爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

660連目 対峙

公開日時: 2021年1月24日(日) 12:05
文字数:2,932

前回のあらすじ

「作戦会議という名の説明会を開催したのじゃ」


ガチャ神の今日のひとこと

「バトルは最大4名まで出す事ができるのじゃ」

 アリサとのバトル当日、試合会場に指定した多目的広場で俺は、ブルブルと震えるイナバに肩車されながら待っていた。

肩車されている理由? それはなんだか震えるイナバがマッサージ機みたいで気持ちよさそうだったからだ。



「やっぱりイナバ、百熊乗っても……」


「まくま君、大丈夫じゃないし、そんなこと言ってる場合でもないよ?

 昨日紹介されなかった残りの一人はどうしたの?」



 現場にいるのは今日の出撃メンバーであるクロ、バウム、イナバ。

そして俺とカオリに、俺の世話係の鬼若とベルだ。つまり、ほぼいつものメンバーだな。

昨日紹介していないメンバーがまだ居ないのだから、カオリは心配しているのだろう。



「えぇと……。ワケアリで、直前に呼ぶ事にしてるから……」


「何か隠してない? 顔合わせも無しに、いきなりバトルする気?」


「あいつは壁役だから、作戦とかないし……」



 いや、呼ばないほうがいいんだ。

というか、昨日の会議も本当は来られたんだけど、バトルの直前まで呼ばないほうがメンバーのためなんだ……。

不信任決議案でも出さんとする、カオリの疑念にまみれた視線が痛い……。



「あっ! カオリ、アリサ達が来たぞ」



 アリサは、少し後方にヨウコとアルビレオを待機させると、一人こちらへと向かってくる。



「ごきげんよう。クマさんと……」


「うぉぉぉ……。イナバぁぁぁ……、振動しすぎぃぃぃ……」



 アリサと目が合うや、イナバは最強モードのマッサージ機、というよりはアスファルトを打ち付けて固める機械のようにガタガタと震えだす。


 そんな俺を見かねたアリサは、ひょいと俺を持ち上げ、カオリへと渡した。

危ない、クマまくらの体じゃなければ、確実にマーライオンならぬ、マーベアーになっていただろう。



「おっ、ありがとなアリサ」


「まったく、わたくしとの対決を前に、何を遊んでらっしゃるのかしら?」


「いやさ、イナバは百熊乗っても大丈夫か、耐久実験しようと思って」


「いったい、なんの話をしてらっしゃるのかしら……」



 カオリと違ってアリサにはこのネタが通じなかったか、残念。

まぁいい。本題に入らないとな。



「それで、心の準備はできてるか?」


「そちらこそ覚悟はよろしくて?

 条件付きのバトルにした事、後悔しても知りませんわよ?」


「ま、それは俺が言い出した事だし、どういう結果でも後悔はしないさ。

 さっそく始めるか」



 俺の言葉を待っていたように、地面には四つの魔方陣が展開された。

あれ? アリサ達はこれで全員じゃなかったのだろうか?



「あら? 貴方のメンバーは揃ってらっしゃらなかったのね」


「え? アリサの呼び出した魔方陣じゃないのか?」



 俺達は互いに顔を見合わせて“?”を浮かべていた。

当事者であるのに、俺達はなんだか他人事な雰囲気だ。

そんな中、不測の事態を想定したカオリは、俺を持つ腕に力が入っている。



「そのバトル、私たちが見届けさせてもらうんだぜ!」



 無駄にテンションの高いその声に、俺は聞き覚えがあった。

そして魔方陣から跳ねるように出てきたソレは、まさに黄色いゴムボール、学園運営局うんえい局長だ。

残りの魔方陣からは、青い職員が二人と、灰色の職員が一人。

こちらは局長と違い、テンション高めというわけでもなく、ふにふにニコニコした様子だ。



「なんだ、局長か。びっくりしたじゃないか」


「よしよし。クマをびっくりさせられたなら、大成功なんだぜ」


「局長様!? おっ……、お初にお目にかかりますっ、わたくし白鳥アリサと申します……」



 突然の局長の襲来に、アリサは深々と頭を下げる。

前のヨウコの反応からもなんとなく分かってはいたが、こんなナリでも局長は敬われる存在であるらしい。

俺には黄色いボールにしか見えないんだけどな。



「ふはは、苦しゅうないんだぜ。

 私が学園運営局うんえい局長なんだぜ、よろしくなんだぜ」


「というか、局長は何しに来たんだ?」


「クマは相変わらず素っ気無いんだぜ……。

 まぁいいんだぜ。何しに来たかと言えば、バトルの立会いに来たんだぜ」


「なるほどなるほど?

