GROUND ZERO 〜特級スキル『パーフェクト・コピー』を持つ訓練生は、氷雪系最強の血筋、“フローレン家”の名を受け継ぐ暗殺家一家の御曹司〜 【第1巻】

遠い昔の記憶は、風と共に来た。
平木明日香
平木明日香

第25話

公開日時: 2024年8月10日(土) 14:00
文字数:553



 ドンッ




 直線。



 ——やはり



 ジークハルトは、構えた状態から右側へとステップする。


 ベースを上げても、動きそのものの基本動作は変わらない。


 スペースを開け、繰り出されるパンチの軌道を読んでいた。


 避けるのは造作もないが、ただ単に避けるのではなく、クラウスの動きのレベルに合わせようとした。


 ファイターとしての質を上げるためには、動きのベースを上げることがもっとも肝心だが、それを扱うための多くの引き出しを持つことも、等しく重要だ。


 どうすれば攻撃を当てられるか。


 そのために必要なヒントを、ジークハルトなりに散りばめようとしていた。


 クラウスは下半身を中心に攻撃のモーションを連結させる。


 左から右。


 右から下。


 踏み込んだ足を交差させる。


 ジークハルトの影に重なるように、左足が食い込む。


 地面を掴んだつま先に乗っかるように、膝が深く沈む。


 連動する動作の中で、上半身が勢いよく傾く。


 ダッキング。


 上半身を前に傾けることで、相手のパンチの軌道から頭を守る。


 ただし、クラウスは腕を下げていた。


 攻撃を避けるために屈んだのではない。


 攻撃の動作の中で相手の動きを予測し、スペースを作る。


 ジークハルトがどう動くか、ある程度は予測できた。


 右足を軸に移動したステップは、上半身をより近距離へと運ぶための土台を作りつつ、立体的な動作の「接点」を作っていた。


 

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