前回のあらすじ
「バウム生きてた! クリスマスは中止!」
ガチャ神のワンポイント攻略情報⑤
「キャラクターには、それぞれの属性を持っておるのじゃ」
「火は木に、木は水に、水は火に強いのじゃ。光と闇は相反関係じゃ」
ガチャ神からのお知らせ
「今回からしばらく、鬼若視点のお話になるのじゃ」
俺、カオリ、クロ、アルダ、バウム、ベル、そして主様の7人は、サンタの爺さんが居るという、村唯一のバーへと向かう。
喫茶店の店主によれば、サンタの爺さんはクリスマスを中止にしておいて、昼間から酒を呷っており、兄であるバーの店主から何とかして欲しいと助けを求められていたそうだ。
「絶対にクリスマスを中止になんて、させないんですからっ!!」
「まぁクロ、そう意気込むなよ。まずは話を聞いてからだ」
「わかってます! でもでもっ! それでも中止にするっていうなら、クロの百烈犬パンチを喰らわせるですっ!」
フンフン! と息巻くクロは、既にパンチの素振りを始めている。
特訓の成果か、なかなかキレのある動きだ。しかし、相手を見つけ次第殴りかからないか心配だ。
かくいう俺も、クロの事を言えた立場ではない。俺だって腹が立っている。
元々俺は、「悪い子リスト」というものに入っているらしく、プレゼントをもらった事はない。
だからクリスマスがなくなっても、クロのようにがっかりする事も、もちろん困る事もない。
けれど、俺は去年見た「子供達に幸せを届けたい」と強く願い、その身を犠牲にしながらも、プレゼントを配るサンタの姿に、憧れにも似た気持ちを抱いたのだ。
そんな爺さんに何があったかも気になるが、何かあった程度で気が変わるような奴か……。
それが俺にとって、何よりも重要だ。
「ここがマスターの言っていた、お兄さんのバーですね」
「アルダさんは、ここにも来たことあるんですか?」
「いえ、私はお酒を嗜む時間にこのあたりにいる事はないですからね。初めてです。
それに、どんなに美味しいお酒も、チヅルの注いでくれるお酒には敵いませんからね」
隙あらば惚気話を入れてくるアルダは無視しておこう。カオリ様は相手をしているけれど。
それにしても、建物こそ他の家と大差はないが、看板の文字や照明の雰囲気など、とても入りづらい店構えである。
そんな店の前に佇む7人は、アルダとベル以外は未成年だ。このような店には似合わない。
「一応、念のため警戒してください。彼は属性相性を覆すほどに強いですから」
バウムはその言葉と共に、魔力を流し自身の首にクリスマスリースを、そして腰まで伸びる立派な角には蔦を這わせる。
それは十分に魔力が回復した証であると共に、植物の使い手である証拠だ。
木属性であるバウムに対して、不利属性であるはずの相手、それは水属性になる。
つまりサンタの爺さんは水属性か……。火属性を持つ俺にとっては、最悪の組み合わせだ。
「ふふん! クロは闇の属性持ちですよっ! 相手が光でなければ大丈夫なのですっ!
冥府の番犬のチカラ、見せ付けてやりますよっ!!」
「いや、クロ。さっきのは木属性のバウムが、水属性の爺さんに負けたって意味だ。
得意でも不得意でもないなら、お前が勝つのは無理だろうって意味だぞ?」
「はっ!? そっ、そんな事ありえるんですかっ!?」
「実力の差があればもしくは……、な。まぁこっちは5人だ、大丈夫だろう」
クロは早とちりするクセがある。戦闘でも俺がフォローしてやらねば危ないだろう。
やはり主様の采配は、考え抜かれたものだと思い知らされる。
「えっと、みんないいかな? 私たちは、戦いに来たんじゃないんだからね?
