絶対当選!!

~買った宝くじが絶対当選するチートなんて最高に決まってるだろ!!~
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焼肉、いただきます!

公開日時: 2020年10月20日(火) 17:20
文字数:3,932

 自転車で漕いで数分辺りで焼肉屋の龍神に辿り着いた俺とジュリは、店の中に入り玄関で待機していた店員さんの誘導に従いテーブル席に行き向かい合うように座った。


 焼肉屋に行くのはいつ以来なんだろうな、去年の8月にヒロユキとバイト代が支払われた日が同じだったから、その晩は一緒に焼肉屋に行った後の記憶がないから、たぶんその日以来焼肉屋に行ってなかったんだな。


 少し思い出した俺は、しれっとジュリを見る。


 ジュリは子どものようにジタバタと足を動かして、楽し気な表情でテーブルに置いてある食べ放題のメニュー表を開きながら。


「ねえ私、食べ放題の真ん中の3000円コースがいいな」


 と俺に言ってきた。ジュリも随分と焼肉屋に行ってないと思うな、そうでなかったら、こんなにはしゃがないだろう。 


 かわいい笑顔で頼んでくるジュリは本当にかわいいな、お兄ちゃんて呼んでくれないのがネックだが。


 だがそんなかわいい妹の頼みに、俺はマンガの悪役がしてそうなドヤ顔で答えた。


「ジュリ、食べ放題で3000円とはまだまだだな」


「え、何?待ってそれどういうーーーー、まさかワンランク上の5000円コースで行くの!?」


 ジュリは歓喜な表情で答えるが、俺はまだ悪役風ドヤ顔を辞めず、その顔のままで答える。


「甘いな、お前には食べ放題だけが焼肉の世界なのか?5000円コースよりも上の奴にしないとは、恥ずかしい妹だ」


「待ってよ、5000円より上のやつなんてないよ、そんなのどこにあるの?」


 ジュリは食べ放題のメニュー表をいろんな角度から覗きこむように見てたが、俺はあるメニュー表を突いてジュリに見せる。


 そのメニュー表を見たジュリは顔色を青ざめて、唇を震えながらも恐る恐る口を動かした。


「それって、食べ放題じゃない、本品メニュー!ソウゴまさか本当にやるつもりなの!?」


 ジュリの反応を見て俺は更に悪役を超えた悪魔がするようなドヤ顔で追い打ちをかける。


「やるに決まっているんだろおぉぉん!!今日の俺は40000もあるんだぞ!両親は仕事で明日まで家にいない、時間も料金も今の俺たちは誰にも止められないのだよ!」


 おお、と声を漏らすジュリを見て満足をした俺は、本品のメニュー表を見せ合いっこした。


 ジュリはメニュー表に視線を巡らせ、楽しそうに品選びをして注文が決まると。


「それじゃあ私は特上カルビとハラミと壺タレカルビを2人前ずつに、あとキムチにガーリックトーストにするねあとドリングはジンジャーエール」


「じゃあ俺は牛塩タンを5人前にライスの大、それとサラミと豚トロとレバーだな、飲みもんはオレンジにしよっか」


「ソウゴ本当にタン好きよね」


「当たり前だろ、タンはめっちゃ美味いんだから、注文はこれでいいか?」


 ジュリに確認を取ると「うん、これでいいよ」と答えると、テーブルに置いてある呼び鈴を押して店員を呼んだ。


 しばらくすると店員さんが早足で駆け寄り、注文を聞かれて俺たちは頼みたいものを頼んで店員が再度確認すると、「かしこまりました、少々お待ち下さい」と言い残し厨房の方へ行った。


 店員さんが離れると俺たちはそれぞれ自分の時間に入った。と言ってもまあただスマホをいじってるだけなんだけど。


 スマホをいじりながらちょくちょく目を離して周りを見ると、注文をした後にタイミング良く客がぞろぞろと入って来る。家族連れやカップルや友だち連れ、客層は様々だが店内が賑わうのには変わりない。


 席がほとんど埋め尽くされ、俺らが入ってきた時より店員さんたちは店を忙しく回していた。


 これを見ると、来るタイミングが良かったと感じる。


 そう周りを見ていたら、飲み物を入れたジョッキを2杯持ってる店員さんがテーブル前に止まり、中腰で座り笑顔で。


「こちらジンジャーエールとオレンジジュースになります、ジンジャーエールのお客様は?あ、こちらでしたかどうぞ」


 頼んだ飲み物が運ばれて来て気づいたジュリは、さっきまで操作していたスマホを離して軽く手を挙げて店員からジンジャーエールを受け取った。


 続くような感じで俺も店員からオレンジジュースを受け取ると、大口で2飲みいった。


 学校が終わってから飲み物を一口も入れてなかったため、喉の渇きが強く、ほぼ満タンだったオレンジは半分近くまで減っていった。


「めっちゃ飲むねえ」とジュリはストローでジンジャーエールをかわいく飲んでいる。


「だってさあ、学校終わってからここに来るまで一口も飲んでないんだぞ、めっちゃ喉乾いてたんだよそりゃあ半分も飲むって」


「へーー、でもさあオレンジとかお酒とか炭酸類を飲むとお腹が膨らんで、ご飯が入らないらしいよ」


「お前のジンジャーエールもそっち側だろ?」


 俺が言い返して指摘すると、あっ、とニコニコと笑っていたジュリは気づきキョトンとしたが、ニカッとすぐに違う笑顔を見せた。


「それにしてもソウゴはすごいよねえ」


「何が?」


「だってさあ、今日40000円も宝くじで手に入れたじゃん、そんでパアっと贅沢に焼肉喰えるんだから今日はソウゴに感謝感謝」


 パンパンッと手を当ててジュリは俺を仏さんのように拝む、なんか気難しいな。


 やっぱ、俺が宝くじを絶対当選できるチートを持っている事と3000000円分を当選したのは明かすべきだろうが、3000000円の件は俺がまだ未成年てこともあるから親に知られて妹に行き渡るのは想像できる。


