深夜二時、風はない。
紫色の灯りの中で、赤い眼をした夜の獣が咆哮する。
一人の男が、対峙する。
彼の右手の中指には、赤い石が輝いていた。
赤い石から、蕾が萌える。
こめかみから二本の角が生え、八重歯が牙に変わり、その手に青い刃が顕現する。
獣がその男に触れる隙はなかった。
青い閃光が、獣の腹を斬り裁く。
獣は悲鳴とともに砂となり、彼の右手中指の蕾に吸い込まれていった。
――これは、鬼(おに)と鬼人(おにびと)の、「願い」を巡る、戦いの物語である。
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