自らの影を踏む足。
クラウスが何かしようとしていることは、それとなく察知できた。
この前とはまるで違う動き。
ただ単に突っ込んでくるだけではなく、モーションの中に“思考”が織り込まれている。
それが単に繰り出された攻撃であるか、ある程度考え抜かれた攻撃であるかは、長年の経験によって見分けることができる。
ジークハルトの頭の中では、クラウスの動きが手に取るようにわかった。
それは実際の「動き」の位置や範囲が“正確に”予測できるというよりも、“相手が何をしたいのか”、それに際する有機的な予測であった。
相手が機械ではなく生物である場合、それがいかに合理的な行動や選択であったとしても、「感情」が介在する余地は多分にある。
思考が介在する時間が1%でもある以上は、その影響を無視して行動に移行することはできない。
足を動かす時、腕を持ち上げる時、——あらゆる動作の中で、肉体と精神は連動する。
その電気的な回路は、機械が行う動作とはまた違った奥行きと”情景”を持つ。
ジークハルトは、クラウスが放つ空気感を視界の中に捉えていた。
捉えつつ、攻撃の出所を探っていた。
鋭く切り込んでくるステップ。
——その、中間に。
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