爆死まくら

ガチャで爆死したおっさん、ゲーム世界に転生する。運0で乗り切る異世界ライフ
島 一守
島 一守

4月の雨

700連目 四月一日の使者

公開日時: 2021年1月26日(火) 12:05
文字数:2,502

前章のあらすじ

『カズモリ氏、バトル展開を書かされる』


前回のあらすじ

『ガチャ神ちゃん、異世界へ転生……。じゃない、出向させられる』


外注さんの今日のひとこと

『異世界に飛ばされるのって、左遷になんのかな?』

 空高く満月が輝き、室内を仄かに照らす頃。

俺は、明かりを消した自室の窓辺にあるデスクで、書類の山に目を通していた。


 部屋が暗いのは消灯時間を過ぎているのもあるが、まくらである俺は視力の心配をしなくてもいいので、書類を読むにも月明かりで十分だからだ。

そして、その書類の内容だが、バトルの立会いに来た局長がらみの案件だ。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「でさ、局長。バトルに勝ったお祝いにカラオケはどうだ?

 もちろん局長のオゴりで」



 その冗談交じりの提案を局長は本当に受け入れ、俺達は再びカラオケルームへ来ていたのだ。

まさか月に2回も来るとは、と思ったが、高校生ならそのくらいの頻度で来ていても不思議はないよな?


 もちろん俺は今回も歌いにきた訳じゃない。他の奴らは別室で好きに楽しんでもらうとして、俺と局長は二人きり……、クマまくらとスライム的な何かなので、二匹と言うのが正しいか……?

ともかく、カギを閉め誰にも聞かれぬよう、ごく小声で密談を始めたのだ。



「今から話す事は、ここだけの話で頼むんだぜ」


「あぁ、分かってる。バトルの立会いの事だよな?」


「そうなんだぜ。事情っていうのが、最近発覚した不具合によるものなんだぜ」


「やっぱりそうだろうなとは思ってたが、また俺が関わってるのか?」


「それは分からないし、いつからそうなってたかも分からないんだぜ」


「それを俺が聞くのは、問題ないのか?」


「事務局の内情を知り尽くしてる癖に、今さらな話なんだぜ」


「確かに、それも言えてるな」



 今回の不具合はかなり重症だ。なにせその内容が「バトルのターン制が無くなっている」というモノだったからだ。

つまり今回のバトルであれば、アリサが俺のターンを待たずして、連続攻撃する事ができてしまっていたらしい。


 いや、普通に考えれば、律儀に相手の攻撃を待つ方がおかしいのだが、それはほら……、この世界がゲームを元に創られたからであって、この世界に住む人にとっては、それが普通だったわけだ。

その“今までの普通”のおかげで大きな混乱もなく、事態の発覚も遅れてしまったわけだ。



「それで、立会いする事でターン制を強制させるわけか」


「その通りなんだぜ。あの灰色の職員は、そのために召喚した新メンバーだぜ」


「そういや、青いのも初めて見たんだが、アイツも新メンバーか?」


「そうなんだぜ。あいつらは警備職員なんだぜ。

 バトルの立会い人を警護するのが役目だぜ」


「新たな不具合発覚とその対処、さらに新メンバーの研修と、局長も苦労してるんだな……」


「ま、それが仕事なんだぜ。

 それで、その後何か変わった事があったら、教えて欲しいんだぜ」


「んー……、特にこれと言った事はないけど……。

 原因らしいモノも見つけたりはしてないしなぁ」


「クマなら、なにか分かると思ったんだが、これじゃ八方塞なんだぜ……」



 “見つけてはいない”けれど心当たりはあるので、少し罪悪感が沸く。

今までは学園運営局うんえいにまで首を突っ込むつもりもなかったが、さすがにこれでは局長が不憫だ。



「俺の方でも調べてみるからさ、とりあえず今までの不具合リストとかないかな?

 あとはバトルのルールブックとかあれば、カオリとの模擬バトルで、新たな不具合探しもできるかもな」


「それなら、事務局の図書館へ行くんだぜ。

 色々な資料もルールブックもあるから、知りたいことは大体分かるんだぜ」




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 そういった経緯で、借りてきた資料の山を読み漁っているわけだ。

しかし、これらを読んだ所で俺に不具合の原因が探れるわけではない。

調べた上で、この不具合を創ったヤツに報告に行くのが俺の目的だ。

つまり、例の神社へ殴り込みに行こうってワケだ!


 若干深夜のテンションになりつつ、自称カミサマに何て言おうか考えていると、窓から差し込む月明かりが不意に途絶えた。

雲でも出てきたかと思い、見上げてみればそこには……。



「突然で悪いのでけれど、SSR★7の二人と契約解除していただけませんこと?」


「また!?」



 満月を背後に立つ少女は、何の躊躇もなく窓を開けそう言い放つ。

まったく、こんな愛らしいクマまくらをみんなでイジメて……。

そう思いつつ鬼若を召喚しようか思案していれば、少女はにこやかに続けた。



「もちろんウソですよ? えへへ、今日が何の日か知ってます?」


「……あぁ、もう日付変わってるからな。エイプリルフールか。

 ってこんな時間に何の用だ?」



 って待て待て、時間も問題だが、考えてみればこの部屋は二階だ。どうやって……。



「立ち話もなんですから、お邪魔しますね」


「それは構わないが……」


「あ、ロベールは窓に引っかかるから、そこで待っててね」


「カシコマリマシタ」



 少女は窓から軽やかに部屋へ入ってくる。

その姿はフリルが多くあしらわれた桜色の寝巻きを纏っており、トンッと着地する時に長い茶色の髪がふわりと跳ねた。


 窓の外に居るロベールと呼ばれたそれは、おおきな大きなクマで、彼が彼女を抱いてやってきたようだった。

まさか二階まで届くサイズなのかと思い、窓から顔を出して覗いてみれば、そこには見えぬ足場に立つように、宙に浮く白熊の姿があった。



「改めまして夜分遅くに申し訳ありません。

 おひさしぶりですクマの兄さん。私の事覚えてますか? アーニャです」


「あぁ、覚えてるよ。年末に会ったよな……。

 って、俺の事気付いてたのか?」


「いいえ。ですが、お母様にお話は伺っておりますの」



 チヅルは口が軽いなぁ、と思ったが、親子だしこのくらいは仕方ないか。

いや、それ以上に気になるのが、このフリフリの服は……。まさか、サンタの爺さんの趣味だろうか……。

気になるが……知らない方が幸せな事実もある。そういうことにしておこう。



「それで、こんな時間にどうしたんだ?

 夜遊びするには少し若すぎると思うが」


「ふふっ……。私、悪い子ですので、夜更かしくらい、いつもの事ですよ?」



 悪戯っぽくそう笑うが、そのせいで年末に大変な目に遭ったのだから笑えないな。



「なんて冗談はこれくらいにしておきましょう。

 今日はお礼を言いたくて、こっそり家を抜け出してきたんです」


「礼? 何かあったか?」


「アリサお姉ちゃんの事、ありがとうございました」


「え? アリサがどうかしたのか?」


てことで、今日から前後書きは外注さんこと、中の人とやってくよー!


『どっちも名前じゃないんやけど?』


100くらい名前持ってるけど、どれで紹介して欲しい?


『なんやその、100の資格を持つ女的なアレは』


そういうキャラ付けあった方がいいかなと。


『余計なお世話すぎん??』

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