爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

680連目 兎の登り坂

公開日時: 2021年1月25日(月) 12:05
文字数:3,036

前回のあらすじ

「壁役は、ホントにイカれたヤツじゃった……」


ガチャ神のワンポイント攻略情報⑤

「後衛からの攻撃と、後衛への攻撃はダメージが軽減されてしまうのじゃ」

「後衛から後衛になれば、半分ほどにまでダメージが減ってしまうのじゃ」


ガチャ神のワンポイント攻略情報⑥

「必殺技ことアクティブスキルは、アクティブポイントを貯めると使えるようになるのじゃ」

「通常は攻撃した時、ダメージを受けた時にポイントが貯まるのじゃ」


ガチャ神のワンポイント攻略情報⑦

「スキルによっては、様々なルールを変更する能力もあるのじゃ」


ガチャ神の今日のひとこと

「前回に引き続き、補足情報が多すぎて大変なのじゃ」

 先手のアリサ軍による一通りの攻撃を受け、俺達の壁役たるケモナー……、アカメはすでにギリギリの状態だ。次の一撃には耐えられそうにない。

しかし、自身のスキルによるダメージ軽減のため、初手で脱落しなかったのだから十分な成果だ。



 その状況を踏まえた上で、俺は戦略を練らねばならなかった。

ゲームの時は、プレイヤーが必ず先手であったため、それを元に戦略を練っていたのだ。

その想定を覆されたため、若干俺は焦っていた。

余裕を持ったメンバーを選出したつもりだったので、このまま力負けするとは思えないが……。


 予想外の後攻となってしまったが、俺は事前の作戦通りアルビレオを集中攻撃するよう指示する。

しかし、アルビレオは後衛に居座っており、こちらの戦力も四人中三人が後衛、前衛は壁役のアカメであり、攻撃は期待できない。



「あらあら、アルのスキルが脅威と分かっての事かしら?

 けれど後衛の方が後衛へ向かって攻撃すれば、どれほど威力が削がれるか……。

 まさか、知らないわけないですわよね?」



 アリサは、俺が何の考えも無く指示していると考えているのか、今までの鬱憤を晴らすかのように嫌味な発言を投げてくる。

陣形補正を知らないほど、俺はバトルに疎くはないんだけどなぁ……。

そんな考えを巡らせている間にも、俺の指示を受けたバウムが攻撃へと移る。



「バウム氏、攻撃態勢に入りましたが前衛のヨウコ氏が行く手を阻み、うまく攻撃できないっ……!」


「仲間を守るのが、前衛たる妾の勤め。悪く思わないで下さいね」



 ヨウコの妨害を避けるべく、バウムが動きを変えるかと思いきや、そのまま突っ込んでいく。

その動きは想定外であり、ヨウコだけでなくアリサも驚きを隠せない。



「なっ……!?」


「このまま突っ切りますっ!」


「おっとバウム氏、まさかこのまま突っ込む気かっ!?

 と思えば……、飛んだっ!!」


「バウムのスキル、陣形無視が発動したんだぜ」



 すかさず局長の解説が入る。

その解説の通り、バウムは前衛・後衛に関わらずダメージ軽減の影響を受けないスキルを持つ。

それは、通常攻撃に限り、どこからでも十分なダメージを与えられる非常に有用なスキルだ。


 そしてそれは、天を駆けるサンタのトナカイに相応しい能力で、どんな妨害も空を飛んでしまえば意味を成さないという特性だ。

そして空から一直線に落ちる力が加わった、強烈な踵落としのような蹴りを軽減する事は、不可能だ。


「せいっ!」という掛け声と共に、バウムの攻撃はアルビレオへと叩き付けられた。

その強烈な一撃に、アルビレオの魔力障壁、つまりHPの壁は、砕ける寸でまでひび割れる。

そして、その崩壊しかかった障壁は、バウムに続くクロとイナバの攻撃であっさりと砕け散ってしまった。



「アリサ様……、申し訳ございません……」


「アルビレオ氏、障壁消滅により戦闘不能!!」


「くっ……、なかなかやりますわね……。

 しかし、そちらの前衛も虫の息。まだ勝負は分かりませんわよ!」



 その言葉通り、アカメは二人の攻撃どころか、アリサの攻撃にすら耐える事などできはしなかった。

アリサの攻撃によって、アカメの障壁は砕けてしまったのだ。「ぐうぅぅ……、無念……」と唸りながら退場するアカメであったが、レアリティN+★2としては十分すぎる働きだ。


 その後残るのは、攻撃力重視のバウムとクロ、そして支援系のイナバだ。

アリサならともかく、バランス型で攻撃力もそこそこ高いヨウコに叩かれれば、ただでは済まない。

誰を狙われるかによっては、かなり苦戦を強いられるだろう。



「ヨウコ、あのトナカイが厄介ですわ! 彼を落としますわよ!」


「かしこまりました」



 先ほどの攻撃に危機感を覚えたであろうアリサは、バウムを狙うよう指示を出す。

前衛を失ったバウムでは、ヨウコの攻撃をいなす事ができるはずもなく、その攻撃に耐えられるほどに防御力も高くなかった。



「スミマセン……。ここまでみたいです……」


「バウム氏、障壁消滅により戦闘不能!」


「アカメもバウムもお疲れさん。ゆっくり休んでくれ」


「あらあら、ずいぶん余裕を見せていらっしゃるけれど、状況をわかっていらっしゃるのかしら? 

