暴れられるならどこでもよかった。たとえ世界が違っていても。
元居た世界は、俺にとって窮屈だった。
誰もが俺を抑え込み、型にはめようと押し付けた。
いつだって俺はそれをはねのけ、自由を求めて暴れ続けた。
俺はいつしか、暴れる事自体が目的となっていた。
この世界に来てから、俺は本当の自由を手に入れた。
学園運営局によって殺生は封じられたが、戦う事はいつでもできた。
何より俺は、この世界で初めての危険度SSRだった。
誰も俺に勝てない。誰も俺に逆らえない。
そして誰も、俺を押さえつける事はできない。
この世界こそ、俺のためにある。そんな風にさえ思っていた。
しかし、それも長くは続かなかった。
この世界に俺と同じSSRが他にも出現しはじめた。
そして危険度が低い者達さえも、徒党を組んで俺に対抗するようになっていた。
学園運営局によって縛られたスキル、それは俺を苦しめる事になる。
二種のスキルは、他の誰かを必要とする事なく、自身で完結していた。
たとえそれ自体は強くとも、組み合わせでより強く、俺を上回るほどに強くなる者達に対抗する事はできなかった。
徒党を組み挑んでくる者達。それを俺は馬鹿にしていた。
一人では何もできない者達だと。
しかし、それもただの負け惜しみにしかならない。
この世界は……。いや、どの世界も、勝たねば意味が無いのだ。
格下に思われた者達に、数でもって蹂躙される日々。
なぜ俺だけがこんな目に……。恨み言ばかりが口から漏れた。
「勝負は水物」流れが変われば勝敗も変わる。
流れを変えるため、足りない所を補い合う事を選んだ者達。
対してたった一人の俺が敵うはずがない。
それは理解しているつもりだった。けれど悔しさは募り続けた。
悔しい……? それは負けたからか? 勝てたら嬉しいのか?
勝ち続けていた時、俺は本当に嬉しかっただろうか?
もっと強い相手、やりあって楽しい相手を求めていたのではないか?
それは……、俺を理解してくれる相手を求めていたのと何が違うのか……。
本当に欲しいもの、それは仲間だったんじゃないのか?
元の世界で暴れまわっていたから?
この世界は、俺に罰を与えるための世界なのか?
だから俺は……、今も一人なのか?
思えば俺を型にはめようとしていた奴ら。
あいつらは本当に、俺を押さえつけようとしてたのか?
俺がそう思っていただけで、その型にはまる事ができたら……。
あいつらを仲間と呼べたのだろうか。
「来訪者名、鬼若。貴方の契約主が決定しました。転送を開始します」
無機質なその声と共に、足元に魔方陣が展開される。
契約主、俺を縛る者。
そんなものいらないと思っていた。
けれど今なら……。
主と呼べる者の存在を受け入れる事ができるだろうか。
「君がウワサの鬼若君か。俺は熊の実。どうぞよろしく」
というわけで! 今回は鬼若君の話でした!
内容的にシリアル気味なのにさ、プレイヤーネームで台無しだよ!!
名前、大事。シリアルはあさごはん。
では次回もよろしくお願いしま~す!
後書き代打 ◇カズモリ◇
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