「クラウス」
「ん?」
「先陣を切るのは良いが、ちゃんと考えてから行動しろよ」
「あぁ!?どういう意味だよ!」
「そういうとこだ。お前に足りないのは」
前のめりになりながら顔を近づけるクラウス。
ルシアはそんな様子には目もくれず、黙々と読書に勤しんでいる。
クラウスは純血種ではないものの、クラス3に配属されている期待の新人の1人だ。
ただ、性格に難があり、自分の力を過信してしまう傾向にある。
ルシアはそういった部分を指摘していた。
衝動的に行動するのではなく、冷静に周りを見ろ、——と。
「コラ!」
睨みを効かせるクラウスの後ろから、甲高い声が響いた。
薄い緑色の髪に、黒のタンクトップ。
幅の広いレザーベルトの下には、丈の長いホワイトパンツが。
「なんだよ、ナツキ」
「なんだよじゃないでしょ。また喧嘩してんの?」
「してねー」
“ナツキ”
クラウスがそう呼んだ彼女は、2人のルームメイトであり、同じクラス3の訓練生だ。
ナツキ・B・ウォッシュバーン
彼女もオーシャンズタウン出身で、ルシアとは幼馴染だった。
クラウスとはルシアの後に知り合ったが、いずれにしても子供の頃からの友達だった。
友達であり、仲間。
オーシャンズタウンでは、彼ら3人は兄弟のような生活を送っていた。
クラウスもナツキも、幼い頃に両親を亡くしていた。
とくにナツキの方は、オーシャンズタウン近郊の町に拠点を置いていた盗賊の一団に両親を殺され、奴隷商人に連れ去られた過去を持っていた。
ルシアと出会ったのは、彼女がシーサイド地区のストリートで、銀行を営む実業家、アシュリー・ホーグナー(ホーグナー家)の奴隷として売り捌かれた後のことだった。
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