クラウスは一歩後退する。
止められた左手を引き、僅かに拳を緩める。
額にこぼれる汗を拭いながら、スゥーと息を吸った。
全身を脱力させ、胴体を少しだけ前に屈ませながら、体勢を整えた。
「おいおい、人の話を聞け」
「うるせぇ!」
やみくもに突っ込むべきではない。
そうでなくとも、慎重に行くべき相手だ。
そんなことはわかっていた。
ただ、「前」に出なければ戦局を変えることはできない。
近距離を主戦場とするクラウスにとっては、「攻め」こそが重要なスペースになる。
「焔武装・タイプ2」
クラウスは両足に炎を灯す。
焔武装は、肉体的な強化、——つまり、あらゆる運動機能を上昇させるための「バフ」だ。
タイプ1は“時間変動型”。
指定した部位にエネルギーを送り、より少ない時間効率で局所的な強化を行う。
初手の一撃は、このタイプ1を利用した攻撃だった。
部分的にエネルギーを消費することで、“一時的な”肉体強化を図ることができる。
これをうまく活用することで、エネルギーの消費を最小限に留めることができる。
指定した部位にエネルギーを送るためのリードタイムが若干必要になるが、範囲や可動域を応用することで、より立体的な奥行きを持たせることが可能だった。
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