戦鬼伝

この願いを叶えるためなら、命も、世界も、かけてみせる――。
鈴奈
鈴奈

公開日時: 2020年11月10日(火) 20:00
文字数:397

 火鬼サテツの話を聞いていたら、約束の十七時になってしまった。

 せっかく会いに来たのに、話ができないなんて。

 陽はがっくりと肩を落として、姫の顔を泣きそうな目で見つめながら、雫と光に引きずられ、後ろ歩きで帰って行った。


 姫は、ふうと脱力して、近くのブランコに座り込んだ。

 緊張した。何か言葉を間違えていたら、大惨事になっていたかもしれない。ずっと、全神経を集中していた。大きく息を吸い、空を見上げる。

 朧雲が、黄金に染まって輝いていた。


「頑張ったな」


 隣のブランコが、きしっと音を立てた。横を見ると、竜が小さなブランコに座っていた。竜は背が高いので、足が長く余って、体が丸まってしまっている。なんだか少し滑稽で、姫はくすりと笑った。

「昔はぴったりだったのにね」

 竜は足を伸ばしたり、縮めたりして、座り方を考えていたが、しっくりくる座り方はなかった。

「……帰るか」

 竜はすっと立ち上がり、姫の右手をやさしく引いた。

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