 でもチートの事はどう捉えるんだろう?最初は信じて貰えなくてもあの3000000円の事を伏せてもいつかはバレてもおかしくはない。


 だってこのチートは死ぬまで持ち続けるからいつかはバレるんだよな?だったら今から明かした方がいいのか?その方か後々関係が拗れないだろうし。


「ねえ、何を見てるの?すごい真剣な顔をしてたけど」


 俺が頭の中が宝くじでいっぱいだったのを、ジュリの言葉が耳に入ったことで我に返るような感じで反応した。


 気が付けば片手でスマホほ操作していた、ジュリの言葉がなければずっといじってたのか。


 スマホの画面をパッと見ると、宝くじのことについてのページだった。どんだけ宝くじで頭がいっぱいなんだよ今の俺は!?


「ねえ、見せてよ、まさかエロ画像?」


 スマホを見せてこないことに、ジュリは渋った顔で質問した。


「エロ画像じゃねえよ!」


「じゃあなんで顔を赤くしてるの?やっぱエロ画像じゃん」


 ジュリは何喰わぬ顔で聞いてくるが、この感じと攻め方は自分の羞恥を駆り立てられる。怪訝な顔をされる方がもっとマシな気がしてきた。


 仕方ない、ここは素直に見せようとするか。俺は無罪を証明するようにスマホの画面をジュリにそっと見せた。


 ジュリは出されたスマホを見るや。


「宝くじ?まだやるの?もう止めた方がいいよ、こういうのはお金を手に入れるんじゃなくて夢を手に入れるんだから」


 俺の宝くじに対する執拗さに諭してくるジュリに訳を言った。


「いや、そうじゃないんだ、ほら部屋にあったスクラッチの山があっただろ、今日100枚買って50枚で4万円分が当たったんだよ」


 ふーーんとジュリは相づちを打つ。


「だから、あと50枚残ってるからさ、くじのことをチェックしないと思ってさ」


「ソウゴ、てさまさか」


「何?」俺は固唾を呑んだ。


「動画投稿してるの?」


「いや、してないよ、ただの趣味だよ趣味!」


 良かったまだ気づいていない、良く考えたら一目でチートを授かったなんて普通分からないよな、それに手に入れてまだ1日目だから気づく方がおかいしいて。


 安心した俺は肩の力を抜いて、またオレンジジュースを飲む。あれ?もう空じゃんか!


「おまたせしました~~、こちら牛タン塩5人前とライスの大、キムチと特上カルビとハラミとガーリックトーストです、他の御注文は後で持ってきますので少々お待ちください」


 飲み物が来てから少し経ってやっとメインの肉たちが届いてきた、肉を運んできた店員さんが腰を下ろして肉をテーブルの上に置く。


「あ、すみません、オレンジのお代わりを」


「はいかしこまりました」俺は空になったジョッキを店員さんに取り換えっこするような形で手渡し、店員さんが去ると。ジュリと2人で早速肉を焼き始めた。


「ちょっとなんでタンを全部端に置いて焼くの?」


「タンはこういう焼き方が一番美味いんだよ、いいかジュリ、火が弱い箇所で焼くことにによって薄くてサシの多いタンを焦がすことなく、おいしく焼けるんだ!それにタンの上に余分な肉汁と脂が浮きあがり溜まったら、それを合図にひっくり返して肉汁と脂を捨てることでさっぱりした味になってより美味しくなるんだ!」


「あっそ」


 大のタン好きの俺による1から10までのうんちくを平然と流しやがったな、我が妹よ!!


 兄妹同士で軽く言い合いながらも、網の上で焼く肉の香りを嗅ぐと口内によだれがいつもより溢れ出り、それを呑み込む。


 よし、カルビはまだだがタンはそろそろ頃合いだな。


 タンが上手く焼けたらトングで焼いたタンを全部取り、それを取り皿に移してから俺とジュリの受け皿に別けて入れる。


 分け終わったところで銀箸で掴み、甘ダレに片面をつけてライスの上に載せて、タレのかかった白飯とともに豪快に、一気に頬張る!


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 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!


 ウマい!!マジでウメエ!!


「いやあ、マジで焼肉うめえなホント、白飯が進むは進む」


「ああ、おいしい!ソウゴ、これからも宝くじ当たったらよろしくね!」


 タンとカルビをまとめて口に入れたジュリもご満悦なようだ。


「まかせろ!次も当たったら2人で行こうな!」


「うん!」


 約束した俺とジュリは満足がいくまで焼肉をたっぷり堪能した。

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