目が覚めるとそこは暗闇だった。辺り一面が宇宙のように果てのない闇に覆われており、不思議な気持ちが浮かんでいた。
「お前にチートを授けてやろう、佐藤ソウゴ」
誰かの声が聞こえる?どこにいるんだ?と辺りを見ると突然、俺の目の前に突如と太陽のような光を放つ威厳のある老人が降り立った。
「儂はこの世界の1人の神だ、お前はこの世界のチート保持者の1人として選ばれた、何がいい?永遠の若さと命か、世界の歴史に名を残す壮大な力か、民衆の為世の為になれる世界一の頭脳か、さあ好きなものを選ぶがよい」
ねむい、おやすみなさい。
「寝るな!起きろ!早く起きるんだ!!」
「なんなんだよ変な夢見せてきて!こっちはな学校とか受験勉強とか色々あるんだよ!なんで美人なお姉さんじゃなくてジジイなんだ!」
逆ギレして老人に喝を入れる。老人はしょぼくれたが自分の課せられた事を成そうと俺に易しく説明を入れてくる。
「さっきチートがどうたらと説明しただろ、文字通りお前は神々からこの世界のチート保持者の1人として選ばれたんだ、そして私はその内の神である」
「それ、本当?」
あまりにも突飛的な内容に俺は引きつった顔で神様と名乗る老人の言葉を疑った。
当たり前だろ!白装束で髪や髭がボーボーの自分は神だと自称する老人男性の言葉に耳を貸すと思うか普通?
それにこんな場所とかシチュは夢であっても今すぐ覚めて欲しいものだ!
俺の質問に神様は目を細め、こちらをジッと見つめてきた。
「お前さん、まだ儂を信じていないようだな、よしこれを見せてやろう」
神様はそういうと両手を光らせ、暗闇に包まれた夢の世界を光に変えた。
神様の放った光は消えたが世界は暗闇には戻らなかった、広がっているのは俺の世界、現実の世界だった。
「これで信じてくれたかな?佐藤ソウゴ」
「は、はい信じます」俺は驚きを隠さず敬語で返した。老人はまだ喋り続けようとしている。
「さっきも言ったがお前はチート能力を1つだけ持つ権利を得たんだ」
「俺が?まだ死んでないのに?」
「死んだ死んでないのに関係はない、いいか、この国に1000人のチート所持者を造ることにした、その中に君が選ばれたのだ」
「は、はい、そうですか」
俺は神様の言ってることを半ば信じて相づちを打つ。
「さあ言うがよい、佐藤ソウゴよ、お前は何が欲しい?永遠の若さと命かーーーー」
「買った宝くじが絶対に当選する力!」
「そうか、買った宝くじが絶対に当選する、え、タカラクジ!?」
神様は、俺の要求に目を丸くして驚く。
「はい、宝くじですよ、よろしくお願いします」
「待て、早まるでない!ここは一旦落ち着いて話そうではないか、な?」
神様は慌てながら俺に説得をしようとしてきた。いや、落ち着くべきなのはあなたなんだが?
「お前は今から人智を超えた力を得ることになるんだぞ?そんな物で良いのか?」
「いいですよ、だって」
俺は神様に説明をした。
「そんな物て言いますけど、逆にスポーツや絵の才能や頭脳でもいいですよ、そういうのをチートで手に入れてもすぐお金になりますか?時間から解放されますか?」
「どういうことだ?」
神様はまだ真意を理解していないようだ。
「スポーツのチートを得てプロ選手かオリンピック選手になったとしても選手生命には逆らえない、絵や文とか頭脳のチートを持ったとしても世間に認められるのは運任せに過ぎませんよ、だったら俺は運で金と時間が欲しい、そんなチートが欲しいから宝くじの絶対当選がいいんです!」
少し興奮気味に説明したのせいか、老人は押され気味で聞いていた。今度は老人が俺の説明に疑問を抱いたことを口にした。
「じゃあ何でわざわざ宝くじなんだ?株やFXとかにしないのか?」
「それだと、インサイダー取引とかそういうのに疑われて警察の目に付けらたらたまったもんじゃありません、だから俺は宝くじがいいんです、死ぬまで当選し続けるチートが欲しいんです!」
「なぜそこまで拘るのだ?」
神様は問うと、俺はさっきとは打って変わって言葉が喉に詰まり、中々自分の思い通りに声にだすことが出来ずにいた。
それを見かねた神様は「落ち着きなさい」と俺を優しく接してくれた。すると自然と喉の詰まりが消え、ちゃんと思い通りに言葉を出すことが出来た。
「とにかく、将来が不安なんです、大学に行って卒業をして就職をしたとしても、今より周りの都合で時間を取られて自分の考えが奪われることが怖いんです、みんなは世界を変えるなんて最低なことをするなら自分を変えろ、て負け犬の遠吠えみたいに俺を頭ごなしに押し付けるんです、そんなのがこの先にもあると怖いんですよ!」
なぜだろう、俺はお金とかそういうのに困った家庭で育っていない。両親からは物心がついた頃から好きな物は買ってくれたり、周りと同じ普通の生活を送っていたはずなのに、なんで涙目で説得するように話てんだ?
「なるほど」と神様は俺の必死の説明に納得してくれたようだ。
神様はさっきまでとは打って変わって、物腰の柔らかそうな優しい微笑みを俺に見せると、右手を俺の胸に押し当てた。
「さあ世界よ、宇宙よ、全ての理よ、今この男、佐藤ソウゴに宝くじの絶対当選チートの力を授けよう」
右手から眩い閃光が解き放たれ、俺は狼狽えるが神様は気にも止めず閃光を放し続けた。
「さあソウゴよ、この力を得てどう転ぶかはお前次第だ、この運命を感謝し真っ当に生きろよ」
神様のこの言葉を最後に、俺の視る世界はまた暗闇へと戻った。
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