前章のあらすじ
『クルシミマスイベントで一番苦しんだのは中の人やったな……』
前書き代打のワンポイント情報①
『仲間になるキャラは異世界から来た人なんやで。彼らは来訪者と呼ばれているんよ』
前書き代打の今日のひとこと
『ここで投稿月と揃っただと!? 速攻抜きますけど』
新年の凛とした空気の中、俺達は神社に向かうため石段を登っている。
……といっても、初詣が目的ではないし、そういう雰囲気でもなかった。
「うぉぉぉぉ!! 負けるかぁぁぁぁ!!」
「おんどりゃぁぁぁぁ!!」
二台の除草車……、ではなく二人の契約者は、階段脇に生える雑草を引き抜きながら駆け上がる。
その後ろをベルとカオリが、引きちぎられた草を袋へ詰めながら、ゆっくり追いかけていた。
ちなみにベルは部屋の掃除の時と同じく、自身の手は使わず羽衣で作業している。
腕の中には俺がいるからってのもあるけど、基本的にいつも羽衣任せだ。羽衣って便利だよなぁ。
なぜ、俺達がこんな事をしているかといえば、喜ばしい事に俺は今、高校生という扱いになっている。
つまり、社会人の前世より、長い冬休みを満喫できるのだ! よーし、寝正月を堪能するぞ!!
と、「まくらが寝正月ってなんだよ」ってツッコミが入りそうだが、俺はウキウキしていたのである。
しかし、そうは問屋が卸さなかった。実際にそれを阻止したのは、カオリだったが。
「学園運営局にクエストを見に行ったんだけど、報酬が少なくて残ってたのがあってね。
危ない内容でもないから受けたんだけど、手伝ってもらえないかな?」
そう言われやって来たのが、今回のクエスト『寂れた神社の大掃除』だった。
クエストとしては、年末に募集がかかるタイプらしい。大抵は初詣客が来る前、つまり年末に掃除等の準備を行う内容だ。
けれど今回の神社は、初詣客どころか、存在自体を知られていないような神社で、定期保守点検依頼のようなものだった。
なので報酬も少なく、やりたがる人が少ないのも仕方ないのかもしれない。
内容は掃除だけだから簡単だし、危険でもないけどね。
本来ならば、数年ぶりの寝正月を満喫したかったのだけど、カオリにはいつも世話になってるし手伝う事にしたわけだ。
といっても、実際に俺ができることなどなく、いつも通りただ見ているだけになったのだけど。
「クロも鬼若君も、張り切ってるのはいいんだけど、大丈夫かな?」
「二人とも体力はあるし、バテたりはしないだろうが……」
「けど? 何か気になる事でもあるの?」
俺には朝からちょっとした違和感があった。
それはほんの些細な事だったけど、今の二人を見ていると、無視できなくなった。
「なぁベル、今日の鬼若さ、なんか変じゃないか?」
「そうでしょうか。いつも通り、バカやってるようにしか見えませんが」
「やってる事はいつも通りかもしれないんだけどさ、いつもなら除草競争って、クロが言い出しそうだなって思ってさ。鬼若から競争を提案するのって、珍しくないか?」
「まくら様は、鬼若の事をよく見てらっしゃるのですね。そのような事、考えも致しませんでした」
んー、ベルは気にならなかったのか。俺としては鬼若っぽくないと思ったんだが。
サンタの爺さんに会いに行く時だって、バウムの話を聞いた鬼若は怒っていたようだったけど、クロがそれ以上にやる気満々だったのもあって、なだめに入ったような奴だ。
だからクロの前では大人ぶっているんだなと俺は思っていたのだが……。.
ん? 何か聞こえた気がする。疲れているのだろうか、最近幻聴が酷いな。
まぁいい。もう一つの朝の違和感は、ベルに聞けばわかるしな。
「あとさ、朝からどっちが俺を連れるかって、まだやってんの?」
「……今日はありませんでしたわ。その事については、少し変かもしれません」
「やっぱそう思うよな?」
「えっと、何の話か分からないけど、鬼若君も色々あるんじゃない?
