前回のあらすじ
「色々計算したら、鬼若がベルフェゴールに勝てる見込みは0だったのじゃ」
ガチャ神のワンポイント攻略情報①
「キャラクターにはLv・GLv・ASLvの、3つのレベルがあるんじゃ」
~ピンポンパンポーン~
『学園運営局よりお知らせいたします。
予定より6時間延長して行いましたメンテナンスは、先ほど終了いたしました。
契約主の皆様にご迷惑をおかけし、申し訳ございません。
なお、今回のメンテナンスによる変更点などは、お知らせをご覧ください。繰り返します……』
デパートで迷子の案内を知らせるような放送がメンテナンスの終わりを告げた。
それにしても、この放送に使われる音声の抑揚の無さは、不気味さと共にある種の安心感を与える。
なぜだか分からないが、「ゆっくりしていってね!」と読み上げさせたくなる音声だ。
あれ? そういえばスピーカーなどは見当たらないのだが、どこからこの放送は流れているのだろう?
異世界というのは不思議なものだなぁ。
「主を取り戻すため、鬼若、いざ参る!」
俺がこの世界の新鮮さと不思議さに呆けているうちに、捕らわれの姫、つまり俺を救い出しにきた勇者様は宣言する。
それと共に、彼の周囲がダイヤモンドダスのようにきらめきだしたかと思うと、その光を吸収し彼の持つ薙刀が輝き出す。
ふむふむ、これがアクティブスキルというやつか。
ゲーム画面だと、立ち絵が出て「ドーン!」と攻撃してる感じだったけど、さすが本物は見栄えのクオリティが違いますなぁ。まぁ、威力は別問題……って!?
いや、ちょっとまて、戦闘始まっちゃってるじゃん!
メンテ中の計算じゃお前勝ち目無いからな!? というか計算するまでもなく、いつもの戦闘覚えてるなら勝ち目ないのわかるよね!?
なんていうツッコミを入れる隙もなく、鬼若はその輝く薙刀を振りかぶった。
「って! 俺ごと斬る気かよっ!」
その言葉はうまく発せられる事なく、迫り来る刃という現実から逃げるように、俺は目をつぶるしかなかった。
ぼとり……と落ちる感覚。
ベルフェゴールの手から離れ、俺は地面に突っ伏しているのだろう。もしくは半分に分断され、上半分か、もしくは下半分が落ちたのだろうか。想像するだけでグロテスクだ。
そんなシーンがゲーム画面に写ろうものなら“Z指定”は避けられないだろう。
それにしても、「第二の人生楽しんでこい」と送り出されたのに、あまりにも短すぎませんかね。
ガチャ神様も、転生先の難易度をもうちょっと下げて欲しかったですよ。
いや、もしくは“神ガチャ”の中のハズレ神を引いた結果がこれなんだろうか……。最後まで運がなかった。
唯一の救いは最期にベルフェゴールの豊満な胸の柔らかさを堪能できた事くらいだろうか。
……うーん、走馬灯にしては長いな。それに痛み、もしくは激痛による焼かれるような熱さとか、逆に失血による寒さなんてものを感じると思ったんだけどな。
これはもしかしてまた転生のパターンか? そろそろまたあの“ハズレ神”が話しかけてくるんじゃないだろうか。
まぁ、転生結果が散々なものだったので、次の転生は丁重にお断りしようとは思う。
けどせっかくなので、声しか聞く事のできなかったあの神様の姿だけでも見ておきたいな。
そう思い、ゆっくりと目を開けた俺が見たものは、蹲り忌々しげに鬼若を睨むベルフェゴールの姿だった。
「なぜSSR最弱と呼ばれる貴様が、ここまでの力を持っているのだ……」
あれ? 俺死んでないっぽい? っていうか、状況から察するにベルフェゴール負けたのか?
いやでも計算上、鬼若が勝てる要素なかった気がするんだけど。
あと負けたにしては無傷だし、どうなってるんだ?
「……約束どおり主は返してもらう」
混乱する俺をよそに、鬼若はゆっくりとこちらまでやって来たかと思うと、ひょいと俺を抱き上げた。
「主様……。こんな姿になられて……」
そう呟きながら力いっぱい俺を抱きしめる。いや、苦し……、あれ? 苦しくないな。
暑苦しくはあるんだけど。てか硬い。無駄に鍛え上げられた胸板は超硬い。さっきまでのやわらかさを返して……。
っていうか、こんな姿ってなんだ?
鬼若に抱き上げられるって事は、かなり小さくなっているってのはわかるんだけど。
「貴様の主とは、それの事だったのか? ただのまくらにしか見えぬが……」
は? まくら? まくらってあれですよね、寝るときに頭の下に置く寝具の事ですよね?
いや、なんで転生したらまくらになるん?
普通に考えて人型のキャラ、もしくは百歩譲ってモンスターでしょ?
えっと……。とりあえず、なんとかして自分の姿を見ることはできないものか……。
そういえば、首を動かす事無く視点を変えられたよな。つまり、俺自身を見ようと思えば見れるのかも?
うーん、視点を俺から離す感じ? ゲームの三人称視点モードみたいな感じをイメージして……。できた!
そこに見えたのは、鬼若に抱かれる薄青色のカバーがされた、まさしく「まくら」としか言いようのない物体であった。
まくら……? まくら??
いやだって、転生する時「お気に入りキャラへ転生」って言ってたじゃん? 俺のお気に入りがまくらなワケ……。
あっ! これベルフェゴールのGLv上げるための、素材のまくらじゃん!!
「どうしてこうなった!!」
この魂の叫びが、この世界での俺の第一声となった。
前回のあらすじが一行って、前の話いらなかったんじゃないですかねぇ……。
「世の中って、そういうもんなんじゃろ(適当」
ハズレ神が世の中を語るか。
「さすがに本文でディスられると、ワシもヘコむのじゃ……」
何も説明せず転生させるんだから、残念ながら当然と言う事ができます。
「ブクマ・評価・感想お待ちしておりますなのじゃ」
ヘコんでるからって、投げやりに纏めないでもらいたい。
では次回もよろしくお願いします。
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