暇じゃ……。まったくもって暇じゃ……。
まくらに転生させたあやつの様子を見に来てやったのに、自ら初詣に赴きワシに挨拶するつもりもないのじゃから、信心が足りんというもんじゃ。
ここはやはり、一度ガツンと神罰でもって懲らしめてやるべきじゃろうか。
などと考えておれば、こちらの世界の住人二人が石段を駆け上がってきたのじゃ。
うむ、道中の雑草を取りながらの参拝とは、なかなかよい心がけじゃ。
そう感心しておれば、なにやら二人は言い争いをはじめおった。
「うー! クロの方が早かったですよっ!」
「いやいや、同時だっただろ!?」
うむ、どちらが先に着いたかでモメておるようじゃな。
ワシは見ておったから言うが、クロの方が少しばかり早かったの。
審判ではないから口出しはせんがの。
後を追って登ってきた奴らにも、どちらが勝ちか聞いておるな。
お、その中に見覚えのある奴もおるではないか。
「ごしゅじん! 草引き競争はどっちの勝ちですかっ!?」
あぁ、やはりその話になるのか……。
そんな話は置いておいて、早く参拝してほしいんじゃがのぅ。
「勝ち負けのルールも決めずにやってたんだし、カオリも困るだろ?」
「でもでもっ! 競争なんですからねっ!!」
「んー……そうだな。草引き競争だから、やっぱどっちが綺麗に掃除できたかが問題だよな」
あやつめ、なかなかにそれっぽい事をぬかしおるわ。
ちなみに雑草を抜いた量であれば、鬼若の方が多いんじゃが、それを分かって自身の契約者を贔屓しておるのかのう?
「うん、引き分けだな。草引きだけに」
……この寒い季節に空気も凍るようなオヤジギャクで誤魔化すとは。
異常気象で熱波にしてやりたい衝動に駆られたのじゃ。
しかし、勝敗の話が終わっても、掃除をすると言い出し、なかなか参拝せんのぅ……。
しかも、掃除が終わったらお汁粉まで食べる始末じゃ。まったく、こやつらは何をしに来たのじゃ。
「それじゃ、みんな食べ終わったみたいだし帰るか」
いやいや待てーい! 本気でおぬしら何をしに来たのじゃ!?
常識というもんが無いのか! 神社に来て御参りせんとは、罰当たりじゃぞ!?
あっ、カオリが引きとめておるのじゃ。そうじゃそうじゃその調子じゃ。
なのにまくらの奴と来たら、まだうだうだと悩んでおる!
『つべこべ言わずに さっさと来るんじゃ!』
つい本気で叫んでしもうたわ。ま、聞こえるわけもないからいいじゃろ。
にしても結局あやつは最後にするなどと、会いに来てやったワシの顔を立てるべきじゃろうて……。
ふむ、最初に来たのはカオリとクロか。なにやら仲良し姉妹のようで微笑ましいのう……。
カオリは参拝の作法をクロに説明しておるが、ワシに言わせれば手を合わせればそれで良いのじゃ。
手順にこだわるのは人間の都合じゃが、それで神が機嫌を良くするかは別問題なのじゃ。
などと思っておったが、クロのめいっぱいの力での鈴鳴らしは、さすがに頭に響いたのじゃ……。
やはり、最低限の作法は必要なのかもしれんのう……。
カオリにも「これは玄関のチャイムみたいなものだから、そんなに力入れちゃだめだよ? クロだってピンポンを何回も鳴らされたらされたら嫌でしょ?」なんて叱っておる。
微妙に鈴の意味合いが違うのじゃが、それはいいじゃろう。
クロに理解しやすいように説明してやる事の方が大事じゃろうからな。
さて、クロが手を合わせておるから、ちぃとばかし奇跡とやらを見せてやろうかのう。
◆ ◇ ◆
「うーん……。お願いを何にするのか悩みますっ!
新しいボールはクリスマスにもらったし、ごしゅじんに投げてもらう円盤もいいですねっ!
でもでもっ! 骨孫も捨てがたいのですっ!!」
ワシ、光臨じゃ! SSRよりレアじゃぞ!
「ふぇっ!? 誰ですかっ!?
ってあれっ!? 目が開けられないのですっ!」
焦るでない。神の御姿を目にするのはちぃとばかし頭が高いからの、声だけでお送りするのじゃ!
「えっ? 神様ですかっ!? という事は、お願いをきいてもらえるんですねっ!?」
……。ワシの声を聞く者達は、なぜこうも簡単に要求をしてくるのかのぅ……。
ワシの信者運なさすぎ!?
「えっと、お願いをきいてもらえないなら、クロはもう帰りますけど」
しかたないのう。聞くだけ聞いてやろう。言うてみるがよい。
「それじゃあ、それじゃあ!
骨孫一年分と、フリスビー9枚セットをお願いしますっ!」
ふむ、なかなか正直な物欲を前面に押してきたのう。しかし、本当にそれで良いのか?
神というものは、願いを叶える代わりに、信心を試すものでもあるのじゃぞ?
「シンジンをタメス?? なんですかそれは?」
そうじゃな、人それぞれではあるな。病気の回復を願って神社に百度参る者もおる。
推しキャラを得るためにガチャを百連回す者もおる。それでも叶うかどうかは別問題じゃ。
「クロも百度参ればいいのですかっ!?」
いや、代わりにおぬしの持つ全てを捨てる覚悟があるのか、ワシはそれが知りたいのう。
願いを叶えるために、持つ物全て、そして持つ者全てを捨てられるほどの覚悟があるのか……。
「全て……、ですか?」
大切な宝物も、今までも思い出も、友人も、主さえも捨てる事ができるかのう?
「そんなの……、できるわけないですっ!!」
ならば本当に神に願うべき事は他にあるという事じゃな?
「……。クロは何もいらないのです。百度参れと言うのなら、毎日御参りするのです。
だから、ごしゅじんや、まくらさん、ベル姉さんに鬼若君。
それに他にもいっぱいいっぱい、学校の友達や先生も、近所のおじさんも、配達先のおばあさんも……。
みんなと、ずっと仲良くしていたいのですっ!!」
なるほど「皆とずっと仲良く、一緒に居たい」それが願いじゃな?
「はい……。クロは、何度御参りすればいいのですか?」
そんな願いに対価を求める訳にはいかんのう。なにせそれは、おぬし一人の願いではないからの。
聞き届けてやれるかは別じゃが、おぬしの願いはしかと受け取った。
その願いに反しないよう、日々過ごすと良い。
さらばじゃっ!!
「どうしたクロ? ボーっとしてさ」
「えーっと……。なんでもないですっ!」
ふむ、クロにはこんなもんで良いじゃろう。なかなか可愛い願いじゃったな。
それにしてもカオリの奴は、作法を教えるのに手一杯で、自身の参拝を忘れておるではないか。
ま、クロの願いとさほど差はないじゃろうて、二人からの願いということにしておいてやろうかの。
さてさて、次の者達はどんな願いを言い出すのかのう……?
『推しのために100連回したって俺の事やないか!!』
ほーん。で、目当てのキャラは出た?
『130連+α回しても出ませんでした……』
一応聞くけど排出率は?
『通常0.16% レア枠0.37%』
1000連回せば出る確率だから頑張ろうな。
『もうガチャなんて信じない……。もう何も信じない……』
ガチャの闇ヤベぇ。
『~ガチャ運の無さに絶望したおっさんは、ガチャをあきらめ小説を執筆する~』
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