サンタさんに話を聞いて、クリスマスの中止を取り消してもらうだけだからね?」
「う~……。ごしゅじん、そんな簡単な問題なら、バウムさんも苦労してませんよぉ~」
「だからって、戦う気満々の人たちとは、お話する気になんてならないでしょ?」
「まぁまぁ、お義父さんは豪快な性格ですが、基本的に温厚な方です。
恐らく、心配するような事態にはなりませんよ。まずは会ってみましょう」
カランカラン、と心地よいドアベルを鳴らしアルダが入ってゆく。
その後を恐る恐るついてゆけば、店構えと変わらぬ高級感のある店内が広がっていた。
「やぁ、いらっしゃい」
店主は短く挨拶をする。黒髪黒髭の恰幅の良いその姿は、喫茶店の店主と瓜二つだ。
彼が酒を飲める年齢ではなさそうなクロを見ても、なんら反応を示さないのは、喫茶店の店主から連絡を受けているのだろうか。
「失礼します。義父さんがお邪魔していると聞いて、お迎えに参りました」
「フン、ぞろぞろとお仲間を引き連れてか? ご苦労なこって。マスター、もう一杯」
「さすがに飲みすぎですよ。お体に障ります」
「うるせぇ……。飲まずにいられるかよ……」
バウムを伸した男とは思えぬほど弱々しい。まるでぐずった子供だ。
そんな彼は、白髪の混じった灰色の髪と髭を生やしている。服も青と白の半袖縞模様のポロシャツを着た配達員の風貌で、その身体は鍛え上げられ、土木作業のバイトをしている俺よりもたくましい。
バウムも、獣人というのもあって体格には恵まれているが、爺さんはさらに上だ。
それほどまでに、サンタという仕事は重労働なのだろう。
「親父さん……、本当に今年は中止にするんですか……?」
「お前も懲りないな。トナカイは群れるものだが、二頭ほど足りないんじゃねぇか?
名前はなんだったか……。ヴィクセンとダンダーあたりが足りないんじゃねーのか!?」
ガハハ! とバウムをバカにするように笑うジジイ。これには俺もキレそうになる。
誰のせいで、こんな大事になってると思ってんだこのジジイは!? そう言いたくなるのをぐっと抑える。なぜなら、主様はカオリ様を守るようにと仰ったからだ。ならば、俺がやる事はひとつ。
「お久しぶりです。去年お世話になった、鬼若です」
「はぁ? どうしたお前! えらく覇気が無くなったじゃねぇか!!」
「えぇ、去年までのように、無駄に戦うつもりはありません。
それが俺のこの一年の成長です。ところで貴方はどのような一年を?」
「ガハハ! お前も嫌味を覚えたか! そりゃたいした成長だなぁ!!」
普段から嫌味なババアが近くに居るもんでね、などと言ってやりたいが
完全にまくらと化しているとは言え、主様の手前そのような事は言わない。
「いいだろ、ジジイは酒飲んで憂さを晴らしてんだ。お前らには関係ないだろ」
「関係なくなんてないんですよっ! みんな、クリスマス楽しみにしてるんですよっ!?」
「おぅ嬢ちゃん、こういう店来るにはちょっと若すぎるんじゃないかい?」
「はぐらかさないでくださいっ!!」
去年、孫の喜ぶ顔を見て「子供達の笑顔が何よりのプレゼントだ!」などと言っていた、あの輝いていた爺さんはもう居ない。こんなクロを悲しませるような奴に、俺は憧れていたのか……?
「はじめまして、カオリといいます。
熊君の代わりに鬼若君、ベルさんと一緒にこちらにお邪魔しました。
熊君も貴方の事を心配しています。せめて理由だけでも聞かせてもらえませんか?
何かお手伝いできるかもしれませんから」
「ちっ……。SSR二人とは、アイツも偉くなったもんだな。
これじゃぁやり合っても勝てねえか……。仕方ねぇ、話してやるよ……。
マスター、一番強いヤツをくれ」
爺さんは無理やり酒を出させ、それを一気に飲み干す。
そして、ぽつりぽつりと思い出話を語り出した。
そろそろ攻略情報まとめが欲しい今日この頃。
「50連目を参照じゃ」
うわっ! めんどくせっ!
「仕方ないのう、そのうちまとめるのじゃ」
ついでにキャラ紹介もしておいてね。
「神使いの荒い上司なのじゃ……」
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