前回のあらすじ
「クリスマスイベントが始まったのじゃ」
ガチャ神の異世界情報①
「学園都市には初等部から高等部、そして学園本部があるのじゃ」
翌朝、俺は寮の自室で端末を見つめていた。
机の上に乗っかり、まくらが端末に覆いかぶさるようにしている様子は、散らかった部屋の一部に見えそうだが、部屋自体は非常に綺麗なものだ。
ベッドと学習机、教科書や参考書だけが入った本棚、そしてクローゼット。
テレビやパソコンがないが、転生前に住んでいた部屋とそう変わらない。
あ、食堂や共用の風呂場があるから、水周りの設備もないな。使わないから忘れていた。
そんな最低限の物しかない部屋を、ベルの羽衣はうねうねと這い回り掃除している。
出かける前に綺麗にしておくと言って始めた掃除だが、物が少ないだけでなく、まくらの俺には食事も睡眠も必要がないし、動き回る事さえも一人では思うようにいかない。
つまり部屋が汚れる要素がないのだ。
それでもベルは、侍女として掃除くらいはしたいと思っているのか、俺が学校に行っている間もやってくれているようだ。本当に助かるな。
あとは、まくらカバーの洗濯くらいか、家事として必要な仕事は。
それ以外は、基本的にカオリ達と別れた後の俺の移動の補助や、課題をする時などは教材の準備などもやってくれる。メイドというより介護だよなぁ……。
学校でも完全にカオリに頼りきりだし、何か礼をできればいいのだが。
などという事を考えながら、例のトナイカイの、バウムから来たメッセージを読んでいた。
昨日やって来たアルダには、バウムに連絡を取ってみて返事を待とうと提案した。
といっても、アルダも個人的に連絡を取ろうとしていたそうだが、返事は無かったそうだ。
けれど俺の場合はアルダと違い、バウムとは契約を行っている。つまり俺は、バウムの契約主なのだ。
ちなみに、バウムは去年のクリスマスイベントの配布キャラなので、契約式によって契約したわけではない。運0に優しい配布キャラは大好きだ。
契約主からの連絡、それは「クエスト行くから出て来い」という、命令に近いものである。
もちろん断る事もできるそうだが、そうなると“強制召喚”という手段があるので、結果は同じだ。
けれど、それはカオリによって止められていた。強制召喚はやはり、契約者に負担が大きいのだ。
俺も休みの日にいきなり上司から呼び出されて、緊急の用事じゃなければキレると思うし、それには納得だ。
まぁ、俺の場合トリプルワークしてたから、呼び出されても出れないけどな。
ともかく、「どうしても近場の契約者じゃ対処できない場合の最終手段」とすることにした。
そういう事情があり、メッセージも命令感を無くし、「最近どうよ?」的なものにしておいた。
その程度のメッセージだった事もあり、「繁忙期なのでクエストなら他の人にお願いしたい」という、そっけない返事だった。
こっちには捜索依頼来てるんだ、嘘だってバレてるぞ? なんて言ってやりたいが、去年の事もあるし、事情を聞いておきたい。
「まくら様、そろそろ約束の時間にございます」
「あっ、もうそんな時間か。掃除ありがとな、ベル」
「お褒めに預かり光栄です」
優雅に一礼するその姿は見事な侍女の佇まいなのだが、いったいどこでそういうの覚えたんだろう? そっちの方が気になる俺だった。
と、いったやり取りをしているとドアがノックされる。
「主様、お迎えに上がりました」
こっちもこっちで相変わらず頑張っている鬼若だ。いずれ立派な執事になるのだろうか。
「ベル、通してやってくれ」
「かしこまりました」
返答と共にドアを開けるベル。そこに立っていたのは、確かに鬼若だった。
けれど、その姿の違和感に俺は少しの間固まってしまった。
「主様……、やはり変でしょうか……」
「い、いや、いつもと違うから、びっくりしたというか……」
上着は黒のパーカー、下はカーキのパンツ。ベルト周辺には謎のチェーンと……。
完全に男子中学生の私服だった。いや、合ってるんだけど、合ってるんだけど!
「そういえば鬼若の服って、学ランか作業着しか見たことなかったな」
「えぇ。中等部の制服は学ランですし、バイトがあるので、作業着でいる事が多いですね」
何を隠そう、鬼若は中等部二年生だ。だから変ではない。というより、変でないのが違和感だ。
まさか鬼若は、服を一緒に買いに行くような友人が居るのだろうか。いや、居てもいいけど。
それならなんで、いつも「主様主様」と、俺に懐いてくるのかが不思議なのだ。
「ふふふ、まくら様を驚かせられて光栄ですわ。こちらの服、我が用意いたしました」
ベルの一言で、鬼若の学園生活充実説は、瞬時に砕かれてしまった。
それはそれで、鬼若がちゃんと学園生活送れているのか心配になるぞ。
「あぁ、鬼若の世話までしてくれてるのか。ありがとうなベル」
「ありがとうございます。二回もお褒めいただけるとは、今日はよき日にございます。
中等部男子学生の私服を調査したかいがございますわ」
もしかして俺が知らないだけで、学校に行っている間こういう事をしてくれているのだろうか。
優秀すぎる。優秀すぎて“怠惰の悪魔”って設定が飛んでるのではないかと疑いたくなる。
まぁ……、ありがたい事だしいっか。
「それじゃぁ、カオリたちを待たせても悪いし、行こうか」
一瞬ピンと張り詰める空気。そして鬼若が俺を抱き上げ、部屋を後にした。
今回の“どっちが俺を連れるか”対決は、鬼若の勝ちだったようだ。
どういう基準で勝敗を決めているかは知らないし、そんな対決が行われている事自体、俺は知らないフリをしている。
触らぬ悪魔達に祟り無しだ。もしくは“知らぬが仏”という言葉の方が適切か。
まさか、鬼若が中学生だったなんて……。
「いや、おぬし全知全能じゃて、知っておったじゃろう」
ここは驚いておくべきかなーと。
「ちなみに、鬼若の身長は168cmじゃ」
本人は170と言ってるらしいよ。
「大きく見せたい、微妙なお年頃なのじゃ」
大丈夫、まだまだ成長期だし伸びるよ!
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