今は、様子を見守ってあげたらどうかな?」
朝から俺の部屋を出る時の一瞬の緊張、それが今日はなかった。というか、年末あたりから無かった気がする。
俺はてっきり、ベルが俺に指摘されたから、対策として順番でも決めたのかと思っていたが、最近ずっとベルの番なのだ。何があったんだろう。
しかし、カオリの言う事ももっともだ。俺は細かい事を気にしすぎる所がある。
これは運0のせいで、異様なまでに神経質な性格になったせいなのだが、少し直した方がいいと俺自身思っている。
何もなければそれでいいし、問題があるとしても、本人が話すまで見守ってやるのが俺の役目かもしれない。
「さてと、これで階段の掃除は終わりだね」
「クロと鬼若もお疲れさん」
「ごしゅじん! 草引き競争は、どっちの勝ちですかっ!?」
「えっ……。そう言われても……」
カオリはちらりと目線で俺に助けを求める。
やめろ、俺だってそんな面倒な役回りはごめんだ。
といいつつも助けてやるか。カオリには日々の借りがあるしな。
「勝ち負けのルールも決めずにやってたんだし、カオリも困るだろ?」
「でもでもっ! 競争なんですからねっ!!」
「んー……、そうだな。草引き競争だから、どっちが綺麗に掃除できたかが問題だよな」
俺達は後ろの石段を振り返る。
クロと鬼若、左右に分かれていたが、どちらも見事に1本も残っていない。
「うん、引き分けだな。草引きだけに」
「……まくらさん、オヤジギャクで誤魔化す気ですねっ!?」
「クロ、主様がそう言っているのだから、引き分けでいいだろ」
「むー! 次の勝負は、ちゃんとクロが勝つんですからねっ!」
「はいはい。それはそれとして、神社の掃除をしないとな」
見上げれば小さな社が建っている。
それは俺の想像とは少し違い、建物自体の損傷等もなく、意外と小奇麗だった。
「なんかこう、もっと劇的大改造が必要なのかと思っていたが、思ったより綺麗だな」
「掃除の依頼だからね。リフォームが必要だったら、私じゃ受けられないよ。
工事のクエストに慣れた、鬼若君ならできるかもしれないけどね」
「俺だって、指示してくれる人が居ないとできませんよ?」
「そりゃそうだろうな。まぁいい、難しい仕事じゃなくてよかったな」
「では、手早く終わらせてしまいましょう」
言葉が早いか、行動が早いか。ベルは即座に羽衣を伸ばし、埃を落としてゆく。
魔力が続く限り伸ばせる羽衣は、どんなに高い所でも届く便利な埃はたきだ。
その上魔力を止めれば実体が無くなるのだから、どれだけ汚れても使い捨てのように利用できる。
こと掃除においては、ベルの右に出るものはいないだろうな。
そんなこんなで、社自体の掃除は一時間もかからず終わってしまったのだ。
「お疲れ様。手伝ってもらったから、思ってたより早く終わったね。みんなありがとう。
お礼に、知り合いに頂いたお餅でお汁粉を用意したから、みんなで食べよっか」
そう言って、カオリは端末のアイテムボックスから、魔法瓶の水筒を出す。
うーん、水筒は飲み物を入れるものという認識の俺には、中からお汁粉が出てくるのは違和感がある。
お汁粉缶ですら、なんとなく拒絶反応を示す俺なのだから仕方ないけどさ。
けれどアイテムボックスがあるからと、鍋ごと出されるよりはマシだろうか。
そんな事を考えていると、器も取り出し、カオリは皆にお汁粉を振舞っていた。
俺は当然ながらお預けだ。まくらが食事を取ることはできないからな。
ま、何の作業もしていないのだから、そういう意味でも当然か。
てことで、あけましておめでとうございました。
『なんで過去形や』
もう7日だもんね、三が日終わっちゃってるしね。
『はいはい! 先生! お年玉ください!!』
誰が先生だ。大体いい歳したおっさんが年玉をねだるんじゃない。
『てゆーか、ガチャ神の上司さんは未だ名前が判明してないんですが』
165とか、うたかたの語り部とか言われてるんで、好きに呼んでくれ。
『じゃぁ神の上司で“上神”でええか』
ふむふむ、電気屋かな??
というか、今だと「ミツル」でもいいしな?
『待って、この話書いてた時、その話は影も形もなかったんやけど?』
詳しくは、なろうのアカウントから投稿作品見てね。
『クソラノベ召喚ってやつや』
はい、ダイマノルマ達成。
『ところで今回ガチャ神出てなかったんですが』
もうスタンバってるから、次回には出るよ。
『本文で暴れない事を祈ろう』
それは無理な相談じゃないかな?
『そんなぁ……』
はい、〆ようか。
『前書き、後書き代打は島一守でした』
作者がでしゃばると白けるんだよねー。
『呼び出した君がそれ言う??』
読み終わったら、ポイントを付けましょう!