 つまり野次馬ってヤツか?」


「そんな事するほど、局長はヒマじゃないんだぜ!」



 ぽよぽよと跳ねて怒っている? ようにも見えなくないが、全然凄みがないんだよなぁ……。

いや、クマまくらの俺が言えた話ではないけどさ。

そんな局長は小さく、ため息とも取れる一呼吸を置いて説明を続けた。



「今後は、バトルに職員を立ち会わせようと思うから、その研修として今回来たんだぜ」


「へー。また新しいこと始めるんだ?」


「ま、色々事情もあるんだけど、とりあえずそういう事だぜ」



 その色々の事情が気になるが、それは後で問い詰める事にしよう。

また俺関係の問題かもしれないし。


 しかし、今後は職員立会いになるなら、前の鬼若の不具合バグも早期発見できるし、アリサの奇襲攻撃のような事態も、運営の目があるなら防げるかもしれないな。



「そういうことで、私たちの事は居ないものと考えて欲しいんだぜ」


「まぁ……、そういう事なら気にせず進めさせてもらおうか」


「えぇ……。立会いがあった所で、やることは変わりませんもの」



 そういったところで、俺はイナバに「大丈夫、クロ達が居る。お前は一人じゃない」と言い、頭をポンポンと撫でた。

震えは、局長の襲来などであっけにとられ収まっていたようだが、緊張しているようだったからな。


 カオリもクロに声をかけたいようで、俺はベルへと渡された。

クロはいつも通り「ムズカシイ事はお任せするので出番来たら呼んでください」とでも言わんばかりの様子で、緊張などなさそうだった。それでもカオリは気がかりなのだろう。



「という事で始まりました、アリサ氏vsクマ氏のバトル。

 実況はわたくし、灰色職員ことバトル管理班班長と」


「解説は学園運営局うんえい局長でお送りするんだぜ!」


「いや、全然居ないテイで進められねえよ!?」



 いきなり始まった実況に、さすがの俺も一言言わずにはいられない。

しかし、騒がしい二人は「は?」といった表情をしている、俺変な事言ったか?



「せっかくだから、盛り上げ役もやってみようという試みなんだぜ?」


「はぁ……。もういいや、好きにして……」



 なんだか職員や局長のマイペースさに、わざわざツッコミを入れるのもバカらしくなってきた。

しかし、実況したり盛り上げたりと、こいつらはバトルを見世物にでもする気だろうか?



「さぁ、両契約主にらみ合っておりますが、どのようなメンバーで戦うのでしょうか!」


「にらみ合ってるっていうか、困惑してるだけなんだが……」


「往生際が悪いですわよ! 誰が観ていようと関係ありませんわ!

 わたくしのメンバーは、アル、ヨウコ、そして、わたくし自身がバトルに参加いたしますわ!」


「アリサ氏、三名のメンバーを出してきましたね。

 上限は四名ですが、少数精鋭というやつでしょうか」


「慣れたメンバーで戦うのも戦法なんだぜ。

 それに、メンバーはバランスがよさそうだぜ」



 俺としてはすげぇやりずらいが、アリサがやる気なら俺も引くわけにはいかないな。

とりあえずメンバー紹介する流れでいいのだろうか。



「それじゃこっちは、クロ、バウム、イナバ、そしてもう一人……、それは……」



 端末サリーへ指示を出し、最後の一人を召喚する。

最終兵器……、ではないが、現場が騒然となるであろう者だ。

さぁ、その力を見せてくれ……!

あのアスファルトを固める機械は、“ランマー”って言うんだよ。


「こうして、読者に無駄知識がひとつ植え付けられたのじゃ……」


あと“マーライオン”の“マー”ってのは、マーメイドのマーだから……。


「つまり、色々口から吐き出してても、マーベアーにはならんのじゃな?」


ちょっと言葉を濁そうかと思ったのに、ばっさり言っちゃうのな。


「どうせ吐き出されるのは、まくらの中身の課金石じゃ。悲惨な様子にはならんじゃろう」


なんという安心設計! (まぁ、文字列だからどっちみち影響ないけど)


「メタい事考えてる時の顔しておるのぅ……」


いつもメタい事考えてるんだけどな~。

では次回! 謎の人物召喚が行われていますがっ……!?

さてさて、誰が出てくるんでしょうね??


「これだけ引っ張ったんじゃから、そりゃすごいヤツじゃろうな!?」


……ノーコメントで。

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