学校帰りに宝くじのスクラッチを100枚分購入した俺は、どこにも寄らず急いで自宅に直行で帰り2階の自室に入ると、包装されたスクラッチをベットの隣にある丸机に置いてそれを眺めた。
自分がまだ興奮から抜け出せなくて息が荒いのが分かる。
心臓の鼓動が激しい、あの宝くじ売り場からここまでずっと走り続けたからなのか?いや小学の時から中学までは陸上をやっていたから走りと体力には自信がある。恐らく俺が宝くじの当選チートを得たのと、昨日の神様とのやり取りが本当だったのが判明したのが原因だろう。
とりあえず落ち着こうと深呼吸した俺は、丸机の前に座り包装を破り開き、スクラッチを扇のように広げると息を呑んだ。
宝くじは別名、愚民税と呼ばれている。それは購入した額がペイしてこないように確率を仕込んでいるからだ。
だから本来あの時、宝くじ売り場でやったスクラッチは数枚、いや大半がハズレが入っていないとおかしい。
昨日の夢と今回の件を重ねると、やはり俺はあの神様に頼んだ“買った宝くじが絶対当選するチート”を手にしたということになる。
だとしたら目の前にあるこれらは、夢を買おうと謳いながら金を無駄遣いさせるただの紙切れじゃない、これは全部金のなる木だ!
そうと来たら話は早い、俺はカバンから筆箱を取り出し、そこからアルミ定規を手に取り、スクラッチの銀を迷いなく剥がした。
1枚、2枚、3枚、とにかく剥がしていく。何枚か剥がすと、剥がしたスクラッチをまとめて確認する、やっぱり全部当選してる。
当選金額はバラバラだがハズレがないのが一番大きい、宝くじは当選した金額によって引き取り場所が変わる。5万円以下の場合は宝くじ売り場で引き取れるが、それ以上だと指定の銀行の本支店に行って引き取ってもらわないとだめだった気がする。
100枚買ったてことは100枚当選してそれを管理しなきゃいけないから、俺は200円、1000、1万、30万、100万と左から順に5つに区分けして、当選金額に応じて分けていった。
50枚目ときたところで一旦手を止めて剥がしたスクラッチを確認する。
200円が23枚で1000円が11枚、1万円円が10枚、30万円が6枚で計191万5600円分の金額が当たった。
やばい、最初はたったの600円でスタートしたスクラッチが、たったの1時間ちょいで今じゃ200万円近くも跳ね上がっている!
でも、これだけの枚数を1人で引くなんてまるで動画配信者の企画のようだな。
それにしても宝くじにハズレを当たらないようにしたらここまで金が得られる物なんて信じられない。
それもこれはまだ半分の50枚しかいっていなくてこの金額だ!あと50枚を引いたらどれだけの金額になるんだ?
そう思うと俺は再び手を動かし、51枚目のスクラッチを剥がす。
また当選だ、当たり前ちゃ当たり前か、待てよこれはもしかして、100万円!!
51枚目で100万円が当たったのか!?
「いよっしゃああああああああ!!」
1等である100万円があたったことで、俺は歓喜のあまり立ち上がり、大声で叫んでガッツポーズをした。
「100万だあ、うおおおおお!!」
「ちょっとソウゴうるさいよ!一体どうしたの!?」
俺の叫び声に反応してドアにノックもせず開けてきたのは俺の妹のジュリだ。
「ジュリ!今晩は焼肉だ焼肉!!」
そう言いながらジュリに絡むように抱き着き、両頬にキスをするもジュリは余り嬉しくないようだった。
「ちょっとキスしないでよ!なんで焼肉でそんなにはしゃぐの?そんなにしたいんだったら今からお肉を買いに行くから!」
「違うんだ!宝くじが当たったから今晩は焼肉屋で食おうてことなんだよ!」
その言葉にジュリはえっ!?と顔色を変えて。
「どれぐらい当たったの?」
ジュリに聞かれると、俺は我に戻り金額を意識して答えた。
「えっと、4万、4万円だよ、でもそこまでの大金じゃーーーー」
「4万円て凄いじゃん!!今日はめっちゃ運がいいじゃん!」と逆にジュリが俺に抱き着いてきた。
そうか宝くじで4万て普通の人からすれば高額なんだよな、それに今回の3000000円とチートの件は誰にも言わず伏せておこう。
宝くじで大金を手に入れた人は自分以外の誰かにその事を話すと、その事が一気に広がり人間関係に問題が起きるのはよく聞いたことがある。
それがたとえ血の繋がった家族にでも口にしてはいけない。それが高額当選者の鉄則だと、でもそれは100万円以上の高額当選者の場合だから、今はチートのことだけは強く隠しておこう。
「4万円て、これのこと?」
ジュリは顔を傾げながら俺に丸机に置いてあるスクラッチを目にして聞いた。
「あ、ああそうだ、これだよこれ!今から掃除するからちょっと部屋から出てって」
ジュリの質問を適当に流して理由をつけてとにかくジュリを部屋から追い出した。
「ねえ何時になったら焼肉屋に行くの?」とジュリはドア越しに聞いていた。
「ああ、着替えたいから15分後になったら龍神て店に食べに行こう」
「ハーーイ!」
返事をしたジュリは嬉しそうにスキップしながらリビングに行ったのがドア越しからでも分かった。
ジュリに300万の当選金をバレずに済むと深いため息を吐いた。
一息ついた俺は壁に飾ってある時計を見る。針は5時47分を刺していた、窓から見れる景色はちょうど日が落ち初め、15分後からとすれば夕食に出かけるのにはちょうどいいだろう。
残ったスクラッチはご飯を食べ終わって帰った後に引けばいいんだ。
少し時間が経つと身体中、汗まみれな事に気が付き急いで私服を取り、1階の風呂場へと足を運び、シャワーで身体を軽く流すとすぐ身体を拭いて私服に着替えた。
着替え終わるとジュリのいるリビングに行った、急いでいたのか時間は思ったより空いていた。
「あれ、思ったより早いね」
ソファーに横たわりテレビを着けて視ていたジュリは、顔だけ俺の方に振り向いて話しかけてきた。
「ああ、急いでいたからね、本当に早く終わったね」とジュリの何ともない言葉に、宝くじのことで溜まってる緊張と興奮と焦りを必死に隠そうと笑顔で返した。
「よし、今から焼肉屋の龍神で焼肉を食べに行くぞお!」
「オオォォーーーー!」
掛け声とともに2人でガッツポーズをする。
「今晩は焼肉っしょおおおおお!!」
「焼肉っしょおおおおお!!」
「じゃあ早く焼肉に行って席を取ろう、ジュリ!」
「うん、私早く焼肉が食べたいよ!」
良い席を早く取ろうと、俺とジュリはせっせと家から出て、駐車場奥に置いてある自転車に乗り、颯爽と焼肉屋の龍神へと漕いで行った。
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