前回のあらすじ
「ピカとブイならブイ派じゃ。色違いゲットに乱数調整ってできるのかのぅ?」
ガチャ神の今日のひとこと
「このサブタイトルは、さすがにダメだと思うのじゃ」
鬼若の渾身の一撃により、俺は頭突きでのスマホ操作という、斬新なガチャの回し方を披露するハメになった。
その上当たり所が悪く、死亡し再び転生……、とはならなかったが、単発ガチャとなってしまった。
「まぁ、10連でも外れる時は外れるし、単発でも当たるときは当たるっしょ」
俺達の数歩先の地面に現れはじめた魔方陣を眺めながら、俺は一人淡い期待と開き直りの混ざる言葉を吐く。
普通なら、何が出るかと期待と興奮が入り交ざる所であるのだろう。けれど爆死しか経験した事のない俺にとっては、ただの作業である。
ついでにいえば、10連で当たった事も、もちろん単発で当てた試しも無い俺にとって、この発言になんの慰めも、説得力も存在しないのだけどね。
ただし、目の前で繰り広げられる契約式と呼ばれるモノに関しては、やはり画面越しに見ていたものより現物の方が作り込みの細かさなどに感動を覚えた。
さすが神様、こういうところはしっかりしてらっしゃる。
その辺の有能さを、俺の転生先の選定時に見せて欲しかった。
魔方陣は青白い光を放ちながら、刻一刻とその幾何学模様を変えてゆき、爆発のように七色の閃光を一瞬放つ。
「おっ! マジか!! これはSSR確定演出じゃね!?」
先ほどの斜に構えていた気持ちなど吹き飛び興奮する俺をよそに、鬼若に目をやれば、ぼぅっと魔方陣に見とれているようだった。
そういえば、俺が雷に打たれた時に被害を被っていたわけではないようだし、契約式をこんなに間近で見たのは初めてなのだろうか。
その見つめる先の魔方陣では空間が歪み、おそらく異世界であろう風景が、うっすらと蜃気楼のように姿を覗かせていた。
けれど、なその先の異世界は異世界感がない。歪んでいるせいではっきりとはわからないが、いたって普通の街並みが続いている気がする。
もっとよく見ようとすれば、ぱっとその風景は弾け、白一色へと変わる。そして契約された誰かしらが出てくる……、と思った瞬間、その歪みは魔方陣と共にふわりと光を放ち、霧散してしまった。
「えっ……?」
呆然とする俺。どういうことか解らず、ふと鬼若を見ると目が合ってしまった。
「まさか……不発?」
「いえ、まさかそんな事は……。今まで契約式に失敗したなんてありませんし、聞いた事もありませんよ」
とはいえ、先ほどまでの魔方陣は消滅しており、その結果もその場に残されていない。
失敗だとするならば、原因は何だ? 前の契約式と違うところ……。
俺がまくらになったから?
前の契約式で雷に打たれたから?
鬼若に代行させたから?
もしかすると今まで鬼若を遠くに控えさせていたのは、何かしらの影響があるからだったとか!?
原因になりそうな事が多すぎる!!
解らない事だらけの事態に俺は頭を抱える。
いや、まくらは頭を置くところで抱えるモノじゃない!
「なにを二人して唸っておられるのです?」
頭を抱える俺をひょいと抱え上げ、優しい笑みを見せるベルフェゴール。
最高の癒しではあるのだが、今は無駄石使わされた事を運営に文句言いに行かないといけないので、癒されている場合ではないのだ。
「いや、さっきの契約式見てただろ? 何か不具合が起こったようでさ……」
「不具合にございますか? そんな事はありませんわ。ちゃんと契約は成立しております」
何か知っている口ぶりだけど、それ以上に雰囲気が変わってて違和感にゾワゾワする。
「相手が現れなかったのは、この場にいる者を転送する必要などなかっただけにございます」
優しい微笑みを絶やす事無く説明するベルフェゴール。
いやさ、なんかさっきから態度と口調が変わりすぎて怖いんですけど!?
まぁ、口調は最初ッから演技っぽいというか、役に徹してる感じはあったけどね?
「それはどういう意味です? 俺が主様と契約した時は、魔方陣によって転送されたのですが」
「察しが悪い方ですね。つまり、今回契約した相手が私だったということですわ」
鬼若に対しても笑顔は崩さないが、口調はやはりちょっと冷たい。
やっぱこの二人基本的にソリが合わないんだろうか。
いや、今はそれよりも……!
「本当に契約できたのか? 単発でSSRが出るだけでも奇跡なのに、狙っていた相手と契約できるなんて普通ありえるのか!?」
「旦那様におかれましては、その可能性がある方法として、あのような契約式を行われたのではありませんか? でしたらこのような結果も、不思議ではないかと存じますが」
ベルフェゴールはこの結果が当然と言いたげな顔で問いかける。
ちなみに「あのような」というのは、頭突きの事を指しているんですかね。
あれは狙ったわけじゃなく、事故なんですけどね。
うん、とりあえずそれに関してはおいて置こう。
確かにベルフェゴールの言うとおりで、俺が鬼若に契約式を任せた理由、それは鬼若がガチャ神の言う「運ステータスの高い者」であると考えたからだ。
転生する時にガチャ神が言っていたのが、「運ステータスの高さとは、運の良い時と悪い時のふり幅の大きさ」という内容だ。
つまり、今までのバグによる最弱キャラ化という“運の悪い時期”を越えた今は、最高潮に運が良い時期だと考えられる。
しかも、そのメンテのタイミングはまさに“神がかり的”なタイミングであったし、メンテ内容はバグ修正以外も鬼若に有利なものが多かった。
俺が回すガチャが“爆死になるよう乱数調整されたガチャ”であるならば、運ステータスが高く、さらに運の波が良い方向に来ている今の鬼若なら、“大当たりが約束された乱数調整済みガチャ”になっていてもおかしくはないだろう。
そういった考えの上で、少なくとも俺がやるよりは期待できると思い、鬼若に任せてみたのだ。
「考えなしでやった訳ではないけどさ、期待通りに行き過ぎると戸惑うもんなんだよ」
「左様にございますか。しかし、我が旦那様と契約した事実は変わりません。どうぞこのベルを侍女としてでも、使い捨ての盾としてでもお使いください」
そう言ってベルフェゴールは仰々しいながらも優雅に礼をする。
いや、本気でメイドや盾にする気は無いんだけどなぁ。
まぁ、こんな体だしお世話になる事は多いかもしれないけれどさ。
「えっと、ベルっていうのは……、愛称で呼んでいいって事かな?」
「いえ、旦那様にお仕えする身であるならば、大層な名前など不要にございます。
ゆえに契約をもちまして我の名をベルとさせていただきます」
おっと、これはあれかな? 従業員の名前を奪ってコキ使う、魔女的なやつですかね? どっからそのネタを仕入れたんだろうね。
ひとまずここは、愛称だという事にさせてもらおう。
サブタイトルもひどいけど、前書きもひどいよね?
「ネタが尽きたのじゃ……」
これはひどい。
「毎回用意するのは大変なのじゃ」
一話を増量すれば解決だな。
「細かく分けず、まとめてもらえると前書きも楽になるんじゃがのぅ」
1万文字くらいで大量更新するフラグかな??
「中の人が過労死して、まくらに転生してしまうのじゃ」
ガチャ神ちゃんの仕事が増えるね!
「あっ、今度はワシが過労死するパータンじゃな?」
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