前回のあらすじ
『列車の中で、バームクーヘンを貪る面々』
外注さんの今日のひとこと
『インドア派の暑いトコ苦手な俺は、海にテンションが上がらないんよ』
「夏だ! 海だ! 水着スキンだー!!」
「何叫んでるのまくま君……」
雲一つ無い快晴の空の下、エメラルドグリーンの海へと響いた俺の声に、カオリはいつも通り冷静にツッコミを入れた。
せっかくの修学旅行だというのに、テンション低くないか?
ま、毎年ある行事なのだからそこまで興奮していないのだろうけどね。
「せっかくの海だし、テンション上げておこうかと」
「無理に上げなくていいんだからね?」
カオリは呆れ顔だ。そんなローテンションではあるが、その姿はピンクと白のストライプ柄の水着で、上がキャミソール型になっている、露出少なめのものだ。
見た目だけは海を楽しむ気満々なんだけどな。
ちなみに、ヨウコと共に新しく買いに行ったらしく、お揃いになっている。
露出が少なめなのを選んだのも、そのためだろう。
そして、当のヨウコは同じデザインではあるが、色違いで黄色と白のストライプになっている。
どうやら、自身で買う場合も属性色を入れるのは、もはやこの世界の住人の性なのだろう。
そんないたって健全な水着にしたというのに、ヨウコは警戒しているのか、肩からバスタオルを被っている。
そんな事しなくても、完全に人に化けられているので、ケモナー三銃士は全く興味を持っていないようだ。
というか、ここはサービスで、ケモミミと尻尾くらいは要素として残しておくべきだと思うのだが……。
まぁ、この世界はゲームを元にしただけで、ゲーム自体ではないので、ユーザーへのサービスは不要なのだろう。
そんな事もあってか、例の危険視されていた三人は、今は全然二人に興味を示していない。
というか、着替える時なんかは、俺に向かって「やはり毛皮は必要だ」とか「熊デザインのリアリティが低い」だとか「まくらなのに水着が必要なのか」とか色々言っていたのに、今はそれすらもない。
あ、ちなみに俺は、上下一体型の水着を着ている。
確かにまくらなので服自体不要な存在ではあるのだが、だからと言って何も着ないのは色々マズいだろう。
クマ型になる前もちゃんと枕カバーという名の服を着てたしな。
ついでに言えば、ベルに頼んで体は防水・撥水仕様にしてもらっている。
なので、水を含んで海底に沈んでしまうなんて事はない。
息をする必要が無いので、海底をのんびり散歩する事もできるけどね。
さて、例の三人が俺やヨウコをガン無視して理由なのだが……。
その視線の先にはパラソルの下、大きめのサングラスをかけ、腰に水着と同じ水色のハイビスカス柄の布を巻いた、パレオスタイルのベルが座っていた。
うむ、さすがケモナーと言えど、あの水着からこぼれんばかりの豊満な胸の誘惑には抗えないのだろう。
というか、ビーチの男共の視線を独占しているし、なんならそれに見とれてコケるヤツが居るほどだ。三銃士の下心を非難などできるはずもない。
見てるだけの意外と奥手な三人と、あともう一人のために、少しばかり俺が手を貸してやるとしよう。
「カオリ、俺達はベルの所に行くからさ、先に遊んでてくれるか」
「それなら、私も行こうかな?」
その返事に俺は視線で答える。
その先に居るのは、もちろんヨウコだ。
「そうだね。じゃあ、私たちはこの辺に居るから」
俺の言いたい事を理解したカオリは、アイテムBOXからビーチボールを取り出し、ヨウコと共に波打ち際へと駆けて行った。
「さて、俺達も行くか」
「熊殿……、おぬしもワルよのぅ……」
「へへへ……。アカメ様ほどでは……」
完全に悪ノリである。
修学旅行なのだから、みんなテンションがおかしいのだ。もちろん俺含めてな。
「よう、ベル先生。お仕事お疲れ様」
「あらクマ君。どうしました?」
そしてこちらは、いつも通り“先生モード”である。
俺相手であっても、学校関連の場では口調が変わる。ベルは演技派なのだ。
俺の世話係モードの時も演技であるという事なのだろうけど。
「いやさ、先生してると大変だと思って、三人とねぎらいに来たんだよ」
「…………。どこの三人かしらね?」
「え?」
ふと振り返れば、ケモナー三銃士はベルには目もくれず、隣に座っていた獅子獣人を取り囲んでいた。
……やっぱこいつらブレねぇな!! いや、俺もベルしか見えてなかったし、人の事は言えないけどさ!