 もう人数の差はなくなりましてよ?」



 不利に思えた状況をひっくり返せたからか、アリサは余裕を見せている。

事実、四対三であった人数差は、二対二に詰められている。

しかし、俺もこういった状況を想定していなかったわけでは無い。



「みんなやられちゃったのです……」


「クロさん、きっと大丈夫です! 最後まで諦めちゃだめです!」


「クロは……、怒っているのですよっ!!

 クロの守るべき人を虐める人を、クロは許せないのですっ!!」


「それなら、狙うのは誰か分かるな?」


「クロの本気……! 見せてやるですっ!!」



 その声が耳に届くよりも素早く、その動きは目で追う事も叶わず、滲んだ影が動いたようにしか視覚には残らない。おそらくクロであろうそれは、ヨウコへと向かった。

耳を劈く破裂音とクロの雄たけび。それと共にヨウコの障壁は砕かれ、誰の目にも映る事なくその攻撃は行われた。



「っ……!? 一体何があったのでしょうか!?」


「あれはクロの必殺技アクティブスキルだぜ。

 強力すぎるがゆえに、その咆哮を聞く者は死に至ると言われているんだぜ」


「なんですって……!?

 必殺技アクティブスキルを使うには、準備が足りないはずではございませんのっ!?」



 アリサが局長の解説に意義を唱える。そう言いたくなるのも当然だ。

なぜなら必殺技アクティブスキルは、格闘ゲームなどでもありがちだが、手順を踏んでゲージやポイントを溜めてやっと発動できるものだからだ。

そのためには、2ターン目である今、発動するには少しばかり早い。



「それは、クロのスキルが“味方がダメージを受けると、必殺技アクティブスキルポイントが多く貯まる”というものだからだが……」



 局長はちらりと目線を投げかけてくる。

それは別の理由もあるのだが、ここで説明すべきか悩んでいるからだろう。



「もうひとつは、イナバが味方の必殺技アクティブスキルポイントを増加させるスキルを持っているからだ」


「そんな……」



 アリサは膝を付き愕然とする。

まさか使えないと思っていた奴に、間接的にとは言え、こんな手痛い仕打ちを受けたのだから、プライドの高さを考えればショックは相当なものだろう。



「とっ、ともかく……、ヨウコ氏障壁消滅により戦闘不能!」


「さてイナバ。相手が一人残っているんだが……」


「……僕が決着をつけます」



 その言葉と共に、イナバはゆっくりとアリサの元へと歩み出す。

それは攻撃と呼ぶにはあまりに紳士的であり、そして相手であるアリサも何の抵抗も見せはしなかった。



「……アリサさん。もう終わりにしましょう。

 あなたが本当になりたいものは、誰もが恐れる契約主なんですか?」


「……同情なんていりませんわ。

 わたくしは、なりたい者にも、ならねばならぬ者にも手の届かない、世間知らずのでしかないんですもの……」



 うつむき座り込むアリサはそう呟く。

手を付く大地に落ちた雫が、戦意はない事だけを伝えていた。

俺はアリサを見守るつもりだったが、その様子を不思議に思ったヤツが小声で問いかけてきた。



「ねーねー、くらちん? 令嬢はまだ戦えるのになんで最後までやらないの?」


「あぁ、アリサは回復型なんだよ。

 だから必殺技アクティブスキルの攻撃力も低くて、耐えられても次の攻撃でクロを倒せない。

 だからこのまま続けても、クロにやられるのが目に見えてるってワケ」


「ふーん。なら降参すればいいのに」


「そう簡単な問題でもないのが、アリサの面倒なトコなんだよ。

 で、なんでセルはここに居るんだ?」


前書きなげぇ!!


「それもこれも、中の人がバトルシーンを書いたからなのじゃ……」


『それを言うなら、バトルシーンが入るプロット書いた人が悪いんや……』


……正直スマンかった。って、最近普通に後書きに入ってくるのな。


「そんな事言うから、帰ってしもうたぞ」


いーのいーの。来月には来てもらう予定だから。


「なぜじゃ!?」


ほら、四月って辞令が出る時期じゃん?


「まさか……ワシ、クビ?」


それは次回に。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート