時空調査団物語

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プロローグ

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公開日時: 2022年4月6日(水) 17:20
文字数:1,220

 時は西暦3215年。あらゆる分野で技術が発達し、人類は非常に豊かな暮らしを送っていた。かつて危惧された環境問題は集結し、しっかりと共生ができている。

 温室効果ガスや大気汚染の原因となる成分を他の物質に変える技術が生み出され、世界各地で植樹が行われた。緑を護るための国際条約もできあがった。

 大きなリスクをはらんでいた原子力発電は核反応を自在に制御できるようになり、万が一の際に爆発が起こっても絶対に壊れない素材の建物になった。水力や風力などが広がり、各家庭には太陽光パネルが完備されている。


 故 相山《あいやま》通伸《みちのぶ》博士の功績により、時間旅行ができるようになった。しかし、だれにでもその権利を与えてしまうと歴史の崩壊、ひいては世界の崩壊を招きかねない。そのため、実際にタイムトラベルを許されているのは歴史調査のためのみである。その活動を行う国際組織が国連の隷下に設立された。「時空調査団」と呼ばれている。

 歴史に隠された真実を明らかにし、正しく後世に伝えるために活動している組織だ。各国に支部があり、それぞれの国の歴史を調査することになっている。この国の場合は、総督府の下部組織として主席総督の直轄となっている。

 この国はかつて「日本国」と呼ばれていたそれである。現在では、「聖清《せいしょう》帝国」と呼ばれている。人口減が問題となっていたが、今では安定している。少子高齢化もすでに解決している。世界経済が潤ったことで、お金のめぐりが程よくなったのだ。


 帝国において調査団員となるためには、いくつかの条件がある。18歳以上であること、不屈の精神と強靭な肉体、それに筆記試験などがある。身分は公務員であり、その待遇は非常に手厚く保障されている。

 しかし、試験は公務員の中で最も難しいといわれている。その分、団員となった際には国全体でお祝いされるほどの名誉ある事なのだ。それだけに責任は重いし、万が一の処分もいっそう厳しいものになる。

 他の時代に干渉することになるため、距離感に気をつけなければならない。親しくなりすぎてもいけないが、かといって距離がありすぎれば深い話を聞くことはできない。その時代ごとの文化や言葉なども事前に知っておかなければならない。もちろん何不自由なく過ごせるだけのクオリティーが求められる。


 ここで少しだけ私のことを語っておこう。私の名前は宮原朱里しゅり、25歳だ。大学を卒業して調査団の試験を受けた。二回目の挑戦で合格をつかみ取ることができた。平均で6回受けて合格する人が多いようだ。

 今では1つのチームリーダーを任されている身だ。もうすぐ複数チームを統括する立場になるだろう。この仕事のことをとても気にっているし、誇りをもって取り組んでいる。家族も応援してくれている。

 一度過去へ旅立つと、短くても3か月は戻ってこれない。任務の内容によっては一年以上かかることもある。寂しくてもチームの仲間がいる。みんなで支え合って頑張っているのだ。

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