前章のあらすじ
『カズモリ氏、バトル展開を書かされる』
前回のあらすじ
『ガチャ神ちゃん、異世界へ転生……。じゃない、出向させられる』
外注さんの今日のひとこと
『異世界に飛ばされるのって、左遷になんのかな?』
空高く満月が輝き、室内を仄かに照らす頃。
俺は、明かりを消した自室の窓辺にあるデスクで、書類の山に目を通していた。
部屋が暗いのは消灯時間を過ぎているのもあるが、まくらである俺は視力の心配をしなくてもいいので、書類を読むにも月明かりで十分だからだ。
そして、その書類の内容だが、バトルの立会いに来た局長がらみの案件だ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「でさ、局長。バトルに勝ったお祝いにカラオケはどうだ?
もちろん局長のオゴりで」
その冗談交じりの提案を局長は本当に受け入れ、俺達は再びカラオケルームへ来ていたのだ。
まさか月に2回も来るとは、と思ったが、高校生ならそのくらいの頻度で来ていても不思議はないよな?
もちろん俺は今回も歌いにきた訳じゃない。他の奴らは別室で好きに楽しんでもらうとして、俺と局長は二人きり……、クマまくらとスライム的な何かなので、二匹と言うのが正しいか……?
ともかく、カギを閉め誰にも聞かれぬよう、ごく小声で密談を始めたのだ。
「今から話す事は、ここだけの話で頼むんだぜ」
「あぁ、分かってる。バトルの立会いの事だよな?」
「そうなんだぜ。事情っていうのが、最近発覚した不具合によるものなんだぜ」
「やっぱりそうだろうなとは思ってたが、また俺が関わってるのか?」
「それは分からないし、いつからそうなってたかも分からないんだぜ」
「それを俺が聞くのは、問題ないのか?」
「事務局の内情を知り尽くしてる癖に、今さらな話なんだぜ」
「確かに、それも言えてるな」
今回の不具合はかなり重症だ。なにせその内容が「バトルのターン制が無くなっている」というモノだったからだ。
つまり今回のバトルであれば、アリサが俺のターンを待たずして、連続攻撃する事ができてしまっていたらしい。
いや、普通に考えれば、律儀に相手の攻撃を待つ方がおかしいのだが、それはほら……、この世界がゲームを元に創られたからであって、この世界に住む人にとっては、それが普通だったわけだ。
その“今までの普通”のおかげで大きな混乱もなく、事態の発覚も遅れてしまったわけだ。
「それで、立会いする事でターン制を強制させるわけか」
「その通りなんだぜ。あの灰色の職員は、そのために召喚した新メンバーだぜ」
「そういや、青いのも初めて見たんだが、アイツも新メンバーか?」
「そうなんだぜ。あいつらは警備職員なんだぜ。
バトルの立会い人を警護するのが役目だぜ」
「新たな不具合発覚とその対処、さらに新メンバーの研修と、局長も苦労してるんだな……」
「ま、それが仕事なんだぜ。
それで、その後何か変わった事があったら、教えて欲しいんだぜ」
「んー……、特にこれと言った事はないけど……。
原因らしいモノも見つけたりはしてないしなぁ」
「クマなら、なにか分かると思ったんだが、これじゃ八方塞なんだぜ……」
“見つけてはいない”けれど心当たりはあるので、少し罪悪感が沸く。
今までは学園運営局にまで首を突っ込むつもりもなかったが、さすがにこれでは局長が不憫だ。
「俺の方でも調べてみるからさ、とりあえず今までの不具合リストとかないかな?
あとはバトルのルールブックとかあれば、カオリとの模擬バトルで、新たな不具合探しもできるかもな」
「それなら、事務局の図書館へ行くんだぜ。
色々な資料もルールブックもあるから、知りたいことは大体分かるんだぜ」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
そういった経緯で、借りてきた資料の山を読み漁っているわけだ。
しかし、これらを読んだ所で俺に不具合の原因が探れるわけではない。
調べた上で、この不具合を創ったヤツに報告に行くのが俺の目的だ。
つまり、例の神社へ殴り込みに行こうってワケだ!
若干深夜のテンションになりつつ、自称カミサマに何て言おうか考えていると、窓から差し込む月明かりが不意に途絶えた。
雲でも出てきたかと思い、見上げてみればそこには……。
「突然で悪いのでけれど、SSRの二人と契約解除していただけませんこと?」
「また!?」
満月を背後に立つ少女は、何の躊躇もなく窓を開けそう言い放つ。
まったく、こんな愛らしいクマまくらをみんなでイジメて……。
そう思いつつ鬼若を召喚しようか思案していれば、少女はにこやかに続けた。
「もちろんウソですよ? えへへ、今日が何の日か知ってます?」
「……あぁ、もう日付変わってるからな。エイプリルフールか。
ってこんな時間に何の用だ?」
って待て待て、時間も問題だが、考えてみればこの部屋は二階だ。どうやって……。
「立ち話もなんですから、お邪魔しますね」
「それは構わないが……」
「あ、ロベールは窓に引っかかるから、そこで待っててね」
「カシコマリマシタ」
少女は窓から軽やかに部屋へ入ってくる。
その姿はフリルが多くあしらわれた桜色の寝巻きを纏っており、トンッと着地する時に長い茶色の髪がふわりと跳ねた。
窓の外に居るロベールと呼ばれたそれは、おおきな大きなクマで、彼が彼女を抱いてやってきたようだった。
まさか二階まで届くサイズなのかと思い、窓から顔を出して覗いてみれば、そこには見えぬ足場に立つように、宙に浮く白熊の姿があった。
「改めまして夜分遅くに申し訳ありません。
おひさしぶりですクマの兄さん。私の事覚えてますか? アーニャです」
「あぁ、覚えてるよ。年末に会ったよな……。
って、俺の事気付いてたのか?」
「いいえ。ですが、お母様にお話は伺っておりますの」
チヅルは口が軽いなぁ、と思ったが、親子だしこのくらいは仕方ないか。
いや、それ以上に気になるのが、このフリフリの服は……。まさか、サンタの爺さんの趣味だろうか……。
気になるが……知らない方が幸せな事実もある。そういうことにしておこう。
「それで、こんな時間にどうしたんだ?
夜遊びするには少し若すぎると思うが」
「ふふっ……。私、悪い子ですので、夜更かしくらい、いつもの事ですよ?」
悪戯っぽくそう笑うが、そのせいで年末に大変な目に遭ったのだから笑えないな。
「なんて冗談はこれくらいにしておきましょう。
今日はお礼を言いたくて、こっそり家を抜け出してきたんです」
「礼? 何かあったか?」
「アリサお姉ちゃんの事、ありがとうございました」
「え? アリサがどうかしたのか?」
てことで、今日から前後書きは外注さんこと、中の人とやってくよー!
『どっちも名前じゃないんやけど?』
100くらい名前持ってるけど、どれで紹介して欲しい?
『なんやその、100の資格を持つ女的なアレは』
そういうキャラ付けあった方がいいかなと。
『余計なお世話すぎん??』
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