青い刃が舞う。
青年が、黄土色の髪をなびかせて、左腕を刃に変え、青い一撃を受ける。
そして、右腕を薙刀に変えると、竜の腹部を思い切り斬った。
メイゲツの力の限界か、さほど深くはなかったが、浅くもない。土に細い血だまりができる。
メイゲツがもう一度薙刀を振りかぶったところで、竜は、足を後ろに下げ、姿勢を低くした。そして、太刀を大太刀に変えると、メイゲツの足を薙ぎ払った。
確実に斬れた――が、血液が糸になって離れた部分にくっつき、元通りになってしまった。
メイゲツの両腕が、銃に変わる。
すさまじい連射が降り注ぐ。軽い弾だが、裁ききれず、二発、竜のわき腹を掠めた。腹部の痛みが相まって、竜は一瞬、ひるんだ。
メイゲツは、子どもの姿に変わると、足から羽を生やし、一つ、地を蹴った。竜の前に着地した瞬間、大人の女性に姿を変え、右腕を刃に変える。
とどめだ。
竜は両手に短刀を持つと、メイゲツの両足に突き刺した。
痛みに顔をゆがめながら、メイゲツが腕の刃を振り下ろす。
だが、竜の方が速かった。
竜は顕現した大太刀で、メイゲツの心臓を貫いた。
刺さったところから、砂があふれ出す。
しかし――メイゲツは、腕の刃を竜の背中に突き刺した。これが今際の際の力か、と思うほど強い力で押し込んでくる。
竜は大太刀から手を離し、メイゲツの二の腕を掴んだ。メイゲツは、離れない。獣のような目で、荒く息をして、死に物狂いで、竜の体を貫かんと力み続ける。
「カゲロウ様が、はじめて、幸せになったんだ……! 斎王 竜……! お前さえいなければ、カゲロウ様は、ずっと、ずっと、幸せでいられる……!」
竜は、両手に短刀を握り、メイゲツの両腕に突き刺した。だが、斬り落としたはずの場所はやはり、血液の糸がつないでしまう。執念は、ますます強くなる。
メイゲツの刃の切っ先が、竜の腹部に頭を出した。
「カゲロウ様、自分が、幸せにしてさしあげます……! 命にかけて、この男を、殺してみせます……! それが、自分を、生かしてくださった、カゲロウ様への……!」
竜の太刀が、もう一振、メイゲツの心臓に刺さった。
メイゲツの虚ろな目が、ゆっくり、砂になって溶けていく。
あとには、何振もの青い刃が残った。
大した奴じゃなかった、はずだ。
『状態変化』の力はやっかいだったが、もとは、一振りで殺せる程度の小物だったはずだ。
そのはず、なのに。
奴の想いに、執念に、痛手を負った。
体に穴が開いて、腹部も斬り裂かれている。喉から熱い血がこみ上げる。
気付けば、竜の周りには血だまりができていた。
だが、歩けないわけじゃない。
今すぐ、行かなければ。
姫を守る。幸せにする。この命にかけて。
竜は、青い刃を支えにし、立ち上がった。
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