爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

160連目 まくらの日常へ変わる非日常

公開日時: 2020年12月26日(土) 18:05
文字数:2,968

前回のあらすじ

「もう一人のわんこが登場したのじゃ」


ガチャ神の今日のひとこと

「やっと章題を回収したのじゃ」



「見つけた! 主様! ご無事ですか!?」



 聞き覚えのある声と、見覚えのある風景が写る。こっちに来てすぐと、ほぼ同じ状況だよなぁ。

おい運営! ワンパターンだって叩かれるぞ?

まぁ、今回違うところと言えば、探しに来たのが鬼若だけでなくベルも一緒という所だ。

それに……、なんかすごい荷物背負ってるし。鬼若の身長の1.5倍くらいあるんじゃないだろうか。

対する俺の方には、二人の少女。合計4人と1まくら、なかなか賑やかだ。



「あっ! もう来ちゃった! クロ、逃げるよ!」


「ごしゅじんはクロがお守りするのです~!」



 俺を連れてきた少女は、クロというのか。女の子の名前っぽくないよね。

どっちかというとペット、犬に付けるような名前だよね。


 そのクロの手を引き、逃げようとする“ごしゅじん”と、それを振り払い、身を挺して“ごしゅじん”を守ろうとするクロ。

地面に手を着きグルル……、と唸る様子はオオカミのようなオーラを放つ。


 まぁ、俺がクロという名前と、“ごしゅじん”呼びが犬っぽいと思ったからだろうけどね。

よく見れば、尻尾もふさふさで、くるりと巻いている感じが柴犬っぽい。

ちなみに尾は黒いので「尾も白いオモシロイ犬」ではない。この発想もオモシロクない。



「クロ! だめだよ! SSR★7警報なんだから!」


「足止めくらいはできるのです! その間に逃げるのです!」



 ごしゅじんの腕に託されたまくらのおじさんは、目の前で展開される「忠犬クロ公」の雄姿に、涙が出そうだよ。

まくらに目はないから泣けないけど。それに雄姿じゃなくて、雌姿でないとおかし……、まぁいいか。


 そんな事よりも、俺がまくらのフリをしているせいで話がこじれそうだが、どうしたものか。

実際、フリじゃなくてまくらなんだけど、ここで俺が止めれば済む話ではある。

とかなんとか悩んでいるうちに、事態は進んでいく。

少々のにらみ合いがあったにも関わらず、結論を出せなかった。考えすぎる所が俺の悪い癖だ。



「そちらから来ないのなら、こちらからいくのですっ!」



 言うや否や、クロは鬼若に飛び掛り、頭突きを食らわせる。

対して鬼若は軽く腕で受け止めるだけの様子で、何らダメージを受けていないようだ。

ゲーム画面だったら、ここでダメージの数字がバーン! って出てたんだけどな。



「待て! 戦う気はない! 話を聞け!」


「そうはいかないのですぅ! 野良来訪者には負けないのですっ!」



 さすがにベル戦で学んだのか、話し合いで解決する気らしい。

まぁ、それで済んでしまったら、ゲームが成り立たないので、相手は聞く耳持たずだよね。


 なんて思っているうちに、もう一撃。今度は頭突きではなく、タックルだ。

と言っても少女の体重では、さほど威力は変わらないのだろう。軽く受け止められてしまっている。

避けるという選択肢は無いのだろうか。いや、避けるとクロが危ないと思ったのかな?

そこまで考えているなら、後で褒めてやらないとな。



「鬼若、これは戦闘バトルか?」


「いや、俺は戦う気は無いんだが、相手が聞いてくれなくてな」


「貴様が“戦闘”だと認識しているか、それを聞いておるのだ」


「ん? それなら、そのつもりはないが……」


「ならば、我があの小娘を止めてやろう」



 なにやら不穏な会話が聞こえた気がする。ベルの本気って怖そうだし。

なにより、クロの攻撃が2回目って事は、次の攻撃後にベルは行動可能になる。

……ってあれ? 鬼若はなんで初撃のアクティブスキル使ってないんだ?



