火鬼サテツの話を聞いていたら、約束の十七時になってしまった。
せっかく会いに来たのに、話ができないなんて。
陽はがっくりと肩を落として、姫の顔を泣きそうな目で見つめながら、雫と光に引きずられ、後ろ歩きで帰って行った。
姫は、ふうと脱力して、近くのブランコに座り込んだ。
緊張した。何か言葉を間違えていたら、大惨事になっていたかもしれない。ずっと、全神経を集中していた。大きく息を吸い、空を見上げる。
朧雲が、黄金に染まって輝いていた。
「頑張ったな」
隣のブランコが、きしっと音を立てた。横を見ると、竜が小さなブランコに座っていた。竜は背が高いので、足が長く余って、体が丸まってしまっている。なんだか少し滑稽で、姫はくすりと笑った。
「昔はぴったりだったのにね」
竜は足を伸ばしたり、縮めたりして、座り方を考えていたが、しっくりくる座り方はなかった。
「……帰るか」
竜はすっと立ち上がり、姫の右手をやさしく引いた。
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