爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

360連目 まくら大改造計画

公開日時: 2021年1月8日(金) 12:05
文字数:3,022

前回のあらすじ

 『尺の都合』


前書き代打の今日のひとこと

 『大改造びふぉー……。あふたーは次回に!』

 ガチャ神から流し込まれるイメージ、その濁流に俺は飲まれていた。

 それらは、俺の拾える事柄だけを残し、はるか彼方へ流れ去ってゆく。


「スマン、全力で流してしもうたわ。耐えられたかのぅ?」


 死ぬかと思いましたよ。でも必要最低限は残ったかも?

 まだ、頭がボンヤリしますけど。


「普通耐え切れず発狂するもんなんじゃが……。

 おぬし本当に人間なのか怪しいのぅ」


 いや、今はまくらですし? けど大体の事は分かりましたよ。

 えっと、とりあえず残った記憶を整理すると……


 この世界は、俺のアカウントを元に創られた世界だけど、ゲームそのものではない。

 よってゲームオーバーも存在せず、バトルに負けても来訪者と同じく、行動不能になるだけ。

 だけど俺はまくらだから、まくらである用件を満たしていなければ死んでしまう。


 このくらいは残りましたよ。俺としては十分です。


「ふむ、おぬしが知りたかった情報だけが意識できている状態じゃの。

 もし他にも知りたい事ができた時は、またここに来るがよい。

 その時は、おぬしが自衛のために封印した記憶を開放してやろう」


 んー……。それって、ネタバレって事ですよね?

 本当に大事な時以外は、遠慮しておきますね。


「おぬし、急によそよそしくなっておるが大丈夫かのぅ?」


 いや、本当に神様だったんだなって実感したので……。

 今さらですけど、神罰とかないですよね……?


「……ふぉっふぉっふぉっ! ワシの偉大さに今さら気付きおったか!

 よいじゃろうよいじゃろう、今までの事は水に流してやろう!

 …………。

 と、言いたいところなんじゃが、実はワシ、平神でのぅ……。

 その事で今回、おぬしに会いに来たのじゃ」


 平神ってなんですかそれ。


「簡単に言えば、神界での下っ端じゃ」


 あぁ、さっきの神の能力チカラの安売りの話って、上の人から言われてるって事ですか。


「そういう事じゃ。おぬしの察しの良さは、話が早くて助かるわい。

 簡単に言えば会社と同じでの、全知全能の上司がおるんじゃよ」


 へー、ガチャ神様は全知全能じゃないんですか?


「ワシは結構制限されておっての……。その制限の中に……、うぬぬ……」


 なんか言い澱んでますが、俺に聞かれるとマズイ話なんです?


「いや、人間のステータスには下限があっての……。

 その……、運の下限も制限されておってな……」


 つまり俺の運を0にしたせいで、ペナルティを受けたんですね?


「それに関しては、反省文提出で済んでおるんじゃが……」


 はっきりしない人ですねぇ。あ、人じゃないか。


「スマンかった! おぬしの人生滅茶苦茶にしてしもうたのは、ワシのせいじゃ!」


 ……っ!? なんですか、いきなり改まって!?


「いやの、ワシの上司が、ちゃんと謝ってこいと言っておっての……。

 下限突破や、この世界の創造については、むしろ評価されたんじゃ。

 できないようにしていた事をやってのけたんじゃからの」


 なんというか、きっちりした上司さんなんですね。

 というか下限突破って、そんな難しい事だったんですね。


「いや、ただロックされておっただじゃから、コマンド入力で解除できたのじゃ。

 ちなみに“↓↓↑↑→←→←AB”で解除できたんじゃ」


 なんか、自爆しそうなコマンドですねぇ……。完全ゲームの裏技じゃないですか。

 でも俺は別に気にしてないですよ? そりゃ、運が無くて苦労もしましたけど。

 けど、結局過労死した原因も俺が選んだ道ですし、後悔しても仕方ないですからね。


「そう言ってくれると助かるわい」


 で、謝るためにわざわざ神社掃除のクエストを出して、会いに来させたんですか?


「それもあるんじゃが、おぬしには伝えておこうと思っての。

 ワシ、今回の件で全知全能神への昇進が決まったのじゃ」


 うん、ちょっと待って。話の流れ的に、降格か左遷では??

 少なくとも昇進はないんじゃないですか? しかも全知全能って……。


「能力があれば多少の事は許されるのじゃ。

 それ以上に“世界の創造”を評価されたのやもしれん」


 へー、イエスマン以外も昇進できる良い会社ですねぇ。

 ん? 会社でいいのかな? 神の会社だから神社かみしゃ? あ、神社じんじゃ


「何を一人で納得しておるんじゃ。話を進めるぞ?