「羽衣よ、我らに歯向かう者を縛り上げよ」



 冷たい一言。ただすべき事のみを命令するその言葉に反応し、ベルの纏う羽衣はその身を伸ばし、獲物を締め上げる蛇のように、クロを縛り上げる。


 ムグムグともがくクロ、必死に振りほどこうとする。

しかし、もがくほど絞め付けられ、次第に動きも弱くなっていく。



「待って! やめて! 私達の負けよ!」



 その姿を見かね、彼女のごしゅじんは降参を表明した。



「なに、これは戦闘ではない。ただのたわむれよ。どのみち命までは奪えん」



 ふわっと羽衣がその締め付けをゆるめ、クロを開放する。

クロはごしゅじんにかけより、泣きながら抱き着いた。



「ごめんなさい。クロ、負けちゃった」



 頭を優しく撫でるごしゅじんの姿は、高校生らしからぬ、母性を感じさせた。

その間に挟まれる俺は、感動のシーンの邪魔者でしかないな。


 それにしても……、涙か何か分からないモノで濡らされるのは、鬼若に続き何度目か。



「何が望みですか」


「いえ、我らはその手に持つ、まくら様をお迎えに上がっただけですわ」


「まくら……、様?」



 ふと視線を落とし、俺を見つめる二人の少女。

さすがにこの展開では、まくらのフリを続けるわけにはいなかいよな。



「やぁ! ボクは喋る、不思議なまくらだよっ! 仲良くしてね★」


「ぐえっ!?」



 ちょっとクロ、男の子の夢が壊れかねない反応はやめてくれ。

驚くにしても、もうちょっと可愛らしい驚きかたをして欲しいものだ。

それに飛び退いて距離を取るのはいいが、ごしゅじんを不気味なまくらから守らなくていいのか?



「主様は訳あって、今はこのようなお姿だが、元は人間だ」


「ですので契約者として、まくら様をお迎えに上がったのです」


「そうだっんですか。ではこのまくら……、さん? はお返しします」



 あ、ここはゴネないんだ。まぁ負けた側がいう事聞くっていうルールは、わかりやすいね。



「ところで、鬼若君だよね? もしかしてだけど、そのまくらさんって……」


「どこかで会いましたか? もしや、主様のお知り合いでしょうか?」


「前に、熊君と一緒に居るところを見た事あったから」


「熊君? と言うのは? 我はまくら様としかお名前を聞いておりません故」


「ベル、当然だが主様の名前は、まくらではないぞ?」



 ベルの手元へと帰ってきた俺に視線が集まる。



「あっ……、そういえば……、そんな名前にシテタヨウナ……」



 プレイヤーネームって“熊の実”にしてたっけ!?

やっべぇ! 適当に付けすぎて恥ずかしいパターンだ!


 えっと、言い訳させてもらうとですね、このゲーム始める前にやってたヤツでですね、ぬいぐるみを繋げて消すパズルゲーのデスネ、よく使っていたキャラがデスネ、熱帯魚のクマノミのキャラだったんデスヨ……。


 いや、誰に言い訳してるんだ俺は。しかし、その名前で呼ばれるのは恥ずかしい!



「今はまくらだから! まくらって呼んでね!」


「えっ……、うん。じゃぁ間を取って、まくま君って呼ぼうかな?」


「いや、なにの間を取ったの!? 普通にまくらでいいから!」


「まくま様、なかなか良い響きではありませんか」


「いや、ベルまでなにノッてきてんの!?」


「今はそれよりも、主様とはどのようなご関係なのですか?」



 悪ノリするベルも意外だったが、鬼若が仕切りなおして進行役に回るとは……。

うんうん、日々成長しているんだろうな。そういう事にしておこう。

今回は助かったしね……。



「私はカオリって言います。まくま君とは同じクラスなんだけど……、覚えてないの?」


「えーっと……、大変申し上げにくいのですが……」


「嘘でしょ!? 何度か話してるし、隣の席だった事もあるんだよ!?」


「あーっと……、えーっと……、鬼若! 説明!」



 俺は面倒事を日々成長している鬼若に投げつけ、だんまりを決め込む事にした。

あと、そろそろクロは、鬼若の後ろから怯えた目で俺を見つめるのを止めて欲しい。

さすがにその反応は、図太い俺でも傷つくぞ?

「これにて11月章本編は終了じゃ」


ちょい中途半端じゃね?


「パーティーメンバーが集まったので、おっけーじゃ」


わんこ2匹と、にゃんこメイド1人、女子高生1人に、さらにまくら1つ。


「なかなかバランスのいいパーティーじゃの」


うん? バランスいいのか??


「神2人のみのコーナーよりは良いのじゃ」


それは否定できない。ってかココってコーナーなのかよ。


「さて、次回の更新なのじゃが」


じゃが? じゃが??


「次回から、ワシらは少しの間お休みじゃ」


え? なんでさ?


「……仕事、たまっておるんじゃろ?」


(∩゜д゜)アーアーきこえなーい。

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