「本っ当に、すいませんでした!」
光は額を地面にこすりつけ、土下座をしていた。竜は容赦なく白色の頭を踏みつける。
姫と雫は無事に、紙人形から解放されていた。
「竜! やめなさい! えっと、伊達 光さん? たしかにちょっと困ったけれど、でも、警戒するのは当然です。解いていただいて、ありがとうございました」
「女神か! その腕の傷、治らなかったら、俺が結婚して一生償います!」
鼻の下を伸ばして姫を見つめる光のつむじを、竜が思い切り踏みつける。光の額が、再び地面にぐりぐりとこすりつく。雫が慌てて、傷だらけの体を引きずりながら、竜に近づいた。
「斎王くん、僕にも責任があります。そもそも、僕がみなさんといたから、このようなことになったのです……。ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした」
竜の怒りはおさまらない。体重が、白い頭にのしかかる。怒りの声が、哀れに地中に沈んでいく。
「いい加減にして!」という姫の稲妻で、ようやく、竜の足は両方とも地に着いた。
砂で汚れた白色の髪をはらい、光は立ち上がった。竜の足元に、砂が混じった唾をペッと吐く。
「ったく、覚えてやがれクソ野郎め……。いやぁ、女神様、助かりました! 金魚のフンも、思ったよりいい奴だなぁ。それ、紙で指切ちまったかんじの痛みだろ。意外と深いから、ちゃんと消毒しろよ? ま、鬼人だから明日には治ってると思うけど。つーか、神宮団抜けたとか、ほんとかよ? じゃ、なんで蒼龍様を襲ってたわけ? いろいろ聞いておかなきゃなんねぇ感じすっけど、今、超眠いんだよな。お前ら、いつ帰るんだ?」
三人は、竜を見た。
「俺たちは、蒼龍の力を手に入れに来た。手に入れるまでは帰らない」
「ふーん。じゃ、明日の昼過ぎに蒼龍神社の神殿裏に集合しようぜ。ちゃんと消毒して寝ろよ!」
さんざん頭を踏みつけられたのに、光は溌剌とブルーシートの方へ帰って行った。
すでに、二十二時を回っていた。
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