 それで、昇進の条件というのが、地獄の研修とおぬしへの謝罪。

 そして、この世界の結末を見届ける事なのじゃ」


 へー、研修もあるってやっぱ会社なんですね。地獄のってのが気になりますが。

 それで、謝罪はクリアしたので、世界の結末ってやつですね。


「“創った世界は自分で最後まで面倒みなさい”って事なんじゃろうな」


 捨て犬拾った時のオカンのセリフじゃないですか……。

 もしかして、実験動物から愛玩動物ペットへの待遇向上ですか。


「そういう訳でもないがの、広げた風呂敷を畳むのが、最後の試験なんじゃろうな。

 ともかくじゃ、間接的におぬしのおかげで、昇進が決まったようなもんじゃ。

 だから何か一つ、願いでも叶えてやろうかと思っておるのじゃ」


 うーん、ありがたいお話ですけど……。願いですか。


「何を悩んでおる? 望むままに願うが良いぞ。

 なにせ全知全能予定じゃからな、何でも叶えてやれるんじゃ」


 いえ、今の俺は何をすればいいのかすら分かってない状況ですし……。

 そんな状態だと、何を願うべきかもわからないんですよね。


「ふむ、おぬしはこの世界で成すべき事がわからんのか?」


 えぇ、急な転生でしたからね。

 ゲームの中で生活してきたものの、スマホゲーって目標設定ない場合多いですし。


「おぬし、まだ何か勘違いしておるな? この世界はゲームではないぞ?

 ゲームを元にしただけじゃからの。

 それに何をすべきかは、自身で決めるもんじゃろう。

 前の世界でもおぬしは、誰かに目標を決めてもらって生きておったのか?」


 っ……!?

 …………。

 言われてみれば、そうですよね。俺ってバカですね。

 鬼若には、自身の思うように生きろと言っておいて、俺自身がゲームのキャラになりきってました。

 それを伝えるために、ガチャ神様は、ここにいらっしゃるんですね。


「そんな大それた理由じゃないんじゃが……。まぁよい。

 して、願いはどうするんじゃ?」


 ……保留はできませんか?

 俺、この世界で真剣に生きてみようと思います。

 ゲームのキャラとしてではなく、一人の人間として。

 それで、願いが見つかったら、また会う事はできませんか?


「ふむ。まぁよい。元よりおぬしを含め、この世界を見守る役目がある。

 のんびりとおぬしらの行く末を見ることにしようかの」


 ありがとうございます。

 なんだかガチャ神様って、最初会った時より神様らしくなりましたね。


「色々あったからのぅ……。では、今日はこの辺にしておくかの」


 あっ、そうだ。先に御参りした人は、何か願ったんですか?


「願いを叶えるには、それ相応の対価が必要じゃ。なので願っても叶うとは限らん。

 聞くだけは聞いたがの。しかし、内容を教えるつもりは無いぞ。個人情報じゃからな」


 なるほど、じゃぁ俺の場合はかなり特殊なんですね。

 じっくり考えてみます。


「そうするがよい。さらばじゃ!」





 その言葉を聞き終えると、俺はゆっくりと目を開いた。

 ふと、俺を抱きかかえるカオリと目が合う。そういえば、かなり長い間こうしていたはずだ。



「カオリ、待たせて悪かったな」


「え? もういいの? あっという間だったけど……」


「ん……? あぁ、もういいよ」



 念話で端末サリーに確認すれば、数秒経った程度だった。

時間を捻じ曲げるとは、さすが神だな。



「ベル、ちょっと頼みたい事があるんだが」



 ベルの腕へ戻った俺は、早速行動を始めることにした。

それは、まくら大改造計画だ。

そういえばさ、タイトルや名前を決めるのは任せてるんだけどさ、

なんで端末の名前がサリーなの?


『さすがにシリはマズいやろ?』


確かにそれは……。商標とかややこしそう。


『候補としてはドリーもあったんやけどね。

 でも、ファインディングなネタはプレイヤーネームでやったし』


敵に回したくない相手だし、避けて正解だと思う。


『他の候補がペリーとサリーだったんよね』


それどっちもヤバいでしょ……。


『いや、サリーなら魔法使いの方かもしれないし?』


そのネタをリアルタイムで見てた人って、結構年配の人だよね。


『今にして思えば、ペリーも黒船の方かも知れない』


そのネタをリアルタイムで見てた人も、かなり年配の人だね。


『むしろ生きてたら怖いわ!』


さて、色々危ない話もしたわけで、次回は……。


『ちょっと待って。その前にさ、ガチャ神は帰ってこないん?』


せっかくだからって、しばらく観光してくるらしいよ。


『出張ついでに観光する会社員かよ』


今時、そんな余裕のある会社員っているのかなー。


『俺なら出張翌日は有給入れて観光するわ!』


まず、出張がないけどな。

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