが」
じゃが? じゃが??
「次回から、ワシらは少しの間お休みじゃ」
え? なんでさ?
「……仕事、たまっておるんじゃろ?」
(∩゜д゜)アーアーきこえなーい。
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