開け放たれた館に、白い布で顔を隠した三人の男が座っている。
御座に座る若い夫婦を、何人もの武士が取り囲む。
武士たちの袖には、五行の刺繍が縫い込まれている。陰陽武士の証だ。
一人の男が鏡を掲げる。
その銀光に照らされた途端、女は、真っ白な姿になり果てた。
髪も肌も目も全て真っ白な、人ならぬ者。
白い体を、一振りの太刀が貫いた。
それに続くように、無数の刃が、体を串刺しにした。
朦朧とする意識の中、女は目を覚ました。
傷だらけの顔をした男が、何かを言っている。
かつては、聞こえなかった――聞こうとしなかった声に、耳を傾ける。
「あなたを幸せにすると約束したのに、私は……あなたも……深手を負ってしまった……。追手が来る前に、あなたを、これ以上奴らの手で、傷つけさせないよう……せめて、守らせてください……」
男は震える体を起こした。唇から血が流れ、女の白い羽衣を赤く濡らす。
そして男は、震える指で、青い刃を抜いた。
「生まれ変わって、次にあなたと出会えたら、その時は今度こそ、必ず、あなたを、幸せにします」
青い刃に、体を貫かれる。
だが、憎しみは、なかった。
――ああ。やっぱり彼は、約束を守ってくれる人だった。
彼に愛され、彼を愛して、ともに過ごした全ての時間が、体を流れていく。
心が、温かくなる。
来世の約束なんて、いらない。自分は十分、幸せだった。
この痛みさえ、愛おしく思えるほどに。
けれど、彼はきっと、約束を守ろうとするだろう。
ならば、せめて――。
残された力で、女は、男の冷たい頬に触れた。
「あなたの幸せが、私の、幸せ……」
真っ白な瞳から真珠がこぼれ、天女は、微笑んだ。
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