姫は、土の上に座り込んでいた。
うなだれて、顔は見えない。涙が、ぽたり、ぽたりと膝を濡らす。
何度呼んでも、返事はない。空っぽの人形になってしまったようだった。
抱きしめたら、血で汚してしまう。せめて、血の付いていない右手で頬を包もうと手を伸ばす。
だが、やはりやめた。触れたら、あの透明の花のように崩れて消えてしまいそうで、できなかった。
「……姫。俺は必ず、お前を幸せにする。約束だ」
姫が、ぼんやりと目を上げた。声にならない息の震えが、空気に溶ける。
姫の髪からつたい落ちる涙を、竜は最後に、指で掬った。
点々と、決意の跡を地に染めて、竜は前へ進んでいく。赤い希望を、右手に秘めて。
姫のおぼつかない足が、ゆっくりと、立ち上がった。
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