そんな獅子獣人レオン先生だが、いつもはもふもふもこもこしているのだが、その毛は短くなっていた。もしかして夏毛に生え変わったのだろうか?
そのため大きさとしてはいつもより小さくなっている。小さくなっているはずなのに、毛に隠されていて見えなかった体のラインが見えている分、いつもより厳つく感じるのだ。
特にいつもの体育の授業でのジャージ姿では見えない、胸筋や腹筋がバッキバキに仕上がっており、見る者を圧倒する。
そりゃこんなのが隣に居たら、ベルに声掛ける輩は居ないよな。
しかし、そんな事お構い無しなのがケモナー共だ。
おもむろに物差しを取り出し、その鍛え上げられたシックスパックに押し当て、何かを測っている。
「うん、どこを測ってもピッタリ5ミリ! アカメの毛刈りはさすがだね~」
「ふはは! バリカン使いなら任せたまえ!」
マジか、夏毛に変わったわけじゃなく、こいつらが毛刈りしてたのかよ……。
それにしたって、アカメ器用すぎないか?
いやそれよりも気になるのが……、どこまで毛刈りしたんだろう?
「うんうん。これならバイトも研修ナシで、羊担当できそうだね~」
「いやいや、研修は受けるとも!
あの長い角の鑑賞時間をみすみす手放すわけあるまい」
「僕は角よりも、たまにぴこぴこする耳が好き~」
「尻尾もよいものですぞ!?」
三者三様に理解しがたい何かを言っているが、おそらく研修や角って事はバウムの話だろう……。
バウム逃げて! 超逃げて!!
っとそうじゃないな。ちょっとばかり注意しないと。
「レオン先生、嫌なら嫌と言わないと、こいつら調子乗りますよ?」
「熊殿、人聞きが悪いですぞ。
我らは暑さでやられぬよう毛刈りしたまで。
なんらやましい事はありませんぞ?」
「ホントかなぁ……」
疑いの目を向ける俺に、なされるがままのレオン先生が口を開いた。
普段あまり喋らない人……人? なのだが、授業で慣れてきたとはいえ、その言葉は独特の訛りかただ。
「クマよ、そう疑う事はなイ。
日差シの強イ事をシんぱイシての事だ。
おかげでかイてキだぞ。たてがミもカットシて貰えば良かったな」
「「『「それはダメですっ!!」』」」
わしゃわしゃとタテガミを手で梳きながらそう言うレオン先生に、三人は声を揃えた。
ん? なんか一人多かった気がするが……。
ともかく、三人にとってはタテガミは重要であり、切るなんてとんでもない事のようだ。
まぁ、当のレオン先生も冗談だったみたいだけどな。
タテガミは大事な雄ライオンのシンボルなのだから。
『やっと目的地に到着した模様』
移動だけで2話かけるのは、牛歩戦術ってやつかな?
『おかげで五月章めっちゃ長くなる気しかしない!』
一話を数万文字にすれば解決。
『うわぁ……、めんどくせぇ……』
それもこれも、今回レオン先生に力入れすぎたせいでは?
『いや、それはほら……。えっと……』
言い訳思いついてないのかよ!!
『テヘっ!』
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